メタ認知とは何か?その内容とトレーニング方法を解説

2023年3月8日

メタ認知については動画でも解説しています

メタ認知については、動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。

メタ認知とは?

メタ認知の概要

メタ認知とは「認知に対する認知」です。簡単に言えば、自分や他者の行動を客観的に見て判断する能力です。
「認知」とは、あらゆる行動や記憶する考えるといった意味を持ちます。
つまり、私たちがしているほとんどのことが認知です。

このメタ認知は、アメリカの心理学者であるジョン・H・フラベルが定義した認知心理学の概念のひとつです。

このメタ認知を身につけているかどうかで仕事の効率や出来が変わってくると言われ、近年注目されるようになりました。
メタ認知を身につければ、感情に左右されることなく、仕事をスムーズに進められます。

起源の「無知の知」

メタ認知の起源は、ソクラテスの、自分の無知を自覚する「無知の知」と言われます。
ソクラテスといえば問答法が有名ですが、その問答法で「〇〇とはなにか」を問いかけ続け、相手がそもそも〇〇をわかっていないとわからせ、自分の無知を自覚させます。
これがメタ認知の元祖と言われています。

メタ認知的知識

メタ認知には大きく分けて2つあります。まず1つ目がこのメタ認知的知識です。
「自分は話すのは得意だけれど、事務処理は苦手だ」
「1度にたくさんの英単語を覚えるのは難しい」
このように認知についての知識のことを、メタ認知的知識と言います。

メタ認知的活動

メタ認知的活動は、メタ認知的知識に基づいて行われます。そのため、メタ認知的知識が間違っていると、メタ認知的活動も誤ったものになってしまいます。
メタ認知的活動は次の2つに分けられます。具体的に見ていきましょう。

モニタリング

モニタリングは、認知について気づきを得たり、課題や問題がどのくらいの難易度なのかを評価したりします。

コントロール

モニタリングで気づいたことを基に目標を設定し、計画を立てるのがコントロールです。

ビジネスにおけるメタ認知の効果

ここで「メタ認知が高い」とどんなメリットがあるのかご紹介します。

冷静に行動できる

メタ認知が高い人は、自分のことを客観的に見られる人です。たとえば、何かトラブルが起こって、対処しなければならなくなったとします。
メタ認知が低い人は、「やっぱり自分はダメだ」と感じて焦ってしまってうまくいきません。
反対にメタ認知が高い人は、自分がどの程度の能力を持っているかをきちんと知っているので、慌てることなく冷静に対処ができます。 もし自分の手に負えないと感じたら、すぐに助けを求めることもできます。結果的に早くトラブルを解決できるようになります。

自己成長できる

自分の能力や性格を客観的に評価できるので、課題を明確にすることができます。長所や短所を把握し、苦手な部分を改善するために行動することが可能になります。

トレーニング方法

ここからはメタ認知のトレーニング方法を紹介していきます。

セルフモニタリングで自分を知る

セルフモニタリングとは、自分がこれまで無意識に行動していたことに意識を向けることです。自分の課題を自覚して、「コントロール」で改善のための計画を立てます。
ここで課題を見つけることが簡単にできれば良いのですが、無意識の行動であるがゆえ、自分で気づかないこともあります。
そういった場合は、日記をつけてみましょう。仕事上のトラブルがあったときだけでなく、日々の自分の言動などを書いてみると発見があるはずです。

たとえば、「職場から帰るときによくデスクの鍵をかけ忘れる」という課題があったとします。これは早く帰りたいという思いに支配されてしまって、急いで職場を出てしまうためです。たとえ急いでいたとしても、鍵をかけ忘れないようにするために「帰る前にチェックする項目を見えるところに貼って毎日見る」などの対策(コントロール)が考えられます。

自分の認知バイアスを知る

コーチングを受けるのも、メタ認知を高めるのに有効な手段です。コーチングとはコミュニケーションの一種です。第三者に自分の言動を観察してもらうことで、気づきのきっかけとなります。会社員の方は、人事担当者や上司との面談で現状を把握し、目標を決めた経験があるのではないでしょうか。これこそがまさにコーチングです。
自分で自分の思考や行動の癖を把握するのは難しいですが、他者と話すことによって、自分を客観的に把握することができるようになります。

ライティングセラピー

紙に、悩みや負の感情を思いつくままに書いていくだけです。時間は20分程度が目安ですが、はじめは10分からはじめて、少しずつ延ばしていってもよいでしょう。

心の中で考えているだけだと、モヤモヤしていたことが、紙に書くことで視覚的に認識され、意外と大したことじゃなかったと気づくこともあります。これは可視化したことで、感情から離れ、客観的に見られるようになるため、起こることです。

ここで重要なのは「手で書く」という点です。パソコンで打ち込むのではなく、手を動かして書きましょう。
書くことは、心理療法として用いられることもあり、ストレスを緩和させることにもつながります。

マインドフルネス

最近よく耳にするようになった言葉ですが、みなさんは具体的にどんなものかご存知でしょうか。
マインドフルネスとは「今」に注意を向けることです。今していることだけに注意を向けて、それ以外のことを考えないようにします。これも客観的に自分を見ることにつながります。
たとえばテレビを見ながらご飯を食べていると、食べることに注意は向いていません。今食べているご飯の香りや甘みを感じて、食べることに集中するのが、マインドフルネスです。

ここではマインドフルネスでよく用いられる「瞑想」の方法を具体的に見ていきましょう。
早朝など気が散らないタイミングに行います。以下に手順を紹介しますので、最初は5分からはじめてみましょう。

瞑想の手順
  1. 調身:姿勢を正し、あぐらをかいて座る。
  2. 調息:呼吸を整える。
  3. 調心:こころを整える。

姿勢を正して、リラックスして座ってください。はじめは深くゆっくりした呼吸を心がけ、その後は自然な呼吸に任せます。
一番難しいのが、こころを整えることです。
人は常になにかを考えて過ごしています。そのため、「無になりなさい」と言われても、そう簡単になにも考えないようにはできません。
もし瞑想中に他のことを考えてしまったとしても、呼吸を意識するようにしてください。
出てきた感情や思考については、答えを出そうとしたり、判断したりせず、そのまま放っておきましょう。だんだんと思考をそのままにして、呼吸に意識を向けられるようになります。

まとめ

自分を客観的に見ることは非常に難しいことです。しかし、特に仕事においては、感情に左右されることなく、常に冷静に行動することが求められます。
メタ認知の能力は高められます。今からでも遅くはありません。ぜひ、今回ご紹介したトレーニング方法を試してみてください。

参考

書籍

  • 三宮 真智子『メタ認知で〈学ぶ力〉を高める: 認知心理学が解き明かす効果的学習法』北大路書房、2018年

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