落とした財布の実験とは何か?(『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』より)
落とした財布の実験とは
落とした財布の実験とは、コロンビア大学の心理学者たちが行った実験です。
彼らはわざと次のような財布を落としました。
財布の特徴
- 現金2ドル、小切手26ドル30セントが入っている
- 落とし主の名前や住所を示すものが入っている
- 財布は宛先(持ち主の住所氏名)が書かれた封筒に入っていて、2度目の紛失であることがわかる手紙(拾った人が落とし主に宛てた内容が記載)が添えられていた
次に拾った人は、この財布を見てすぐに拾った人が落とし主に財布を返すため、封筒をポストに投函する前にまた落としてしまったのだと気づくでしょう。
心理学者たちは、こういった財布をいくつも用意し、マンハッタンの街中のいたるところに落としておきました。しかし、手紙の特徴は少し変えてあります。
手紙の特徴
- A:平均的なアメリカ人であると思わせる標準的な英語
- B:最近アメリカにやってきた外国人であると思わせる怪しげな英語
これらを拾った人の何人が、最初に拾った人と同じように財布の中身に手をつけず、持ち主に返そうとするかという実験です。
結果は、最初の拾い主が自分と似ている場合、つまり類似性がある場合は70%の人がそのまま財布を返し、自分と似ていない場合は33%しか返しませんでした。
この結果から言えるのは、自分に似ている人の行動が特に強い影響を与えるということです。この実験では同じ国の人間という括りですが、性別や年齢であっても類似性が見つかれば、人は影響を受けやすくなります。
参考
- ロバート・B・チャルディーニ(著)、社会行動研究会(翻訳)『影響力の武器[第三版]―なぜ、人は動かされるのか』誠信書房、2014年