連言錯誤とは何か?「もっともらしさ」による錯誤を解説

連言錯誤とは?

連言錯誤とは、2つの事象が重なって起きることと単一の事象を比較したうえで、前者の確率が高いと判断してしまう錯誤を指します[1]ダニエル・カーネマン(著)、村井章子(翻訳)『ファスト&スロー(上) … Continue reading

たとえば先行して与えられた情報により「Aさんは弁護士である」という確率よりも、「Aさんは環境問題に取り組む弁護士である」という確率を高いと錯覚してしまうことが連言錯誤です。

連言錯誤のメカニズム

ここからは『ファスト&スロー』の記述に従って、連言錯誤のメカニズムを解説していきます。

実験の内容

連言錯誤は『ファスト&スロー』の著者であるダニエル・カーネマンが1980年代に実施した実験から得られた結果から、ダニエルが名付けた錯誤です。

この実験では、被験者はあらかじめ以下の情報を与えられます。

リンダは31歳の独身女性。外交的でたいへん聡明である。専攻は哲学だった。
学生時代には、差別や社会正義の問題に強い関心を持っていた。
また、反核運動に参加したこともある。

次に被験者にリンダの現在の姿を予想してもらい、下記の7つの項目を可能性が高いと思う順番に並べ替えてもらいました。

リンダの現在の姿は……?
  • リンダは小学校の先生である。
  • リンダは書店員で、ヨガを習っている。
  • リンダはフェミニスト運動の活動家である。
  • リンダは精神医学のソーシャルワーカーである。
  • リンダは女性有権者同盟のメンバーである。
  • リンダは銀行員である。
  • リンダは保険の営業をしている。
  • リンダは銀行員で、フェミニスト運動の活動家である。

リンダは架空の存在で、実験が行われた1980年代にヨガを習っている女性やフェミニスト運動をしていそうな女性のステレオタイプです。
そのため、被験者はフェミニスト活動家や書店員でヨガを習っているリンダの姿を想像し、高い順位をつけました。
その一方で、銀行員や保険の営業をしているリンダの姿は与えられている情報からは想像しづらく、低い順位をつけました。

論理的ではない結果

リンダが銀行員であることよりも、銀行員でフェミニスト運動の活動家であることのほうが可能性は低いはずだが……

この実験の面白い点は「リンダは銀行員である。」という項目と「リンダは銀行員で、フェミニスト運動の活動家である。」という項目が存在していることです。

被験者の85%は「リンダは銀行員である。」という項目よりも「リンダは銀行員で、フェミニスト運動の活動家である。」という項目の順位を高くしていました。
つまり、被験者の多くはリンダは銀行員でフェミニスト運動家であろうと考えたのです。

しかし、これは全く論理的ではない回答です。

もし「リンダは銀行員である。」という項目の可能性を低いと感じているのであれば、リンダが銀行員で、なおかつフェミニスト運動家である可能性の方が低いはずです。
しかし被験者の多くは「フェミニスト運動」という言葉に引きずられ、「リンダは銀行員である。」という項目よりも「リンダは銀行員で、フェミニスト運動の活動家である。」という項目の順位を高くしていました。

このような錯誤が連言錯誤です。

1ダニエル・カーネマン(著)、村井章子(翻訳)『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』早川書房、2014年、281頁。以下『ファスト&スロー』と略記。