プロジェクト・ライフサイクルとは何か?PMBOKの用語を解説
プロジェクト・ライフサイクルとは
プロジェクト・ライフサイクルとは、プロジェクトが開始され完了に至るまで、プロジェクトが経由する一連の局面のことを指します。
PMBOKでは「プロジェクトの開始から完了に至るまで、プロジェクトが経由する一連のフェーズ[1]PMBOK第6版、732頁。」と定義され、ISO21500では「プロジェクトの開始から終了までが定義されたフェーズの集合[2]榎本徹『ISO21500から読み解く プロジェクトマネジメント』オーム社、2018年、36頁。」とされています。
プロジェクト・ライフサイクルの特徴
プロジェクトの不確実性
プロジェクト・ライフサイクルの中で、プロジェクトの不確実性が最も高いのは、プロジェクトの開始時期です。
プロジェクトには「段階的詳細化」、つまり進めてみてようやく内容が事細かにわかっていくという特性があります。そのため、プロジェクトの開始時期、即ちプロジェクト・ライフサイクルの初期段階でプロジェクトの不確実性は最も高く、プロジェクト・ライフサイクルの最終段階で不確実性は最も低くなります。
プロジェクトに必要とされるリソース(資源)
プロジェクトに必要とされるリソースも、プロジェクト・ライフサイクルの段階で変動していきます。
しかし、そのパターンは「成功するプロジェクト」か「失敗するプロジェクト」かで異なります [3]プロジェクトマネジメント – ほげおの起業メモ – Seesaa Wiki(ウィキ) 。原点はPMBOK第3版より。 。
成功するプロジェクトではプロジェクト初期段階で必要とするリソースは少なく、時間とともに増加していきますが、プロジェクト・ライフサイクルの中期段階から最終段階の変わり目でピークを迎え、その後は減少していきます。
一方、失敗するプロジェクトでは、プロジェクトの中期を過ぎても必要とされるリソースは減らず、プロジェクトの最後まで様々なリソースを使いながら進んでいきます。
変更に対する費用・影響
上述の通り、プロジェクトは段階的詳細化という特質を持つため、プロジェクトが開始した後も、仕様変更などが議題に上がることがあります。
こうした変更要求に対応する費用や影響は、プロジェクト・ライフサイクルの初期段階であれば小さく、プロジェクト・ライフサイクルの経過に伴い大きくなっていきます。
例えば、何かしらのITシステムを構築するときに、まだ紙面上で仕様を策定している段階であれば、当初の予算・見積りが許す限りで変更することは容易です。しかし、実際にプログラマーが開発に着手した後に変更が発生すると、追加の費用が発生する可能性だけでなく、スケジュールの変更も考えなければならない事態になることもあります。
ステークホルダーが与える影響
プロジェクトはプロジェクト・チームのメンバーだけでなく、様々なステークホルダーも関係しながら進められていきます。
こうしたステークホルダーの影響力もプロジェクト・ライフサイクルの段階によって変わっていきます。
目標や前提条件を確認しているプロジェクトの初期段階では、ステークホルダーの意見も通りやすく、与える影響も大きくなります。
一方で、プロジェクトの最終段階でステークホルダーがプロジェクトの目標や成果物に口を出そうとしても、もはや変更が難しく、採用されないことが多くなります。
このように、ステークホルダーはプロジェクト・ライフサイクルの初期段階では大きく、時間とともに影響力を低下させていきます。
プロジェクト・ライフサイクルと開発ライフサイクル
プロジェクト・ライフサイクルの中には開発ライフサイクルが含まれています。
さらに開発ライフサイクルには、予想型、反復型、漸進型、適応型、ハイブリッド型の5つの型があり、プロジェクト・マネジャーはこの中から適切な開発ライフサイクルの型を選び、プロジェクトを進行させていきます。
このプロジェクト・ライフサイクルと開発ライフサイクルの関係について、PMBOKの中では十分な説明がなされていませんが、両者は「どのような人生が待っているのか?(プロジェクト・ライフサイクル)」と「どのようにして人生を過ごすか?(開発ライフサイクル)」という関係に近いのかもしれません。
現実世界で「どのような人生が待っているか?」が明らかなのはとてもつまらないことですが、プロジェクトマネジメントの中では明瞭にしておきたいポイントです。
システム開発ライフサイクル(SDLC)について詳しく
システム開発ライフサイクル(Systems development life cycle)についてさらに知りたい場合は、以下の記事もご参照ください。
注
↑1 | PMBOK第6版、732頁。 |
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↑2 | 榎本徹『ISO21500から読み解く プロジェクトマネジメント』オーム社、2018年、36頁。 |
↑3 | プロジェクトマネジメント – ほげおの起業メモ – Seesaa Wiki(ウィキ) 。原点はPMBOK第3版より。 |