デザイン・フォー・エックス(DfX:Design for X)とは何か?
デザイン・フォー・エックスの概要
デザイン・フォー・エックス(DfX:Design for X)とは、設計における特定の側面を最適化するためにプロダクトの設計中に適用できる技術的なガイドラインのことです。
あるプロダクトの製造を効率化するためには設計段階で製品のライフサイクル全体を通じた検討をすることが大切ですが、このときに用いられる手法が、デザイン・フォー・エックスです。
従来のものづくりは、製品の量産開始後に設計改善が行われ、原価を下げたり、効率化が行われていたりしました。しかし、近年では、多品種少量化が進んできているため、設計初期から最適な設計を実現することが重要と言われています。
実際に、製品は80%が設計で決まると言われており、早期に製品の量産を実現するには、開発設計段階で十分に設計を検討していく必要があります。このように検討をする際に、デザイン・フォー・エックスが活用されます。
あまり聞きなれない言葉ではありましたが、デザイン・フォー・エックスに関連する評価手法が商用ツールとして流通し始めたこともあり、認知されるようになってきました。
デザイン・フォー・エックスの必要性
デザイン・フォー・エックスを活用すると、以下のようなメリットが得られます。
コスト削減ができる
設計の初期段階では、設計対象の内容が明確になっていない反面、高い自由度が担保されています。しかし、自由に設計していくと手直しが発生しやすく、開発工数が増えてしまいがちです。このような開発工数を削減するために、デザイン・フォー・エックスで設計前に製品のライフサイクル全体を考えていきます。
実際に富士通では、設計前にライフサイクル全体について検討することで、開発工数が50%削減できたという報告も行っています[1]富士通におけるDFXの適用。
ライフサイクル全体を検討して、さまざまな角度を考慮して設計を始めれば、手戻りなく、効率的な設計が行えるようになります。そのため、通常の設計手順と比較すると、大幅なコスト削減が望めます。
品質改善が行える
設計前にライフサイクル全体を検討しておくことで、早い段階から量産準備が可能となり、早期に量産安定化を図ることができます。開発・製造部門でライフサイクルを検討して、組立、試験などの方法を事前に検討しておくことで、より高度な設計が行えます。
パフォーマンス向上につながる
設計前に検討すべき項目を見える化して、プロジェクト・メンバーと共有することで製品のライフサイクル全体の流れを全体で把握することができます。どのように作業していけば良いのか、最終的に目指すゴールは何なのかを共有することで、チームのパフォーマンスを上げていくことができます。
テストプログラムの開発
開発・評価・量産の各ステップでは、同様の測定・試験が行われますが、各担当者の思惑でテストプログラムを開発すると、部分最適は図れるものの、開発言語やプログラム構造の違いによって流用性が低くなってしまいます。開発効率も悪くなってしまうでしょう。その結果、量産試験用プログラムが提供できない事態も発生します。
しかし、このような問題はデザイン・フォー・エックスを活用して、共通の開発・実行環境下を決めておくと解決できます。
デザイン・フォー・エックスの手順
設計を効率化するために、事前に製品のライフサイクル全体を検討する際にデザイン・フォー・エックスが利用されますが、検討すべき課題は以下のようなものがあります。
DfX | 説明 | |
---|---|---|
DfM | Design for Manufacturability | 製造性 |
DfT | Design for Testability | 試験容易性 |
DfA | Design for Assembly | 組立性 |
DfE | Design for Environment | 環境適合性 |
DfD | Design for Disassembly | 易分解性 |
DfR | Design for Recycling | リサイクル性 |
DfS | Design for Service | 保守サービス性 |
このようにデザイン・フォー・エックスのアイデアを取り入れた場合は、ただ製品を設計するだけでなく、試験がしやすいか、保守・メンテナンスがしやすいかなどの点まで考えて設計を行っていきます。
ソフトウェア開発においては、非機能要件を考えていく作業に近いものがあります。
非機能要件については、以下の記事もご参照ください。