「完璧主義」で苦しくなっていませんか?3つの種類と「完璧志向」へシフトする秘訣
「もっと完璧にやらなきゃ……」 「小さなミスも許されない……」
仕事や勉強で高い目標を持つことは素晴らしいことですが、それが行き過ぎて自分を苦しめてはいませんか?
櫻井茂男先生の著書『完璧を求める心理学 自分や相手がラクになる対処法』では、完璧主義を「過度に完璧を求めるパーソナリティあるいは認知傾向」と定義しています[1]櫻井茂男『完璧を求める心理学 自分や相手がラクになる対処法』金子書房、2019年、7頁。以下『完璧を求める心理学』と略記。
今回は、『完璧を求める心理学』の内容をもとに、心理学的な視点から完璧主義の正体を解き明かし、心をラクにしながらパフォーマンスを維持する「完璧志向」への切り替え方について解説します。
完璧主義には3つのタイプがある
心理学者のヒューイットとフレット(Hewitt & Flett)の研究によると、完璧主義はその対象によって以下の3つの種類に分類されます。
- 自己志向的完璧主義: 自分に対して完璧を求める。
- 他者志向的完璧主義: 他者(部下やパートナーなど)に対して完璧を求める。
- 社会規範的完璧主義: 「周りから完璧でいることを求められている」と感じる。
特に真面目なビジネスパーソンに多く、心のバランスを崩しやすいのが一つ目の「自己志向的完璧主義」です。
「自己志向的完璧主義」を深掘り:なぜ自分を追い詰めるのか?
主な特徴
自己志向的完璧主義の人には、以下のような特徴が見られます。
- すべてのことにおいて完璧を求める。
- 現状の自分には到底届かない、高すぎる目標を設定する。
- 自分に対して厳しすぎる評価を下し、少しの妥協も許さない。
- 「小さなミスもしてはいけない」と、細部に過剰に気を遣う。
- 他者からの否定的な評価を過度に恐れる。
なぜ完璧主義になるのか?
では、なぜ人は完璧主義になるのでしょうか?
性格的な要因もありますが、「親との関わり方」も大きく影響していると考えられています。親が子どもに完璧を求め続けると、子どもはその価値観を内面化しやすくなります。
また、親子関係において安定した「アタッチメント(愛着)」が形成されていない場合、子どもは「高い成果を出さないと親に関心を向けてもらえない」と感じ、親の気を引くために完璧主義になっていくケースもあります。
短期的な成功と長期的リスク
高い目標を掲げることは、一時的には仕事や勉強のパフォーマンスを向上させるかもしれません。しかし、長期的には以下のようなリスクを伴います。
- 絶え間ないプレッシャーによる抑うつ状態。
- ミスを極度に恐れることによる強迫性障害的な傾向。
- 常に満たされない感覚による燃え尽き症候群。
「完璧主義」と「完璧志向」の違い
完璧主義と似て非なる概念に「完璧志向(適応的完璧主義・健康的な完璧主義)」があります。この二つの違いを理解することが、心をラクにする鍵となります。
以下の表でその違いを比較してみましょう[2]『完璧を求める心理学』18頁。
| 比較項目 | 完璧主義(不適応的) | 完璧志向(適応的) |
| 対象 | すべてのこと、あるいは限定されたこと | 限定されたこと |
| 完璧の求め方 | 完璧で「あらねばならない」(過度・理想的) | 完璧で「ありたい」(適度・現実的) |
| 構成要素 | ①高すぎる目標設定 ②厳しすぎる自己評価と自己批判 ③失敗恐怖 ④強すぎる評価懸念 | ①理にかなった高い目標設定 ②しっかりした自己評価と自己強化(ほめる) ③失敗を恐れない(挑戦的姿勢) ④他者の否定的な評価をあまり気にしない |
| 一時的な結果 | 高いパフォーマンス・達成感など | 同左 |
| もたらされる結果(長期) | 長期的に不適応 疲労、先延ばし、無気力、うつ病、摂食障害、強迫性障害、不安障害など | 適応 高いパフォーマンスと身体的・精神的健康 |
最大の差は、目標が「現実的か」、そして失敗を「成長の糧」と捉えられるかにあります。
完璧主義の人が「完璧でないと価値がない」と自分を追い詰めるのに対し、完璧志向の人は「完璧は理想だが、現実的にはそこに近づくプロセスに価値がある」と考えます。この柔軟な考え方こそが、長期間高いパフォーマンスを維持し、メンタルを守る秘訣です。
まとめ:完璧主義から「完璧志向」へ乗り換えよう
もしあなたが「今のやり方ではいつか限界が来る」と感じているなら、少しずつ完璧主義から「完璧志向」へとアップデートしていきませんか?
- 目標を「理にかなった高さ」に調整する。
- 小さなできたことを自分で「ほめる」習慣をつける。
- 「失敗は挑戦した証」と捉え直す。
また、周囲に完璧主義で自分を追い詰めている仲間がいれば、まずはじっくり話を聞いてあげてください。
「完璧じゃなくても、今のままで十分価値がある」というメッセージを伝え、少しずつ「完璧志向」へ乗り換えるサポートをしてあげることが、チーム全体の健康と成長につながります。
今日から「100点満点」ではなく「納得できる着地点」を目指しましょう!


