ボブ・ヨハンセンが提唱する未来を創るリーダーの必須スキルとトレーニング方法

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画像:未来を創るリーダー10のスキル 不確実性の時代を生き抜く新たな人材の条件

「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)」という言葉が定着して久しいですが、この概念をいち早くリーダーシップ論に取り入れたのが、アメリカの未来研究所(IFTF)のボブ・ヨハンセン(Bob Johansen)です。

彼の著書『未来を創るリーダー10のスキル(原題:Leaders Make the Future)』において、未来のリーダーは「未来を予測する」のではなく、「未来を創る」能力が求められると説いています[1]ボブ・ヨハンセン(著)、 鹿野和彦(監訳)、伊藤裕一 (訳)、田中良知(訳)『未来を創るリーダー10のスキル … Continue reading

今回は、彼が提唱する、不確実な世界を生き抜くための「10の未来のリーダーシップスキル」について解説していきます。

目次

作り手の本能(Maker Instinct)

「作り手の本能」とは?

画像:「作り手の本能」とは?

作り手の本能とは、「物事をつくり、育成し、他者とつながるための潜在的なやる気を活用する能力」のことです。

これからの社会では、ある一つの組織にまとまって、誰かの命令を待つということが少なくなることが予想されます。
今までのリーダーは自分の部署のスタッフを管理しておけばよかったのですが、これからは他部署の良く知らないスタッフや、組織外の協力会社・フリーランスとも協力してものづくりをしていく時代になります。

そのような時代では、リーダーは単に指示を出す「管理者」ではなく、自ら手を動かし、プロトタイプを作り、ものづくりに人々を巻き込む「クリエイター」であるべきだというのがボブ・ヨハンセンの考え方です。

いわゆる「内的動機づけ」によって動き、関係者をモチベートしていくことが、リーダーの必須スキルになっていきます。

内的動機づけについて詳しく

内的動機づけについて詳しくは下記の記事もご参照ください。

「作り手の本能」のトレーニング方法

画像:「作り手の本能」のトレーニング方法

ここからは、「作り手の本能」のトレーニング方法を紹介していきます[2]『未来を創るリーダー10のスキル』296頁

「DIY」の現場に行く

子供のころには持っていた「作り手の本能」を、大人になる中で忘れてしまった人も少なくないでしょう。
そうした人は、「DIY」の現場に訪れて、作り手たちの熱気に触れることで、自身の潜在的な本能を呼び覚ますことが大切です。
身の回りのワークショップに出かけてみてはどうでしょうか?

泥臭く手を動かす

プラモデルや料理など、実際に何かをつくることに専念してみましょう。
かつてない新しいものに挑戦し、「手を泥だらけにする」経験がリーダーとしての感覚を鋭くします。

明瞭に考える力(Clarity)

「明瞭に考える力」とは?

画像:「明瞭に考える力」とは?

明瞭に考える力とは、「不確実な未来の混乱の中でも、進むべき方向(ビジョン)を明瞭に提示する能力」のことです。
「何をつくるか」は明瞭に、「どうつくるか」は柔軟に考えていくことが大切です。

ここで重要なのは「Certainty(確実性)」と「Clarity(明瞭さ)」の違いです。
「明瞭さ」は「確実性」と勘違いされがちですが、VUCAの世界で「確実性」を求めるのは不可能です。しかし、方向性としての「明瞭さ」は提示できます。
詳細な計画に固執するのではなく、ビジョン(行き先)だけはブラさず、手段は柔軟に変える姿勢が求められます。

「明瞭に考える力」のトレーニング方法

画像:「明瞭に考える力」のトレーニング方法

ここからは、「明瞭に考える力」のトレーニング方法を紹介していきます[3]『未来を創るリーダー10のスキル』297頁

フィードバックを求める

「明瞭に考える力」を育むシンプルな方法は、家族や同僚に、「自分のコミュニケーションは明瞭か?」と率直に聞いてみることです。
不明瞭だった事例を挙げてもらい、客観的に評価してもらいます。

「指揮官の意図」を学ぶ

軍隊の歴史や軍事指導者の書籍を読み、混乱した戦況下でいかにシンプルに意図を伝達しているかを学びます。

とくに昨今では、アメリカ海兵隊の意思決定方法が注目されています。
海兵隊の指揮官は、千変万化する戦局に対して「明瞭に考える力」を発揮し、「何がゴールか」の軸をブラさずに意思決定をしています。

ジレンマをチャンスに変える力(Dilemma Flipping)

「ジレンマをチャンスに変える力」とは?

画像:「ジレンマをチャンスに変える力」とは?

ジレンマをチャンスに変える力とは、「解決困難なジレンマを、優位点とチャンスに転換する能力」のことです。

ジレンマとは何でしょうか?ボブ・ヨハンセンは「Problem(問題)」と「Dilemma(ジレンマ)」を明確に区別しています。

「Problem(問題)」と「Dilemma(ジレンマ)」の違い
  • 問題: 解決できるもの。
  • ジレンマ: 解決できず、管理し続けるしかないもの(例:中央集権か分権か)。

たとえば、高齢社会を考えてみましょう。
現在日本だけでなく、先進国では出生率が低下し、人口の高齢化が進んでいます。
そのような社会では、高齢者を重要な労働の担い手にしなければなりませんが、一方でそれは若手のチャンスを奪いがちです。
このように二律背反な状況がジレンマです。

ジレンマを無理に解決しようとして無駄なエネルギーを使うのではなく、その緊張関係を利用して新しいイノベーションを生み出す発想転換(Flipping)が必要です。

「ジレンマをチャンスに変える力」のトレーニング方法

画像:「ジレンマをチャンスに変える力」のトレーニング方法

ここからは、「明瞭に考える力」のトレーニング方法を紹介していきます[4]『未来を創るリーダー10のスキル』298頁

「ジレンマ日記」をつける

「ジレンマをチャンスに変える力」のトレーニング方法として最も取り組みやすいのが、日々のニュースや仕事の中で直面した課題を、「解決できる問題」か「解決不能なジレンマ」かに分類して記録することです。

ゲームから学ぶ

解決策のないジレンマを含んだビデオゲームを見つけ、低リスクな環境で「解決せずに前に進む」練習することも、「ジレンマをチャンスに変える力」を育成します。
社会問題を扱った「シリアスゲーム」と呼ばれるゲームや、「シムシティ」などの都市開発のシミュレーションゲームは、ジレンマを体験するよい教材になるでしょう。

没入体験から学ぶ力(Immersive Learning)

「没入体験から学ぶ力」とは?

画像:「没入体験から学ぶ力」とは?

没入体験から学ぶ力とは、「不慣れな環境に自分を没入して、当事者として学ぶ能力」のことです。

「ジレンマをチャンスに変える力」のトレーニング方法の「ゲームから学ぶ」に似ていますが、座学やデータ分析だけでなく、VR(仮想現実)やゲーム、あるいは全く異文化の環境に「ダイブ(没入)」する学習法です。
一人称視点(First-person perspective)で体験することでしか得られない「肌感覚」が、未来の予兆を感じ取る鍵になります。

「没入体験から学ぶ力」のトレーニング方法

画像:「没入体験から学ぶ力」のトレーニング方法

ここからは、「没入体験から学ぶ力」のトレーニング方法を紹介していきます[5]『未来を創るリーダー10のスキル』300頁

逆メンタリング

「メンタリング」といえば、先輩や上司が後輩の成長を支援する方法です。
その考えを反転させた「逆メンタリング」では、15歳以下の「デジタルネイティブ」を見つけ、メンターになってもらいます。
彼らと一緒にゲームをし、なぜそれに夢中になるのかを教えてもらいます。

「不安」に飛び込む

「不安」に飛び込むことも、「没入体験から学ぶ力」のトレーニングになります。
海外への冒険旅行や、自分を不安にさせるようなコミュニティに一定期間入り込み、全身で異文化を感じ取ります。
実際に自分が体験することで、他者が感じている不安や不便さに対する感性を磨いていきます。

生物学的共感力(Bio-Empathy)

「生物学的共感力」とは?

画像:「生物学的共感力」とは?

生物学的共感力とは、「自然界の視点で物事を見通し、自然のパターンを理解・尊重・学習する能力」のことです。

これはビジネスを機械的なサイクルではなく、生態系(エコシステム)として捉える視点です。
自然の回復力や循環システムを理解することは、企業の長期的な生存戦略と直結します。

「生物学的共感力」のトレーニング方法

画像:「生物学的共感力」のトレーニング方法

ここからは、「生物学的共感力」のトレーニング方法を紹介していきます[6]『未来を創るリーダー10のスキル』301~302頁

ペットを観察する

犬や猫を飼っているなら、少なくとも1週間、彼らの行動を詳細に観察し、ドッグトレーナーなどの専門家の視点を学びます 。

生物学に触れる

初歩的な生物学のコースを受講したり、現役の生物学者のアシスタント体験をしたりして、自然の摂理をビジネスのメタファーとして取り入れます 。

建設的脱分極化(Constructive Depolarizing)

「建設的脱分極化」とは?

画像:「建設的脱分極化」とは?

建設的脱分極化とは、「対立する状況を鎮静化し、多様な人々を肯定的な取り組みへともたらす能力」のことです。

現在、世界中で文化的、政治的な分断(Polarization)が進んでいます。
リーダーの役割は、どちらかの極に立つことではなく、共通の土台を見つけ出し、対話を成立させることです。
「妥協」させるのではなく、異なる意見を持つ人々を新しい未来へ向かわせる、高度なファシリテーション能力とも言えます。

「建設的脱分極化」のトレーニング方法

ここからは、「建設的脱分極化」のトレーニング方法を紹介していきます[7]『未来を創るリーダー10のスキル』302~303頁

中立的な観察者になる

激しく対立している状況(分極化)を見つけ、どちらの側にもつかずに「何が起きているか」を観察し、人々がどう相互作用しているかだけを分析します。

こうしたトレーニングは、「ジレンマをチャンスに変える」の能力を育むことにもつながります。

異文化体験

海外旅行や多言語学習を通じて、自分とは異なる価値観を持つ人々が「どう世界を見ているか」を体験として学びます 。

穏やかな透明性(Quiet Transparency)

「穏やかな透明性」とは?

穏やかな透明性とは、「過大に自己アピールせず、成果を淡々と公開する能力」のことです。

この能力は、SNS時代の「見せかけの透明性」とは対照的です。
ここで求められるのは、自分を大きく見せる(Self-promotion)のではなく、誠実さと謙虚さを持って情報をオープンにする姿勢です。
リーダーが自らの弱さや失敗も含めて透明にすることで、組織全体の信頼が醸成されます。

「穏やかな透明性」のトレーニング方法

ここからは、「建設的脱分極化」のトレーニング方法を紹介していきます[8]『未来を創るリーダー10のスキル』304~305頁

「強さと謙虚さ」のモデルを探す

職場や身近な場所で、強さ(実績)を持ちながらも謙虚に振る舞っている人を観察します。彼らがどんな言葉や態度を選んでいるかを真似ます 。

反面教師から学ぶ

逆に「傲慢な人」を観察し、過度な自己アピールがいかに信頼を損なうかを確認します 。

迅速に試作する力(Rapid Prototyping)

「迅速に試作する力」とは?

迅速に試作する力とは、「失敗から学ぶことを前提に、初期のイノベーションを素早くつくり出す能力」のことです。
これはまさにシリコンバレーの合言葉である「Fail fast, fail early, fail often(早く、頻繁に失敗せよ)」の精神です。
つまり、完璧な計画を立ててから動くのではなく、まず形にして市場に問い、フィードバックを得ながら修正し続けるアジャイルな姿勢が必須です。

「迅速に試作する力」のトレーニング方法

ここからは、「迅速に試作する力」のトレーニング方法を紹介していきます[9]『未来を創るリーダー10のスキル』306頁

初日に試作する

新しいプロジェクトを始めたら、初日に試作品(プロトタイプ)を作ります。意識的に「早く失敗」し、そこから学ぶサイクルを回します 。

デザイン思考に触れる

デザイナーと話し、彼らがどのように試作を繰り返しているか、そのプロセスを学びます 。

スマートモブを組織する力(Smart Mob Organizing)

「スマートモブを組織する力」とは?

スマートモブを組織する力とは、「SNSなどの伝播力を活用し、社会変革ネットワークをつくり出し育成する能力」のことです。

「スマートモブ」とは、テクノロジーを使って瞬時に集まり行動する群衆のことを指します。
リーダーは社内の人間だけでなく、社外のコミュニティ、ファン、あるいは社会運動と連携し、大きなうねりを生み出すプロデューサー的な役割を担います。

「スマートモブを組織する力」のトレーニング方法

ここからは、「スマートモブを組織する力」のトレーニング方法を紹介していきます[10]『未来を創るリーダー10のスキル』307頁

事例を探す

ニュースやコミュニティで、スマートモブ(賢い群衆)が動いた事例を探し、彼らがどのメディアをどう使って連携したかを分析します 。

自分自身をメディア化する

自分自身がオンラインとオフラインをどう使い分けているか、リーダーとしてどう発信しているかを振り返ります。

共通基盤をつくる力(Commons Creating)

「共通基盤をつくる力」とは?

共通基盤をつくる力とは、「競合とも便益を分かち合い、高い次元での競争を可能にする強みを育てる能力」のことです。

ボブ・ヨハンセンが「最も重要なスキル」と位置づけるのがこの能力です。
自社の利益(私益)だけを追求する「ゼロサムゲーム」ではなく、共有財産(コモンズ)を作ることで市場全体を大きくし、結果として自社も成長する「ポジティブサム」の戦略です。
オープンソースやプラットフォームビジネスの根幹となる考え方です。

「共通基盤をつくる力」のトレーニング方法

ここからは、「スマートモブを組織する力」のトレーニング方法を紹介していきます[11]『未来を創るリーダー10のスキル』308~309頁

「得るために与える」

自分にとっては余剰でも、他人にとっては価値あるもの(情報やリソース)を無償で提供してみます。そこからどんな関係性が生まれるか実験します 。

共有資産を探す

自分の業界や地域にどのような「共有財産(コモンズ)」があるかを探し、それがどう価値を生んでいるかを研究します 。

おわりに:スキル習得への第一歩

これらの10のスキルは、生まれ持った才能ではなく、学習し実践することで身につけられるものです。

10個すべてを完璧にする必要はありません。まずは、あなたが最も興味を持った「トレーニング」を一つ選んで、今週末にでも試してみませんか?

1 ボブ・ヨハンセン(著)、 鹿野和彦(監訳)、伊藤裕一 (訳)、田中良知(訳)『未来を創るリーダー10のスキル 不確実性の時代を生き抜く新たな人材の条件』日本能率協会マネジメントセンター、2013年。以下『未来を創るリーダー10のスキル』と略記
2 『未来を創るリーダー10のスキル』296頁
3 『未来を創るリーダー10のスキル』297頁
4 『未来を創るリーダー10のスキル』298頁
5 『未来を創るリーダー10のスキル』300頁
6 『未来を創るリーダー10のスキル』301~302頁
7 『未来を創るリーダー10のスキル』302~303頁
8 『未来を創るリーダー10のスキル』304~305頁
9 『未来を創るリーダー10のスキル』306頁
10 『未来を創るリーダー10のスキル』307頁
11 『未来を創るリーダー10のスキル』308~309頁
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