プロジェクトは担当者との関係だけでは進まない!担当者の後ろに隠れていたステークホルダーによって発生したトラブルを紹介

2022年3月29日

仕事は担当者と進めることが多いものの……

ソフトウェア開発をはじめ、ベンダー企業はクライアント企業の担当者とプロジェクトを進めていきます。プロジェクトによっては、ベンダー側・クライアント側両方ともに担当者同士だけで話し合いを行い、プロジェクトを進めていくこともあります。
しかし、担当者同士だけで進めているプロジェクトであっても、担当者の後ろにいるステークホルダーの存在を忘れてはいけません。
今回は担当者同士で進めていたプロジェクトが陥ったトラブルの実例を紹介し、その対策を考えていきます。

失敗談

今回はとある製造業の企業における生産現場向けのシステム導入プロジェクトでの失敗談を紹介します。
このプロジェクトは比較的小規模な案件であり、マニュアル運用の簡単な現行業務をITツールに置き換え、ヒューマンエラーを無くすことを目的として始まりました。

プロジェクトを進めるにあたり、現場をよく知る方が担当者に任命され、その方と一緒に現行業務の調査と要件定義を進めていきました。
当初は担当者とのコミュニケーションがギクシャクする面もありましたが、徐々に関係が改善し、情報収集や詳細な要求事項の確認をスムーズに行うことができるようになりました。
そのまま開発も順調に進み、現場での導入テストを迎えることになりました。我ながら、かなり進捗状況に自信を持っていましたし、担当者の方も満足そうな表情でした。現場でテストを行う前に実施する事前確認でも大きな問題点は見つからず、このままプロジェクトは終結するかに思われました。

しかし、いざ現場でのテストを迎えると状況は一変しました。担当者の上司に相当する製造の部課長クラスの方々から、現場でのテストに参加したいという突然の申し出があったのです。
ただのオブザーバーとしての参加であれば問題になりませんでしたが、テストの最中、元々の要件には入っていなかった大量の指摘が彼らから入り、要件の追加を求められました。
それらの指摘の中には、当初の想定である、ヒューマンエラーを無くすという目的から明らかに外れたものも含まれていました。私一人の力では対処が難しいと考え、私の上司にサポートを依頼しました。
ところが、上司を交えて状況の問題点をいくら説明しても、部課長クラスの方々は聞く耳を持ちませんでした。
最終的には追加対応することになり、大幅なコスト増加とプロジェクト遅延につながりました。もちろん、このコストのアップチャージと遅延に対する交渉も非常に難航しました。小規模なプロジェクトを想定していたにもかかわらず、いつまでやっているのかと周囲から呆れられながら、ひっそりとプロジェクトを終わらせることになりました。せっかく担当者の方といい関係を築くことができたにもかかわらず、最終的には気まずくなってしまったことも残念でした。

担当者の後ろにいるステークホルダーとその体制の把握が必要

今回は担当者同士で進めていたプロジェクトの終盤で、クライアント側のステークホルダーが追加要望をしてきたことをきっかけにトラブルに発展した事例を見てきました。
今回のようなトラブルを防ぐには、担当者の後ろにいるステークホルダーとその体制を把握することが大切です。
担当者が全権限を持っているという場合ではない限り、担当者は他のステークホルダーの代弁者としてプロジェクトに参加します。そのため、クライアント側の担当者がGOサインを出したとしても、単にその担当者が良いと思っているだけにすぎず、周囲の合意を得られていないということがあります。
担当者個人が判断しているのか、それとも適切な承認を経て組織として合意しているのかを知るためにも、ステークホルダーを整理し、組織の体制を把握しておくことが重要です。
たとえばベンダー側は「今回のプロジェクトに対する要望はこれで十分ですか?」と問いかけるだけでなく、体制を把握したうえで「承認は得られましたか?」などと確認しておくと、トラブルを防ぐことができます。
また、こうした確認を実施したことを議事録などに残しておくと、万が一トラブルに発展した際の対抗手段として使えます。
担当者同士で進めていくプロジェクトであっても、そのプロジェクトには様々なステークホルダーが関係しているという大原則を忘れずに対応していくことが肝心です。