自動運転レベルとは何か?自動運転の倫理問題についても解説

2023年7月18日

自動運転レベルとは?

自動運転レベルとは、定めた自動車の運転自動化をアメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)が0~5までの6段階で定義したものです。さらに、アメリカの自動車技術会(SAE)が2016年にSAE J3016(2016)と呼ばれる基準を示し、NHTSAがこれを採用し、主流の基準になりました。
日本でもSAE J3016(2016)およびこの日本語参考訳であるJASO TP 180041が採用されています。

自動運転レベルが高くなるほどドライバーの必要性が薄くなっていき、日本においては高齢者が多い地域の物流などへの効果が期待されています。
一方で、自動運転に関する法整備や倫理的な問題について議論すべき点が多く残されています。

レベル0

運転自動化無しで、運転の全てを人間が実施している状態が「レベル0」に該当します。

レベル1

「レベル1」ではAIは自動ブレーキや車間距離を一定に保つ(ACC)、車線からはみ出ない(LKAS)などの車両制御を実施します。
レベル1における運転の主体は人間です。

レベル2

「レベル2」では、レベル1技術を組み合わせることで、特定の条件下で自動運転を可能とした状態です。
また、レベル1の状態よりもそれぞれの機能が高機能化しています。
部分的に人間が手を離した状態でも走行可能であるため「ハンズオフ」とも呼ばれています。
レベル2における運転の主体は人間です。

レベル3

「レベル3」は、基本的にはAIが運転を行い、必要に応じてドライバーに運転を要求します。
この段階ではドライバーは常に運転状況を見ている必要がなくなることから「アイズオフ」とも呼ばれます。
レベル3における運転の主体はAIです。

2020年4月に改正道路交通法、改正道路運送車両法が施行され、限定地域におけるレベル3の公道走行が法律上可能となりました。

レベル4

「レベル4」では、特定の敷地内や決まった送迎ルートなど特定条件下においてAIが全ての運転を行います。
このレベルから、無人運転が可能となります。ドライバーを必要としないことから「ブレインオフ」とも呼ばれます。
レベル4における運転の主体はAIです。

2023年4月に道路交通法が改正され、許可を得た場合に限り自動運転のレベル4の公道走行が解禁されました。

レベル5

「レベル5」では、常に全ての運転をAIが行います。
日本では2025年を目処に法整備が行われ、レベル5の自動車が高速道路をふくむ公道を走行可能になる予定です。

小括

レベル0~5の運転レベルをまとめると、以下のようになります。

運転レベル説明
レベル0運転自動化無しで、運転の全てを人間が実施する状態
レベル1AIが自動ブレーキや車線からの逸脱防止(ACC、LKAS)などの車両制御を実施する
レベル2レベル1技術を組み合わせて、特定の条件下で自動運転が可能となる
レベル3基本的にはAIが運転を行い、必要に応じてドライバーに運転を要求する
レベル4特定の敷地内や決まった送迎ルートなどの特定条件下で、AIが全ての運転を行う
レベル5常に全ての運転をAIが行う

自動運転の倫理的課題『トロッコ問題』とは

トロッコ問題とは、1967年にフィリッパ・フット(Philippa Ruth Foot)が提起した倫理学上の問題です。

  • 線路を走っていたトロッコが制御不能になった。このままでは5人の作業員がトロッコに轢かれてしまう
  • 自分は線路の分岐器のすぐそばにいて、今ならばトロッコの進路を切り替えることができる
  • ただし、切り替えた先の線路には1人の作業員が作業している
  • トロッコの進路を切り替えるべきか?

という問題です。
これは「5人の命を助けるために、1人を犠牲にしても良いのか?」という道徳的な問題です。

この問題はさまざまな観点から議論され、現代においても「正解」は存在しません。

自動運転におけるトロッコ問題

トロッコ問題は、AIが操作した自動運転車両が公道で事故を起こした際に責任の所在をどこに置くかという観点で議論に用いられます。

例えばレベル4、レベル5のような人間が一切介入せずにAIによる自動走行を行っている状態で事故を起こして死者がでた場合、罰せられるのは誰になるのか、という議論です。

人間が運転して同様の事故を起こした場合は、ドライバーが罰せられます。
しかし、AIの自動運転によって死者がでた場合、誰を罰するべきでしょうか。

  • 自動運転AIを構築したエンジニア
  • 自動運転機能搭載の車を販売したメーカー
  • 自分では車両を操作していない車に乗車していた人物

どの立場の人物も直接的に責任を担うべきとは考えにくいです。
このように、責任の所在をどこに置くかという点で、自動運転技術の課題は現在も議論が進められています。

自動運転に関する海外の対応

アメリカでは州によって法律が異なるため、自動運転についての反応も州ごとに差があります。
自動運転技術の研究が進んでいる一方で、カリフォルニア州ではトラック運転手の雇用確保を目的に大型トラックの自動運転を禁止する法案が提出されるなど、安全面以外からの社会的問題も起きています。

中国では無人タクシー運転などが一部地域で認められていて、地域によっては完全無人走行も可能です。
ただし、地域限定を解除するための法整備がこれからの課題となっています。

参考

書籍

  • 小塚荘一郎『AIの時代と法』 岩波新書、2019年

Webページ

  • https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001583988.pdf(2023年7月10日確認)
  • https://www.mlit.go.jp/common/001260125.pdf(2023年7月19日確認)
  • https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf(2023年7月10日確認)
  • https://jidounten-lab.com/autonomous-level(2023年7月10日確認)
  • https://jidounten-lab.com/u_autonomous-responsibility-who(2023年7月10日確認)