プロジェクト・マネジャーとは何か?役割や求められる能力を解説

2021年1月7日

プロジェクト・マネジャーの概要

プロジェクト・マネジャーとは、所属する組織から任命され、チームを率いてプロジェクトを運営し、プロジェクト目標の達成の責任を負う役割を背負った人物のことを指します。
PMBOKでは「母体組織によって任命された人で、チームを率いてプロジェクト目標を達成する責任を負う」と定義しています[1]PMBOK第6版、732頁。
この定義において、キーワードは3つあります。

  • 目的
  • チーム
  • 責任

まず、「目的」及び「チーム」については、プロジェクトの特徴自体を意味しています。
特定の目的があり、臨時のチームで取り組む活動がプロジェクトだからです。
次に、「責任」については、成果物だけでなくプロジェクトのQCD(品質・予算・納期)の遵守に責任を持つことを意味しています。
他にも組織へのビジネス価値の提供なども責任の範囲に入りますが、最も重要なのはQCDの遵守です。
3つのキーワードをまとめると、プロジェクト・マネジャーとは、成果物及びQCDの遵守に責任を持ち、臨時のチームメンバーをまとめ上げ、目的の実現を目指すためのリーダーと言えます。

プロジェクト・マネジャーの役割

プロジェクト・マネジャーは、プロジェクト独自の目的に対して臨時のチームメンバーを率いてプロジェクトに取り組みます。
そのため、プロジェクト・マネジャーの役割は、機能部門マネジャーや定常業務マネジャーの役割とは異なります。
機能部門マネジャーは、機能部門や事業部門の管理監督を重視し、定常業務マネジャーは業務の効率化に努めます。
他方、プロジェクト・マネジャーは、一時的に集まったチームを目的達成に向けて率いるチームリーダーとしての役割が期待されています。
また、プロジェクト・マネジャーは、ビジネス目標を正しく理解し、ビジネスを取り巻く環境の変化に柔軟に対応しながらプロジェクトを成功に導いていくプロジェクトの推進役としての役割も求められています。

チームリーダーとしての役割

プロジェクトとは、「目的」の実現に向けて「臨時のチーム」を組んで取り組む活動のことです。
しかし、様々な専門分野から集められた「臨時のチーム」であるがゆえに、チームワークを十分に発揮することは難しいものです。
それどころか、「目的」の内容についてチーム全員がコミットできていなければ、チームメンバーのやる気低下やメンバー間の不信にも繋がります。
また、プロジェクトには、チームメンバー以外のステークホルダーも存在します。
利害が一致するステークホルダーだけでなく、利害が対立するステークホルダーもおり、ステークホルダー全体に気を回さなくてはなりません。
このように、プロジェクトを推進するためには、チームメンバーをまとめるだけでなく、各ステークホルダーの利害調整も行っていく必要があります。
そのためには、単なる管理者ではなく、プロジェクトを引っ張っていくリーダー役として、プロジェクト・マネジャーの役割が重要となります。
プロジェクト・マネジャーには、チームメンバーが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることや組織内外との連携を確実にしていくことが求められています。

ビジネス目標を理解したプロジェクトの推進役としての役割

プロジェクト・マネジャーに求められる役割は時代とともに変化しています。
かつては、とにかくQCD(品質・予算・納期)を遵守して当初の目的を達成すれば、プロジェクト成功とされてきました。
当初の計画どおりに成果物が仕上がれば、発注側もそれで満足したものです。
しかし、ビジネス環境が多様かつスピーディに変化する現代では、単にQCDを守って当初の計画どおり成果物を完成させても、発注側が満足しないケースが見られるようになってきました。
なぜなら、ビジネス環境の変化に従って、発注側の要望も変化しているからです。
そのため、プロジェクト・マネジャーは、プロジェクト自体をビジネスと捉え、ビジネス環境の変化に伴ってプロジェクトの内容も修正していく必要があるという認識を持っておく必要があります。
プロジェクト・マネジャーには、「発注側が本当に必要とするものは何か」「なぜ必要なのか」を意識し、ビジネス目標を正しく理解してプロジェクトを推進する役割が求められています。

プロジェクト・マネジャーの活動範囲

プロジェクト・マネジャーの活動は、広範に及びます。
例えば、チームメンバーやステークホルダーとの関係では、以下のような活動を行う必要があります。

  • チームメンバーとの間でプロジェクトの方向性を提示し、プロジェクト成功に向けたビジョンを共有する。
  • ステークホルダー間の対立を調和し、プロジェクトへの支援を得る。

また、所属する組織との関係では、以下のような活動を行う必要があります。

  • プロジェクトが必要とする人的資源や予算を満たすために、別のプロジェクト・マネジャーとコミュニケーションを図る。
  • 組織全体にプロジェクトマネジメントの価値を示し、組織内のプロジェクトマネジメント受入れの増強に努める。
  • 機能部門マネジャーやPMO(プロジェクトマネジメントオフィス:プロジェクト・マネジャーのバックアップ組織)など、関連するすべてのマネジャーと連携する。

このほか、以下のような活動を行うことも求められています。

  • 最新の業界動向を把握し、プロジェクトに与える影響について判断する。
  • 組織内だけでなく、国内そしてグローバルに、プロジェクトマネジメントに関する知識移転に貢献する。

プロジェクト・マネジャーに求められる能力(PMIタレント・トライアングル)

PMIタレント・トライアングルのイメージ

能力にはアビリティ(ability)やスキル(skill)といった表現がありますが、プロジェクト・マネジャーに求められる能力は、単に知識があるからできる、実行性があるからできる、というだけでなく、人間性も含んだ能力です。
知識・人間性・実行力、これらの総合力が求められます。
このような能力のことを、「コンピテンシー」(Competency)と言います。
プロジェクトマネジメント協会(PMI、本部:米国フィラデルフィア)は、プロジェクト・マネジャーには以下3つのコンピテンシーが求められると提案しています。

  1. テクニカル・プロジェクトマネジメントの技術
  2. 戦略マネジメント及びビジネス・マネジメントの技術
  3. リーダーシップ

PMIは、以上3つのコンピテンシーをまとめて、「PMIタレント・トライアングル」(PMI Talent Triangle)と呼んでいます。

テクニカル・プロジェクトマネジメントの技術

PMIは、プロジェクトの技術を「プログラム又はプロジェクトで望ましい成果を得るためにプロジェクトマネジメント知識を効果的に適用する能力」と定義しています[2]PMBOK第6版、58頁。
つまり、PMBOKで分類している10個の知識エリアの管理項目に従って、プロジェクトを実施するための能力です。
文字どおり、プロジェクトマネジメントの知識をいかに活用できるかという能力を意味しています。
10個の知識エリアのうち、品質マネジメント、コスト・マネジメント、スケジュール・マネジメントの3つがQCDに該当しますが、QCDだけでなく10個の知識エリア全体を活かしてプロジェクトを進める能力が求められています。

戦略マネジメント及びビジネス・マネジメントの技術

PMIは、戦略マネジメント及びビジネス・マネジメントの技術を「組織全体をハイレベルな視点で把握し、戦略的提携と技術革新を支援する意思決定及び行動を効果的に交渉し、かつ展開する能力」と定義しています[3]PMBOK第6版、58頁。
分かりやすくいうと、プロジェクト・マネジャー自身がビジネス目標を正しく理解した上で、プロジェクトを実行するための能力です。
かつてはプロジェクト・マネジャーの仕事はQCD(品質・費用・納期)の遵守が最重要課題とされてきました。
しかし、ビジネス環境が多様かつスピーディに変化する現代においては、ビジネス目線を持ち、ビジネス環境の変化に対応してプロジェクトを推進できる能力が必要とされています。
組織とプロジェクトの相互関係を理解してプロジェクトへの影響度を判断したり、組織に関する知識や情報をプロジェクトに適用したりできることが求められています。

リーダーシップ

PMIは、リーダーシップを「チームを統率し、動機付けしながら導いていく能力」と定義しています[4]PMBOK第6版、60頁。
当初の計画どおりに成果物を作るだけなら、マネジメントさえ上手くできればリーダーシップの必要性は低いかもしれません。
しかし、変化が著しい現代のビジネス環境においては、変化に対して柔軟に対応していくための能力が必要となります。
すなわち、チームメンバーやステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、常にニーズの変化を捉えていく必要があります。
有能なプロジェクト・マネジャーは、プロジェクトにおける約90%の時間をコミュニケーションに費やしていると言われています。
リーダーシップをとるために、コミュニケーションは欠かせません。
また、変化に対して柔軟に対応するためには、日頃チームメンバーをよく観察し、メンバーに合ったリーダーシップを発揮することが求められます。
そうした中で、チームの協力的な雰囲気を作り出しておく必要もあります。

参考

書籍

  • 鈴木安而『図解入門よくわかる最新PMBOK第6版の基本』秀和システム、2018年。

Webサイト

1PMBOK第6版、732頁。
2,3PMBOK第6版、58頁。
4PMBOK第6版、60頁。

役割役割

Posted by promapedia