【要約】7つの習慣 ~スティーブン・R・コーヴィーの名著には何が書いてあるのか?~
今回の内容は動画でも解説していますので、ぜひご視聴ください。
世界的な啓発書『7つの習慣』
スティーブン・R・コーヴィーの『7つの習慣』はデール・カーネギーの『人を動かす』や『道は開ける』と並ぶ世界的な啓発書です。
有名な書籍ではありますが、「読んだことはない」という方も多いのではないでしょうか。
今回は『7つの習慣』のエッセンスである「7つの習慣」を紹介していきます[1]以下、書名の『7つの習慣』を指す場合は『 』をつけ、アプローチの「7つの習慣」を指す場合は『 』をつけず表記する。。
7つの習慣は何を目的としているのか?

そもそも、7つの習慣は何を目的としているのでしょうか?
7つの習慣はスティーブンがまとめた目的達成のためのアプローチです。
30周年記念版の紹介文に「ビジネスから夫婦ゲンカまで。」と書かれているように、ビジネスに限らない、普遍的な考えというのが、7つの習慣の特長です。
7つの習慣の根底にあるもの
インサイド・アウト
7つの習慣の根底には、「インサイド・アウト」「パラダイム」という言葉が頻出します。
「インサイド・アウト」というのは、自分自身の内面から始めるということです[2]スティーブン・R・コヴィー (著)、ショーン・コヴィーほか(著)、フランクリン・コヴィー・ジャパン(訳)『完訳 7つの習慣 … Continue reading。また、「パラダイム」はものごとの見方や視点のことを意味します。
つまり、望ましい境遇にいない時であっても、それを他者のせいにせず、見方を変えて取り組む大切さが、7つの習慣では繰り返し説かれています。
自立、相互依存、再新再生
また、これから紹介する7つの習慣は自立、相互依存、再新再生の方向に進んでいきます。
つまり、今まで周囲の責任にしていたものを「インサイド・アウト」の考えをもって、自分自身の内面から始め、自立をしていきます。
そして、周囲と良好な相互依存の関係を築いていきます。
再新再生は聞きなれない言葉ですが、「継続的な改善」と置き換えてもよいでしょう。つまり、目標達成に向けて成長できる体制を築いていきます。
7つの習慣の内容
7つの習慣は以下の内容で構成されています。
- 主体的である
- 終わりを思い描くことから始める
- 最優先事項を優先する
- Win-Winを考える
- まず理解に徹し、そして理解される
- シナジーを創り出す
- 刃を研ぐ
ここからは、これらの習慣の概要を解説していきます。
第1の習慣:主体的である
第1の習慣は「主体的である」です。
「主体的」「主体性」にもさまざまな意味がありますが、『7つの習慣』における「主体性」とは自発的に率先して行動するだけでなく、人間として、自分の人生の責任を引き受けることを意味しています。
上述のとおり、7つの習慣は自立することから始まります。そのためにはまず、主体的にならなければなりません。
主体的とは何かを考えるために、言葉から見直していきましょう。
たとえば「私にできることは何もない」というのは、自分以外の要素に責任を負わせた言い方です。『7つの習慣』では、こうした言葉を「反応的な言葉」と呼んでいます。
この反応的な言葉を「私は別の案を考える」というように、主体的な言葉に言い換えていきます。
反応的な言葉 | 主体的な言葉 |
---|---|
私にできることは何もない | 私は別の案を考える |
私は……しなければならない | 私は……のほうがよい |
……でさえあったら | 私は……しよう |
つまり、自分にコントロールできるものは何かを考え、それを最大限に活かそうとします。
この時に重要なアイデアが「影響の輪」です。私たちの目の前には、関心があることと、関心がないことが広がっています。
関心があることの中で、自分に何ができるかを考え、その領域で「影響の輪」を広げていくことが大切であり、その輪を広げていく原動力が主体性です。
「主体的である」ということは、他の習慣の土台になっています[3]『完訳 7つの習慣 30周年記念版』89頁。。
まずは言葉づかいから注意し、主体的になっていきましょう。
第2の習慣:終わりを思い描くことから始める
第2の習慣は「終わりを思い描くことから始める」は、その名のとおり、人生の終わりを思い描くということです。そして、その終わりの姿を思い描きながら、今日という1日を始めることが第2の習慣です[4]『完訳 7つの習慣 30周年記念版』118頁。。
終わりを描くのに役立つのが「ミッション・ステートメント」です。
ミッション・ステートメントとは、信条や理念を表明した文章で、「どのような人間になりたいのか(人格)」「何をしたいのか(貢献、功績)」「価値観」を記述していきます[5]『完訳 7つの習慣 30周年記念版』131頁。。
このミッション・ステートメントを書くことで、自分自身のありたい姿を明確にします。
第3の習慣:最優先事項を優先する
ミッション・ステートメントが書けたら、ありたい姿に向かって行動していきます。
その活動の優先順位を考えていくのが、第3の習慣である「最優先事項を優先する」です。
では、最優先事項とは何なのでしょうか。優先事項を確認するために役立つのが、「時間管理のマトリックス」です。

時間管理のマトリックスでは、活動を緊急度と重要度の二軸で判断します。
重要でもあり、緊急度の高い第Ⅰの領域は、日ごろの業務に代表される活動です。
第Ⅱの領域は、緊急度こそ高くないものの、重要度は高い、成長につながるような活動です。
第Ⅲの領域は、無意味な接待に代表される、緊急度は高いものの、重要度は低い活動です。
そして、第Ⅳの領域は暇つぶしのような、緊急度も重要度も高くない活動です。
このマトリックスだけ見ると、緊急度も重要度も高い第Ⅰの領域の活動だけをすることが良いことのように見えます。
しかし大切なことは、第Ⅱの領域の時間を確保し、成長につなげることです。
そのために、週次でスケジュールを立てるなどして、第Ⅱの領域の活動に使う時間を作っていきます。
第4の習慣:Win-Winを考える
第1から第3の習慣までは、自立を目指していく習慣です。そして、第4から第6の習慣では、相互依存を築いていきます。
重要なのは、他者との信頼口座を築くことで、人と人の関係で生まれる信頼をためておくことを、銀行の口座になぞらえて表現しています[6]『完訳 7つの習慣 30周年記念版』258頁。。
第4の習慣である「Win-Winを考える」は「どちらが勝つか?負けるか?」という「Win-Lose」の考えに囚われるのではなく、相互の利益を考えるというものです。
「Win-Lose」の考えの人は、限られたパイの中で自分の取り分を増やそうと考えますが、「Win-Win」の考えでは、この世にはすべての人に行きわたるだけのものがたっぷりあるという豊かさマインドが大切です。
第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される
第5の習慣である「まず理解に徹し、そして理解される」は、いわゆる傾聴の能力です。相手を尊重して、理解することが大切です。
この第5の習慣が最も単純明快で、『7つの習慣』でも多くの紙数は割かれていません。
しかし、スティーブンはこの第5の習慣を身に付けることが一番難しいと言っています[7]『完訳 7つの習慣 30周年記念版』480頁。。
第6の習慣:シナジーを創り出す
第6の習慣である「シナジーを創り出す」では、パートナーやチームと協力関係を築き、個人の力の総和以上の力を生み出していきます。
ここでも、第4の習慣の「Win-Win」の考え、第5の習慣の傾聴をうまく使っていきます。
お互いが高い信頼と協力関係で結ばれていたら、シナジーを生み出すことができます。
時には意見が対立することもありますが、その時は「どちらの意見を通すか」ではなく、Win-Winの関係になれるように第3の道を探すことが大切です。
第7の習慣:刃を研ぐ
第7の習慣である「刃を研ぐ」では、心身ともに成長できるような活動を実践していきます。毎週目標を立て、その目標の達成を目指していきます。
目標を立てる際に大切なのは「精神」「知性」「社会」「肉体」の4つの側面に注意をすることです[8]『完訳 7つの習慣 30周年記念版』425頁。。
- 精神…価値観の明確化と決意、学習、瞑想
- 知性…読書、視覚化、計画立案、執筆
- 社会…奉仕、共感、シナジー、内面の安定
- 肉体…運動、栄養、ストレス管理
これらの4つの側面の1つに焦点を当てるのではなく、バランスを考えて研鑽を積むことが大切です。

「刃を研ぐ」は何かを学習したらそれで完了ではなく、そこから次の目標に向かって決意を新たにし、実行に移し、そして学ぶというサイクルを繰り返していきます。
この「成長の螺旋」と呼ばれるサイクルを回し、再新再生、つまり継続的改善を実現していきます。
注
↑1 | 以下、書名の『7つの習慣』を指す場合は『 』をつけ、アプローチの「7つの習慣」を指す場合は『 』をつけず表記する。 |
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↑2 | スティーブン・R・コヴィー (著)、ショーン・コヴィーほか(著)、フランクリン・コヴィー・ジャパン(訳)『完訳 7つの習慣 30周年記念版』キングベアー出版、2020年、43頁。 |
↑3 | 『完訳 7つの習慣 30周年記念版』89頁。 |
↑4 | 『完訳 7つの習慣 30周年記念版』118頁。 |
↑5 | 『完訳 7つの習慣 30周年記念版』131頁。 |
↑6 | 『完訳 7つの習慣 30周年記念版』258頁。 |
↑7 | 『完訳 7つの習慣 30周年記念版』480頁。 |
↑8 | 『完訳 7つの習慣 30周年記念版』425頁。 |