文書の「ピラミッド構造」とは何か?論理的な文章の書き方を解説
文書の「ピラミッド構造」とは
ピラミッド構造とは、経営コンサルタントのバーバラ・ミントが考案した、論理的でわかりやすい文書を書くためのフレームワークです。
ピラミッドの頂上に一番伝えたい「メッセージ」を置き、その下にそれを支える個々の考えを配置するのが基本的な構造です。
今回は『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』から、このピラミッド構造の文書を作成する手順をご紹介します。
ステップ1 頭を整理する
文書を書きはじめる前に、まず「この文書で自分が伝えたいことはなんなのか」を知る必要があります。ここがわからないまま書き出してしまうと、論理的でわかりやすい文書にすることができません。まずは頭を整理して自分の考えを見つけましょう。
ここからは、頭を整理するための前提となるピラミッド構成の要素と、具体的なピラミッド構造のつくり方を解説します。
ピラミッドを構成する3つの要素
ピラミッドを構成する重要な要素には次の3つがあります。
- 主ポイントと補助ポイント間の縦の関係(Q&A対話方式)
- 補助ポイント同士の横の関係(演繹的論理・帰納的論理)
- ストーリー的導入部
それぞれ詳しく見ていきましょう。
主ポイントと補助ポイント間の縦の関係(Q&A対話方式)
上の階層は下の階層に支えられており、上の階層を読者が読んだ際に出た疑問に下の階層で答える「縦の関係」となるようにします。まず、ピラミッドの頂上に伝えたいこと(主ポイント)を置きます。
文書には読み手の知らないことを伝える目的があるため、この主ポイントに入るのは、読み手の知らない内容(主張)です。
読み手はその内容に対し、「なぜ?」「どのようにして?」「なぜそう言えるのか?」といった疑問を持つので、それをピラミッドの1段下(補助ポイント)に降りて、疑問に答えます。そこでさらなる疑問が生まれるので、また1段下に降りて疑問に答えることを繰り返すのが、ピラミッドの縦の関係です。
補助ポイント同士の横の関係(演繹的論理・帰納的論理)
補助ポイントは上位ポイントの疑問に答える役割がありますが、この時重要なのが「論理的に答える」という点です。すなわち、ピラミッドの横の関係は、論理的であることが求められます。
論理的に疑問に答えるためには、帰納的論理か演繹的論理のどちらかを用いる必要があります。演繹法・帰納法については、後ほどステップ3で詳しく解説します。
ストーリー的導入部
文書の最初から読み手の興味を引きつけなければ、読者は最後まで関心を持って読んでくれません。そこで重要なのが導入部分です。読者の興味を引き続けるためには、読者の抱く疑問を汲み取り、それにきちんと答えていくことが必要です。
そこでまず、「なぜその疑問が出てくるのか」という疑問の由来を考えましょう。そして「状況、複雑化、疑問、答え」というストーリー的展開を用いて読み手の関心を引きつけます。
「状況、複雑化、疑問、答え」については、ステップ2で詳しく解説します。
ピラミッド構造のつくり方
ピラミッド構造をつくるには、トップダウン型とボトムアップ型の2つのアプローチ方法があります。どちらを選択するかは、書き手がその文書でなにを伝えたいのかを把握できているかどうかで変わります。
トップダウン型
トップダウン型は伝えたいことがはっきりしている場合に有効なアプローチ方法です。
トップダウン型の作成手順は以下のとおりです。
- 伝えたい主題をピラミッドの頂上の箱に書く
- 読み手の疑問を書く
- 答えがわかっていれば書く(不明確であれば「答える必要がある」とメモ)
- なぜその疑問が出てきたのか「状況」を明確にし、導入部と一致させる
- 答えから新たにどのような疑問が生まれるか考え、それに答えるQ&Aを繰り返す
ボトムアップ型
ボトムアップ型は伝えたいことが定まっていない場合に使うアプローチ手法です。
ボトムアップ型は以下の手順で進めていきます。
- 伝えたいポイントをすべて書き出す
- それらのポイント同士のつながり(どんな関係があるか)を考え、図示する
- 結論を導く
ステップ2 導入部の構成をつくる
導入部では、主題に関する物語を伝え、読み手の興味を引くことが大切です。導入部は「状況、複雑化、疑問、答え」で構成されています。
「状況」とは、主題に関して確認されている事実で、実際に記述する際には「すでに一般的に受け入れられている知識」から書きはじめます。次の「複雑化」とは、「疑問」のトリガーとなる事柄です。たとえば、具体例を挙げると次のような内容になります。
状況:問題(課題)がある
複雑化:問題の解決方法が提案された
疑問:それは正しい解決方法なのか
答え:はい(いいえ)
この導入部で重要なのは、読者がすでに知っている一般的な知識を要約する点です。
一般的な知識からはじめることで、文書の中で読者のどのような疑問に回答するのかを明らかにします。このようにストーリー形式で、4つの要素を用いて導入部とすることで、読者の知識を整理することに役立ち、読者の関心をも引くことができます。
ステップ3 メッセージを論理的に関連づける
論理的な文書を作成するためには、メッセージを論理的に関連づけなくてはなりません。論理的に関連づける方法は、演繹法と帰納法の2種類があります。次に、これらについて具体例を挙げて、解説します。
演繹法
演繹法とは、ある前提から出発し、それを用いて特定の結論を導き出すアプローチ方法です。一般的に演繹法は、三段論法の形で表わされ、2つの前提から結論が導かれます。たとえば、次の文章がそうです。
- すべての人間はいつか死ぬ
- サラは人間である
- (それゆえに)サラはいつか死ぬ
この演繹法は明快さが特徴ですが、ポイントとポイントの説明が長い場合は、その明快さが失われるため不向きです。そのため、短い説明で済むピラミッドの下層部での利用にとどめましょう。
帰納法
帰納法は、具体的な事実から法則を導き出すアプローチです。同じ種類の事実や考えをひとつのグループとしてまとめ、そのグループ内の類似点について意見を述べます。演繹法ではポイント同士が互いに結論を導き出す関係がありますが、帰納法の各ポイントには相互関係がありません。
たとえば、「フランスの戦車がポーランド国境にいる」「ドイツの戦車がポーランド国境にいる」「ロシアの戦車がポーランド国境にいる」という事実があったとすれば、「ポーランドが戦車によって侵略されようとしている」と導き出されます。
この場合、補助ポイント同士は相互関係がありませんが、各ポイントの類似点から主張が導き出されます。
参考
- バーバラ・ミント(著)、山崎康司(翻訳)『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』ダイヤモンド社、1999年