論点思考とは?仮説思考との違いや4つのプロセスを解説

目次
  • 1. 論点思考とは?
  • 2. 論点思考の4つのプロセス
    • 2.1. 論点候補を拾い出す
    • 2.2. 論点を絞り込む
    • 2.3. 論点を確定する
    • 2.4. 全体像で確認する
  • 3. 論点思考力の高め方
    • 3.1. 問題意識を持つ
    • 3.2. 視点を変える
    • 3.3. 複数の論点を考える
    • 3.4. 引き出しを増やす

論点思考とは?

論点思考は、特定のトピックや問題に対して論点を考え、論点を整理し、議論や分析を行うプロセスを指します。この論点思考は、批評的思考(クリティカル・シンキング)論理的思考(ロジカル・シンキング)の一部であり、意見や主張を明確にし、論理的な根拠や証拠を持って議論するために重要なスキルです。

ビジネスにおいて解決すべき課題の数は膨大です。そのような状況では、論点の設定が不適切だと、十分な成果は得られません。あれもこれもと解決しようとするのではなく、本当に考えるべき論点に集中して、問題解決の精度を高めることが必要です。

今回はコンサルタントとして活躍し、早稲田大学の名誉教授である内田和成先生の『論点思考』から、論点思考の基本を解説していきます[1]内田和成『論点思考』東洋経済新報社、2010年。

論点思考の4つのプロセス

論点思考は以下の4つのプロセスで進めていきます。

  1. 論点候補を拾い出す
  2. 論点を絞り込む
  3. 論点を確定する
  4. 全体像で確認する


これらの内容を順番に見ていきましょう。

論点候補を拾い出す

まず解決すべき問題に優先順位をつけて、論点を拾い出します。ここで重要なことは、単なる事実や観察で得た現象を論点とはしないことです。

まずは考えられうる論点をリストアップして見える形にしましょう。場当たり的に解決を試みるのではなく、それが本当に解くべき問題であるか意識することが重要です。

論点を絞り込む

リストアップした論点から考えるべき論点を絞り込みます。
「解決できる論点か?」「解決策を実行できる環境があるか?」「解決することで大きな成果を上げられる論点か?」の3つを意識しながら論点を絞り込みます。

『論点思考』では、「当たりをつける」ことと「筋の善し悪しを見極める」ことの2つが大きなポイントと述べています[2]前掲『論点思考』89頁。

当たりをつけるとは、経験に基づく判断によって論点を吟味することであり、筋の善し悪しを見極めるとは、論点の解決難易度を考慮することです。解決して大きな成果があげられる論点は「筋が良く」、実行しても乏しい成果しかあげられない論点は「筋が悪い」とされています。

論点を確定する

絞り込んだ複数の論点から、一つの論点を確定します。この論点確定のためのプロセスには以下の3つがあります。

  • 質問をぶつけて反応を見る
  • 仮説をぶつけて反応を見る
  • 現場を見る

『論点思考』では多くのビジネスマンが質問などしないで問題解決に着手すると記述されています[3]前掲『論点思考』89頁。。しかし、質問や仮説をぶつけることで、論点を明確にしていく作業は重要なプロセスであると解説しています。これらの作業によって筋が良い「論点の仮説」が生まれていくからです。

現場を見ることで得られる現場感覚も重要です。現場を知らずに聞いた話や集められた資料から判断の白黒を付けることの危険性も『論点思考』では指摘しています。

全体像で確認する

論点を確定したら、再度全体像を把握します。これは論点確定までのステップで全体のバランスが損なわれていないかどうかを確認するために行われます。

ロジカル・シンキングやイシュー・ツリー、MECEなどを駆使してもよいですし、紙に論点を書いて構造化するといったアナログの方法でもよいでしょう。要するに論点の因果関係や関連性、大中小といった大きさが把握できればよいわけです。

論点思考力の高め方

『論点思考』では論点思考力を高める方法として、以下の4つをあげています[4]前掲『論点思考』第6章より。

  • 問題意識を持つ
  • 視点を変える
  • 複数の論点を考える
  • 引き出しを増やす

それぞれを見ていきましょう。

問題意識を持つ

論点思考を鍛えるには常に「本当の問題とは何か?」と考える姿勢が重要です。このような姿勢は管理職になってから身に付けようとするのではなく、一般社員のころから意識しておくことが必要です。

問題意識を持つことで「上司や顧客が仕事を依頼した意図」や「仕事をより良いものにするにはどうすればよいのか」などに対する論点の発見のスキルが磨かれます。

視点を変える

視点を変える、視野を広げる、視座を上げるといったことを意識することも、論点思考を鍛えるのに効果的です。普段なら目を向けていない方向に意識して目を向けてみることで、問題解決の新しい切り口が見つかることがあります。

たとえば、営業力に強い会社において、あえて商品開発や生産性の視点で会社を捉えてみると、これまで見つからなかった論点が発見できるかもしれません。

また『論点思考』では2つ上のポジションまで視座を上げて仕事をすることも勧めています。自分が係長であれば部長、自分が課長であれば本部長など、自分の立場を離れることで、自分が抱えている課題がより明確に浮かび上がります。

同じ論点でも視点を変えると見え方が変わってきます。普段から自分なりに工夫して視点を変えてみるとよいでしょう。

複数の論点を考える

『論点思考』では論点思考で複数の論点が浮かばないことは要注意であるとしています。手持ちの情報量が少ないと、真に吟味すべき論点にたどり着かない、あるいは解決すべきではない論点を取り上げてしまうことがあります。

複数の論点候補を洗い出すことは論点思考には欠かせません。視点を変えることと併せて複数の論点を洗い出すことを意識しましょう。

引き出しを増やす

『論点思考』では、誰もが頭の中に「仮想の引き出し」を持っているとしています。引き出しとは「ネタ」を入れる入れ物です。この引き出しを増やすことが論点思考を鍛えるのに効果的です。

ただし、意図的に引き出しを増やすことに意識を向けすぎると、インプットに手一杯になりすぎて引き出しの活用(アウトプット)がほとんどできないという結果になりがちです。

論点思考では無理して情報を集めない、整理しない、覚えない、それが効率良く情報を活用するための近道です。

また引き出しを増やすには、人の話を聞くことも効果的です。たとえ反対意見を持っていたとしても、まずは相手を説得せずに聞いてみましょう。反対意見とは自分の引き出しには無い情報です。少しでも自分の引き出しを増やすために、積極的に活用する姿勢が求められます。

1内田和成『論点思考』東洋経済新報社、2010年。
2,3前掲『論点思考』89頁。
4前掲『論点思考』第6章より。