FTA(故障木解析)とは何か?FT図(Fault Tree Diagram)の作成手順も含めて解説

FTAとは

FTA(Fault Tree Analysis)はシステムの信頼性改善や安全事故の原因調査に用いられる解析技法です。
トップダウン型で解析を行った図式は樹形図状(Fault Tree)になります。
そこから日本語でも「故障木解析」、「故障の木解析」、「フォルトツリー解析」などと呼ばれています。
故障木解析は1960年代にアメリカのベル電話研究所にてH・A・ワトソンのグループによって考案され、ボーイング社によって完成されました。
元々は1961年にアメリカで開発されたミニットマンミサイルの信頼性評価・安全性解析のために考えられた手法です。
1990年には国際規格(IEC 61025)として規定され、日本では2006年に第2版として発行されたIEC 61025:2006を基に日本産業規格(JIS C 5750-4-4:2011)が作成されました。
現在も製造業を中心にさまざまな業界で用いられています。
たとえば、トヨタグループが重視している17の品質手法の中にもFTAが含まれています。

FTAの手順

FTAでは不具合事象を最初に挙げて、そこから下位に向かってトップダウンで要因を分解し、樹形図状のFT図(Fault Tree Diagram)で表して視覚化していきます。
手順は次のとおりです。

頂上事象を定義する

発生することが望ましくないイベントを頂上事象(top event)とします。
頂上事象はFT図を作成するときの目的となる事象で、FT図の最上部に位置しています。
具体的には、次のようなイベントが頂上事象となります。

  • 安全関連:人体の損傷、機能の喪失、死亡等
  • 信頼性関連:製品の機能の喪失、誤動作、寿命、および部品の劣化、材料の強度不足等

頂上事象を決める際には、次の事項を考慮して選定すると効果的です。

  • システムダウンのような業務が遂行できない又は機能を果たせないもの
  • 人命の損失や財産の重大な損失(火災や爆発など)のような安全に対する脅威
  • 通信機能の中断などのような収益に重大な影響を与えるもの

要因を特定する

上位の事象の原因となる事象を漏れや重複がないよう抽出します。
基本事象(basic event)と呼ばれる、それ以上展開できない事象や状態がくるまで要因の特定を繰り返します。
事象の展開のための適切な情報がまだ入手できず、展開できないものは非展開事象(undeveloped event)と呼ばれます。
非展開事象はいかなる入力事象ももたない事象です。

FT図を作成する

論理記号を使って頂上事象と中間事象(intermediate event)、基本事象、非展開事象を論理的につなげてFT図を作成します。
事象同士をつないで論理的関係を示すのは、「ゲート(gate)」と呼ばれる論理記号です。
よく使用されるゲートには、以下のものがあります。

ANDゲート入力事象のすべてが生じる場合に、出力事象が生じます。
ORゲート入力事象のうちのいずれかが生じる場合に、出力事象が生じます。
制約ゲート入力事象が両方とも生じる場合に、出力が生じます。 それらのうちのひとつは条件付きです。
NOTゲート入力事象が生じない場合に、出力事象が生じます。

FT図を評価する

定量的な評価が必要な場合は、基本事象の発生確率を基にしてすべての中間事象と頂上事象の発生確率を求めます。
各基本事象の故障率データは、試験データや故障データ、過去の経験値から得られます。
定性的なアプローチで発生確率を推定できない場合は、入力事象の発生確率や発生頻度は扱いません。
潜在的に望ましくない結果の原因を調査します。

対策を検討する

FT図を評価して終わりではなく、それぞれの重大な障害の根本原因に対する改善策を検討します。

FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)との相違点

FTAと混同しやすい分析手法にFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)があります。
FMEAは日本語では「故障モード・影響解析」などと呼ばれる手法です。
主に設計の改善を目的としており、潜在的な故障モードを予測してトラブルの未然防止を図ります。
FTAがトップダウンの解析であるのに対し、FMEAはボトムアップの解析という違いがあります。
FMEAでは機器や部品などの故障モードを抽出することから始まり、それぞれの故障モードで上位の事象にもたらす影響を評価・分析するのが特徴です。
FMEAも日本産業規格(JIS C 5750-4-3:2011)が制定され、国際規格の改定に伴い2021年に改正されています。

参考

  • https://www.edrawsoft.com/jp/fault-tree-analysis-introduction.html(2023年5月10日確認)
  • https://seisangenba.com/ft-analysis/(2023年5月10日確認)
  • https://kikakurui.com/c5/C5750-4-4-2011-01.html(2023年5月10日確認)
  • http://www.jspmi.or.jp/system/l_cont.php?ctid=130403&rid=833(2023年5月10日確認)