【定額契約・実費償還契約】プロジェクトで結ばれる契約のタイプの一覧

2020年8月26日

プロジェクトで使われる契約

プロジェクトでは外部の組織と契約を結び、必要な資源を調達していきます。PMBOKの手順に沿えば、調達マネジメントの計画の中で、契約の形態が講じられます。
契約には大きく分けて定額契約実費契約に分けられます。

定額契約

定額契約では、製品やサービス定額契約では、製品やサービスなどに対し、一定の決まった総額を定めて契約を結びます。
定額契約には以下のようなタイプが存在します。

  • 完全定額契約(FFFP)
  • 定額インセンティブ・フィー契約(FPIF)
  • 経済価格調整付き定額(FPEPA)

完全定額契約(FFFP)

完全定額契約(FFFP:Firm Fixed Price Contract)では、品目の価格が作業開始前に設定され、作業スコープが変更されない限り価格は変わりません。そのため、購入する側の組織の多くがこの契約を好み、最も一般的に使用される契約のタイプです。

定額インセンティブ・フィー契約(FPIF)

定額インセンティブ・フィー契約は合意した評価尺度の達成に対する金銭的インセンティブが関連付けられており、パフォーマンスの変動を許容するという点で、納入者と購入者にいくらかの柔軟性がある契約です。
インセンティブとしては、納入者のコスト、スケジュール、技術的パフォーマンスなどが関連付けられます。
定額インセンティブ・フィーでは、価格の上限が定められ、上限を超えたすべてのコストは、納入者の責任となります。

経済価格調整付き定額契約(FPEPA)

経済価格調整付き定額契約(FPEPA:Fixed Price with Economic Price Adjustment Contract)は、インフレーションによる変化または特定物資のコストの高騰や低下など、状況の変化に応じて、事前に定義した最終調整を契約価格へ反映可能な特殊条項を含む定額契約です。
経済的な変動を許容できるようになるため、経済価格調整付き定額は購入者・納入者の双方を保護することができる契約となります。
プロジェクトの実施期間が長期にわたる場合、または支払いが異なる通貨で行われる場合にも使用されます。

実費償還契約

実費償還契約では、完了した作業にかかったすべての正当な実コストに、納入者の利益相当分を加えた金額を納入者に支払う、つまり実費を支払うという契約です。
ほとんどの場合、実費償還契約は契約の実行中に作業スコープが大きく変更されることが予測される場合に使用されます。
実費償還契約の種類には以下のようなものがあります[1]PMBOK第6版、472頁。

  • コスト・プラス定額フィー契約(CPFF)
  • コスト・プラス・インセンティブ・フィー契約(CPIF)
  • コスト・プラス・アワード・フィー契約(CRAF)

ここからは、これらの契約の種類の内容を見ていきます。

コスト・プラス定額フィー契約(CPFF)

コスト・プラス定額フィー契約(CPFF:Cost Plus Incentive Fee Contract)は購入者の償還対象コストと固定額の利益を納入者に支払う契約形態です。

コスト・プラス・インセンティブ・フィー契約(CPIF)

コスト・プラス・インセンティブ・フィー契約(CRIF:Cost Plus Incentive Fee Contract)は、購入者が償還対象コストを納入者に支払うとともに、契約時に合意したパフォーマンスの基準を達成した場合に所定の利益を支払うという契約です。
コスト・プラス・アワード・フィー契約では、最終コストが当初の見積りコストより上回った場合や下回った場合は、購入者と納入者の双方が事前に取り決めたコストの分配方式に応じてその差額を負担します。

コスト・プラス・アワード・フィー契約(CPAF)

コスト・プラス・アワード・フィー契約(CPAF:Cost Plus Award Fee Contract)では、購入者は作業にかかった妥当な実費総額に加えて、納入者の利益となる報奨金を納入者に支払います。
契約時に取決めを交わすインセンティブ・フィーに対して、アワード・フィーはより主観的に広い範囲のパフォーマンスから判断されます。

タイム・アンド・マテリアル契約(T&M)

タイム・アンド・マテリアル契約(T&M:Time and Material Contract)は定額契約と実費償還契約の両方の側面をもった契約形態です。直訳すれば「時間と材料の契約」となりますが、その名の通り、購入者は固定の材料費と変動する時間の料金を納入者に支払います。

タイム・アンド・マテリアル契約は正確な作業範囲記述書を短期間でまとめることができない場合や要件が変動することが予想されているプロジェクトで採用されることが多い契約形態です。

1PMBOK第6版、472頁。