類推思考(アナロジー思考)とは何か?その思考プロセスとトレーニング方法を解説
類推思考(アナロジー思考)の概要
類推思考(アナロジー思考)は、新しい情報や問題に対する理解や解決策を見つけるために、過去の知識や経験を活用する認知プロセスの一種です。類推思考は、既知の事例や概念から類似点を見つけ、それを新たな状況や問題に適用する時に活用されます。
類推思考を使うことにより、新しい発想を得られるとともに、身の回りの事象を理解しやすくなります。
類推思考(アナロジー思考)のプロセス
類推思考は抽象化と具体化を駆使しながら進めていきます[1]細谷功『メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問』PHP研究所、2016年、99頁。以下『メタ思考トレーニング』と略記。。
抽象化
類推思考の最初のステップは、既知の事例や概念から新しい状況や問題に関連しそうな類似性や共通点を識別すること(抽象化)です。これは、比較的直感的なプロセスであり、異なる事象やアイデアの間に共通の特徴や関係を見つけ出す能力が必要です。
アナロジーの構築
類推思考では、識別した類似性をもとにアナロジー(類似性の関連性)を構築します。アナロジーは、既知の事例や概念から新しい事例に適用できる一般的な規則や原則を示すものです。アナロジーを構築することで、新しい情報を理解しやすくし、問題解決に役立ちます。
具体化
構築したアナロジーを新しい情報や問題に適用します(具体化)。これは、アナロジーをもとに、既知の事例から得た知識を新しい文脈に適用し、新たな洞察や理解を獲得するプロセスです。情報の適用には創造的な発想や柔軟な思考が必要です。
類推思考(アナロジー思考)と模倣の違い
類推思考は似ている事象からアイデアを借りてくる手法ですが、「パクリ」と呼ばれる模倣とは異なります。
類推思考と模倣の違いは以下のとおりです[2]前掲『メタ思考トレーニング』97頁。。
単なるパクリ | アナロジー | |
---|---|---|
可視化度 | 目に見える | 目に見えない |
表層度 | 表層的 | 根本的(本質的) |
関係性 | 単品の類似 | 関係・構造の類似 |
発見難易度 | 簡単に気づく | 一見わからない |
具体性 | 具体的 | 抽象的 |
類推思考(アナロジー思考)のトレーニング方法
類推思考をトレーニングするために、以下の方法やアプローチを試すことが役立つでしょう。
アナロジー問題の解決
アナロジー問題は、類推思考を鍛えるために非常に効果的です。書籍やウェブ上でアナロジー問題を見つけ、解く練習をすることができます。たとえば、「犬は犬小屋に住むように、鳥はどこに住むか?」といった問題です。
こうしたアナロジー問題は『メタ思考トレーニング』の中でいくつも紹介されています。
比較と対照
類推思考を鍛えるために、異なる事例やアイデアを比較し対照する練習を行うことが重要です。たとえば、2つの異なる小説のプロットや2つのビジネス戦略を比較し、類似性や相違点を見つける試みです。
アナロジーの発見
日常生活でアナロジーを見つける練習をしましょう。新しい情報や問題に対して、過去の経験や知識からアナロジーを引き出す努力を続けることで、類推思考が向上します。
また、慣れない領域にチャレンジすることでも、類推思考は促進されます。新しい経験や視点から学び、それを既知の事例に適用することで、創造的な類推が可能になります。
分野横断的な学習
異なる分野の知識を習得し、異なる領域間で類推思考を行うことは有益です。新しい分野の知識を吸収することで、類似性や共通点を発見しやすくなります。
また、幅広いジャンルの本を読み、研究を行うことも、新しい知識と視点を獲得し、類推思考を向上させる手段となります。
グループディスカッション
グループディスカッションやブレーンストーミングセッションに参加することで、異なる人々の視点やアイデアを収集し、それらを組み合わせて類推思考を発展させることができます。
トレーニングプログラム
類推思考を強化するための専門的なトレーニングプログラムやオンラインコースも存在します。これらのリソースを活用してスキルを向上させることができます。
類推思考は練習とトレーニングによって向上するスキルであり、日常生活や仕事のさまざまな側面で役立ちます。継続的な努力と自己挑戦を通じて、この重要な思考スキルを発展させていくことが大切です。
類推と類比
類推に似た言葉に「類比」があります[3]吉澤準特『ビジネス思考法使いこなしブック』日本能率協会マネジメントセンター、2012年、36~37頁。。
類推はこれまで見てきたように、関係や構造の類似性に注目することですが、類比はその形に注目します。
たとえば、新しい果物を見つけたとき、「いつも食べている果物の形に似ている」「だから、食べられるだろう」と考えるのは類比思考です。