マグレガーのX理論・Y理論からモチベーションを考える

2021年10月14日

今回はこのX理論・Y理論を解説し、何が社員やスタッフのモチベーションアップにつながるのかを考えていきます。

スタッフのモチベーションは何をしたらあがるのか

どうしたら、面倒をみている後輩スタッフのやる気がもっとでるのかというのは、マネジャーやミドルマネジャーの悩みの種です。
さらにやっかいなのは、やる気アップのためにしたことが、Aさんには効いたのに、Bさんには全く効果がないということもあります。

「世の中には2つの種類の人間がいる」という話に近いですが、世の中の人間を2つの種類に分類し、モチベーションの効果を考えたのがX理論・Y理論です。

X理論・Y理論とは、ダグラス・マグレガー(1906-1964)が提唱した、2つの異なるタイプの人間と、それに対応するマネジメントスタイルの理論です。
マグレガーは、マネジャーの基本的な信念が企業の運営に大きな影響を及ぼすと考え、この中核を成すのが人間行動についての「マネジャーの考え方」だとしました。
この考え方は大きくX理論Y理論という2つに分類されるとし、現代の組織におけるマネジメントやモチベーション管理に対して大きな影響を与えています。

X理論は、アメとムチのマネジメント手法

X理論は、マズローの欲求段階説における低次欲求(生理的欲求や安全の欲求)を多めに持つ人間の行動モデルが想定されています。
マズローの5段階欲求については、下記の記事も参考にしてください。

この階層では、一定の報酬を約束する代わりに命令や強制で管理し、目標が達成できなければ処罰するといった「アメとムチ」のマネジメント手法が有効とされています。

X理論は、以下のような考え方が前提となっています。

  • 人間はそもそも仕事が嫌いで、できることなら仕事はしたくないと思っている
  • たいていの人間は強制・統制・命令・処罰がなければ、目標を達成するために十分な力を発揮しない
  • 人間は命令される方を好み、責任を好まず、野心を持たず、何よりもまず安全を望んでいる

したがって、X理論のマネジメントにおいては、明確に規定された仕事を与え、常に監視・監督することが求められます。また、モチベーションを維持するためには、賃金を上げるか、懲罰を与えることが必要です。

このようなX理論に則って働くマネジャーは、部下の人格を尊重せず、不信感や敵意を招きかねない独裁的な管理方法を選びます。

Y理論は、機会を与えるマネジメント手法

Y理論は、マズローの欲求段階説における高次欲求(社会的欲求や自己実現欲求)を多めに持つ人間の行動モデルが想定です。この階層では、魅力ある目標と責任を与え続けることによって従業員を動かしていく「機会を与える」マネジメント手法が有効とされています。

Y理論は、以下の考え方が前提です。

  • 仕事は、遊びや休息と同じようにごく当たり前のことである
  • 人間は生まれつき仕事が嫌いなのではなく、どこまで自分でコントロールできるかという条件による
  • 人間は、自ら立てた目標のためには自己管理、自己統制を発揮するものである
  • 適切な条件下では、人間は責任を引き受けるだけでなく、自ら進んで責任を取ろうとする
  • 問題解決のためのクリエイティブな能力は、幅広い人々に備わっているものであり、一部の人だけのものではない
  • 現代の企業社会では、従業員の知的能力はほんの一部しか活かされていない

Y理論のマネジメントは、個人の欲求や目標が企業目標につながり、調和するような仕事環境を確立しようと努めます。企業目標と従業員個人の欲求や目標が、はっきりとした方法でコントロールできれば、企業はもっと能率的に目標を達成することが可能です。

つまり、企業目標と個人の欲求が統合されている場合、従業員は絶えず自発的に自分の能力や知識を高め、それを現場で活かして企業の繁栄に尽くそうとするようになります。

まとめ

X理論は、シンプルかつ短時間で成果につなげることができるため、古くからその手法がとられてきました。その手法は、信念に基づかなくとも、ルールを設定してしまえば誰でも簡単に管理することができます。ただ成果につながる一方で、従業員のモチベーションが保ちにくい手法でもありました。

そして現代のように、社会の生活水準が上昇し、低次欲求が満たされている状況では、X理論のモチベーションの効果はそれほど期待できません。低次欲求が十分に満たされている状況では、Y理論に基づいた管理方法が求められるでしょう。

Y理論で経営者に必要なのは、従業員がチームワークを発揮することによって各自の目標を達成する環境を作り出すことです。そうすることによって従業員は自発的に、意欲を持って仕事に臨むようになります。

そしてまた、マグレガーはY理論があらゆる問題に対して万能ではないことを認めています。低次欲求の満たされていない状況では、貧困からくる金銭的欲求によって、短絡的な利益追求に走るケースが出てしまうのです。

マグレガーはY理論のみを解決の術としたのではなく、このような概念にスポットライトを当てることによって、人間の可能性を制限してしまうX理論の考え方を見直し、Y理論で示される手法を考慮に入れることを望んだのです。