ハーズバーグの2要因理論をマズローの欲求5段階説と比較して解説

2022年4月12日

モチベーションを考える際によく用いられる理論のひとつに「2要因理論」があげられます。
これはアメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱したもので、「仕事における満足と不満足」を引き起こす要因について考察された理論です。

仕事における満足と不満足

マズローの欲求5段階説とも並んで論じられるこの2要因理論では、人間が仕事に満足感を感じる要因と不満足を感じる要因は全く別物であるとする考え方をとります。

マズローとハーズバーグの比較図


マズローがモチベーションの段階を5つのステップに分けたのに対し、ハーズバークは「動機付け要因」と「衛生要因」という2つの要因に分類し、それぞれの要因から仕事へのモチベーションを上げるために必要なことを考えました。

今回はこのフレデリック・ハーズバーグの2要因理論についてみていきましょう。

動機付け要因に基づくモチベーション

まずは動機付け要因についてみていきます。
動機付け要因は、マズローの欲求5段階説でいうところの「自己実現欲求」「尊厳欲求」及び「社会的欲求」の一部に含まれるといえるでしょう。

それらの要因は、「自己の成長」「仕事のやりがい、達成感」「周囲からの承認」及び「仕事の責任と権限」「昇進」などに当てはめることができます

これらへアプローチすることで「仕事への満足」を高め、モチベーションの改善につなげることができると考えられており、動機付け要因を満たすためには仕事の幅や携わることができる範囲を増やす「職務充実(job enrichment)」を図る必要があるといわれています。

職務充実(job enrichment)の考え方

職務充実とは動機付け要因からモチベーションを改善させるために「仕事そのもの」を改善していく方法です。
具体的には、これまでの仕事に「計画」「準備」「管理」といった内容を加え、責任や権限の範囲を広げて、難易度の高い責任のある仕事に挑戦させることで仕事そのものにやりがいを感じさせる方法です
これは単純に仕事量を増やして従業員へ負荷を掛ければよいというものではないので、取り組む際はその点に注意する必要があります。

職務充実の実践手順

職務充実を実践する手順をみていきましょう。

  1. 費用対効果を考慮しながら、仕事の内容で動機付け要因を満たすと思われるものを選びます。
  2. 仕事に実際に携わっているメンバーでブレーンストーミングを行い、仕事の満足につながると思うものをリストにあげます。
  3. そのリストの中から衛生要因(後述参照)に関するものを消去します。
  4. そのリストの中から具体性に欠けるものを消去します。
  5. そのリストの中から単純に仕事量を増やす結果になっているものを消去します。

衛生要因に基づくモチベーション

次は衛生要因についてみていきましょう。衛生要因は、マズローの欲求5段階説でいうところの「生理的欲求」「安全欲求」及び「社会的欲求」の一部に含まれるといえます。
それらの要因は、「労働条件・作業環境」「職場の人間関係」及び「給料」「上司の適性」「会社の方針」などに当てはめることができます。
衛生要因は、満たされない状況になると「仕事への不満」を引き起こすことになります。
これを解決するためには、まず従業員が何に対して不満を抱いているかを正確に把握することが大切です。
そして前提として「たとえ衛生要因を満たしたとしても、従業員が仕事に対して満足することはない」ということを理解しておく必要があります。

あくまで衛生要因へのアプローチは「不満を引き起こさせないため」に取り組むもので、それが満足へ直結するのではないのです。
仕事へのモチベーションを上げる上で衛生要因に取り組むことは、効果につなげるための「土壌整備」というように考えるとよいでしょう。

まとめ

ここまでモチベーションへの働きかけとして「動機付け要因」と「衛生要因」の2つの要因から考えてきました。
注目するポイントは「仕事への満足」の反対が「仕事の不満」ではないということです。
そのため仕事に満足してもらおうとして、どれだけ仕事の不満(衛生要因)の解消に努めても、決して仕事への満足にはならないのです。
満足を高めるためには動機付け要因に取り組む必要があるのです。
衛生要因は比較的短期間の効果しか得られないという点についても把握しておく必要があるでしょう。
一方で、動機付け要因への取り組みは、仕事にやりがいを感じさせることにつながるため、長期的な効果を得ることができます。
実際に2要因理論を会社の制度に取り入れる場合は、衛生要因ばかりに目を向けず、長期的に効果のある動機付け要因を充実させていくことが大切だと言っても過言ではないでしょう。