『アルケミスト』にでてくる「幸福の秘密」とは何か?

「幸福の秘密」とは?

パウロ・コエーリのベストセラー『アルケミスト』には、幸運や夢に関する言葉や寓話が多数登場します。
今回はその中で「幸福の秘密」をご紹介します。

この「幸福の秘密」は、主人公の少年・サンチャゴが「ピラミッドを見る」という夢の実現のために旅立つ前に、セイラムの王・メルキゼデックから伝えられた物語です。

賢者が教えた「幸福の秘密」

物語には若者と賢者が登場します。
若者の親は賢者に「幸福の秘密」を学ぶために彼を旅に出します。若者は砂漠を40日間も歩き回り、ようやく山の頂上の賢者の城にたどり着きますが、そこでも謁見までに2時間待ちました。

ようやく若者は賢者に謁見でき、「幸福の秘密」について問いますが、賢者は「今、幸福の秘密を説明する時間はない」と断り、若者に宮殿をあちこち見て回り、2時間したら戻ってくるように伝えます。
ただし、不思議な条件があり、2滴の油が入ったティー・スプーンを持ち、その油をこぼさないようにしないといけません。

若者は宮殿内を見て回るものの、スプーンの油に目が釘付けでした。

2時間が経ち、若者は再度賢者に謁見します。賢者は宮殿の様子を聞きますが、若者は油が気になって何も見てなかったと答えます。

そんな若者に、賢者はもう一度宮殿内を見て回るように伝えます。
若者は少しほっとして、再度宮殿内を見て回り、美しい庭園やさまざまな芸術品などを見ました。

しかし、再び賢者のもとに戻った時には、気の緩みからかスプーンの油はなくなっていました。

それを見た賢者は次のように話します。

幸福の秘密とは、世界のすべてのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ

パウロ・コエーリョ(著)、山川紘矢・山川亜希子(訳)『アルケミスト 夢を旅した少年』KADOKAWA、1997年、40頁

セイラムの王が伝えたかったこと

話をしたセイラムの王は、この話の意味を言葉にしませんでした。
しかし、サンチャゴは旅を好きになってもよいものの、自分の生業である羊のことを忘れてはいけないということを得心しました。
つまり、夢を追うことはよいけれども、自分の本分を忘れてはいけないとセイラムの王は伝えたかったのでしょう。