AI時代、機械まかせにならないための9つのルールとは何か?

2023年11月30日

昨今、AIやロボットを使用した自動化による失業、今後なくなる職業といった話題が増えました。chatGPTをはじめとするAIにも注目が集まり、どんどん自動化は進んでいく一方です。自動化の影響をすでに受けていて、「自分の仕事はなくなるんじゃないか」「転職した方がよいのか」と考えている方もいるかもしれません。
そんな変化の激しい時代を私たちはどのように生きていけばよいのでしょうか。

『AIが職場にやってきた: 機械まかせにならないための9つのルール』では、そんな時代を生き抜くために「機械にできない人間のスキルを高める」ことが大事だと書かれています。

今回は具体的にどのようにして機械まかせにしないで、これからの社会の変化に対応していけばよいのか、この本で挙げられている9つのルールを紹介します。

ルール1 意外性、社会性、稀少性をもつ

将来、AIに仕事を奪われてしまわないために必要なこととは一体なんでしょうか。
それを理解するためには、機械ができることとできないことを知り、現時点でもっとも優れているAIよりも、人間がうまくできることはなにかを考える必要があります。

AIにはできない(または難しい)、人間の方が優れている点として「意外性」「社会性」「稀少性」の3つが挙げられます。

意外性

AIは想定外のことが苦手であり、明確に定義されたルールがない場合や未知の状況に対応できません。たとえば、絶えず変化が起きる環境で働く医師や看護師、刑事などをAIが代替することは難しいでしょう。

社会性 

結果だけに意味があるものではなく、人とのつながりなどの社会的な欲求を伴う職業は、機械よりも人の対応が求められます。つまり、人になにかを「感じさせる」仕事、たとえば、フライトアテンダントやメンタルヘルスに関わる職業などは自動化しにくいといえます。

稀少性 

人間は物事を組み合わせるのが得意で、ある問題に遭遇した際、まったく別の機会に得られた情報を使って解決できます。AIにはそのような柔軟性はまだありません。ありきたりではないスキルの組み合わせができるのも人間の優れている点です。
また、並外れた才能を必要とする仕事も稀少性があります。たとえば、アスリートやアーティスト、俳優などがそれに当たります。

ルール2 機械まかせに抗う

私たちは知らず知らずのうちに、機械によって好みを作りだされています。そんなはずはないと思うかもしれませんが、2018年ミネソタ大学の教授が行った3つの実験によって証明されています。これらの実験は、おすすめの楽曲リストを実験参加者に渡し、参加者に各曲を評価してもらい、「おすすめ」が曲の評価に影響があるかを調べたもので、内容は次のとおりです。

実験1:各曲には5段階評価がランダムでつけられているが、参加者には参加者自身の好みにもとづく評価であると伝える。希望すれば曲の短いサンプルを聴ける。

実験2:音楽ストリーミングサービスと同様のアルゴリズムを使い、参加者への本物のおすすめ楽曲リストを渡す。ただし、意図的に一部の曲の評価を変えてある。希望すれば曲の短いサンプルを聴ける。

実験3:再びランダムの評価を記載した楽曲リストを渡す。今回は、曲の評価前に曲の全体を聴いてもらう。

実験1と2では、実際には本人の好みに合ったものでなかった場合も、おすすめの評価が参加者の評価に影響し、高評価の曲に参加者も高い評価をつけました。さらに、実験3についても、実際に曲の全体を聴いているにも関わらず、おすすめで高評価だった曲に参加者は高い評価をつけました。このことから、自身の好みかどうかの判断も、「おすすめ」に影響されていることがわかります。

この結果は、いかに私たちが「機械まかせ」で普段過ごしているかを表わしています。この機械まかせに抗うためには、まず自分の好みを把握することが重要です。
具体的には、一日に自分が下した選択をすべて把握し、自分で決断したことと、機械の指示に従ったことを判断します。たとえば、どこかに行くときの経路は、自分がこの経路がよいと判断したのか、Googleマップがもっとも効率的な経路として勧めたから選択したのか、一度考えてみてください。

ルール3 デバイスの地位を下げる

スマートフォンをはじめとするデバイスは、生活を便利にしてくれますが、実は恩恵だけではなく無意識のうちに受けている弊害もあります。
著者は「スマホ断ちプログラム」を実践し、1日平均約6時間だったスマホ使用時間が、1時間を少しこえる程度にまで減ったと言います。さらに、数字だけではない効果を強く実感したそうです。それが次の3つです。

  • スマホのありがたさを痛感した
  • 新しいアイデアやプロジェクトを思いつくなど、生産性が大きく上がった
  • 周囲の人の行動も変わった(スマホをしまうようになった)

私たちは、絶えず刺激を求めスマホを見てしまうことで、ぼんやりする機会やアイデアを交換する機会、空想にふける機会を奪われてしまっています。デバイスの地位を下げることは、人間的な活動をする機会を取り戻し、周囲の環境の変化に気づく注意力、本を最後まで読み通す集中力を高めてくれます。もし自分がスマホを見すぎていると感じたら、一度スマホと距離をとってみましょう。

ルール4 痕跡を残す

大量のデータを処理するなど、機械に勝てない部分で人間が勝負をしても仕方がありません。機械と同じ土俵で競争するのではなく、人間らしさを発揮できる分野で痕跡を残すことに注力すべきです。

現代では、生産するのにいかにテクノロジーの関与が少ないかが、ステータスになってきています。たとえば、機械を使って生産される商品よりも、手作りや オーダーメイドの価値が高いとされ、贅沢さを測る指標にもなっています。
これは「努力ヒューリスティック」と呼ばれ、人の手が加わっている商品やサービスの方が好まれるという研究結果も出ています。
つまり、物の背後にある「人の努力の価値が高い」と、私たちは無意識のうちに判断しています。そのため、創造性があり「人間らしさ」を発揮できる働き方を見つけるのが重要です。

ルール5 エンドポイントにならない

この本で言われているエンドポイントとは、機械から指示を受けて仕事をしたり、システムとシステムをつなぐ役割をしたりすることを指しています。
たとえば、Uber Eatsの配達員は、機械からの指示により、店舗に商品を受け取りに行き、配達を行います。これがエンドポイントになるということです。

このような機械に管理される仕事は、人間らしさを失いやすく、自動化の影響を最も受けやすいといえます。自分がエンドポイントになっている場合、もっと判断力が必要な仕事にするために、自分から働きかける必要があります。
たとえば、プロジェクトの企画から携わったり、戦略会議に出席することを提案したり、人間味のある仕事を積極的に引き受けてみましょう。

ルール6 AIをチンパンジーの群れのように扱う

AIは賢いですが、未知の状況や不確定要素が多い場合には対応が難しく、人間のように判断することができません。AIの予期せぬミスにより、罪のない人に害が及ぶ可能性もあります。

たとえば、チンパンジーは非常に知能が高く、きちんと訓練すれば勤勉な働き手となるかもしれません。しかし、もしそうだとしても、チンパンジーに会社の人事権を渡すなど、重要な判断が必要な役割を任せることはないでしょう。それと同じで、AIに重要な決定を任せてしまうことは、非常に危険です。現段階のAIには、人間の監視が必要であることを知っておく必要があります。

ルール7 ビッグネットとスモールウェブを用意する

著者が「ビッグネット」と呼んでいるのは、不意に職を失った人を救済するための大規模な政策のことです。つまり、自動化により職を失った人のセーフティーネットとなる政府規模の政策のことを指しており、手厚い失業手当や、大規模なリストラがあった際に政府が介入して解雇された従業員を雇った企業に報奨金を出すなどの政策が挙げられます。

また、「スモールウェブ」と著者が呼んでいるのは、解雇された当事者を支援する地域のネットワークを意味します。地域の教育センターや共同作業スペースを、解雇された従業員に無償で提供したり、市外から企業を誘致して就職説明会を行ったりと地域からの支援が受けられるのも重要です。

こういったことは、個人で用意することはできませんが、せめて「いくら人間らしいスキルを身につけ、個人で努力をしたとしても、自動化の波が突然襲ってくる可能性がある」ことは知っておきましょう。

ルール8 機械時代の人間性を理解する

AIが急速に広まり、さまざまな業界で活用されている現代で、必要とされる「人間性(人間らしさ)」はどういったものでしょうか。それはAIシステムをつくったエンジニアたちが予期していなかったエラーや、利用者がAIを悪用した場合の不備を、「大きな問題が発生する前に見つけ出す」ことです。

たとえば、画像診断にAIが用いられることがありますが、医師たちはAIの長所と短所を充分に理解し、AIが読影ミスをする状況を事前に予測する必要があります。機械(システム)を利用する際には、その機械の特性をよく理解した上で、私たち人間が監視し、間違った方向に進んでしまわないよう、注意を向けるべきでしょう。

ルール9 反逆者の武装する

AIや自動化は金儲けの手段となり、ますます人々の不平等さや格差が広がる可能性もあります。そんな中、私たちは世の中がもっと公平になるよう、テクノロジーの導入を決定する権力構造をよく知り、変えていかなくてはなりません。

著者はこの戦略について「反逆者の武装」と呼んでいますが、決して機械と闘うことを推奨しているわけではなく、AIや自動化を「人間を解放するための手段」にすることを訴えています。テクノロジーに関わる人だけでなく、「人間を解放するための手段」としてのAIやシステムを開発し、日夜尽力しているテクノロジストを支援することも重要です。テクノロジーに反対するのではなく、テクノロジーを活かしてどのように世の中をよくしていくかを考えましょう。

参考

  • ケビン・ルース (著)、 田沢 恭子 (翻訳)『AIが職場にやってきた: 機械まかせにならないための9つのルール』草思社、2023年