感情に訴えかけ、奮起させるWHYの力　～周囲を鼓舞することに成功した組織や企業が実践してきたこと～

2023年5月11日2023年5月12日

人は何によって行動を促されるのか

世の中には、ついていきたいと思わせるリーダーが存在します。彼らは、私たちを上手に奮い立たせ、行動意欲を突き動かします。

ものを買うときにも同じことが言えます。私たちは、あることをきっかけに購買意欲を刺激され、商品を手に取ります。

これらは、どのような過程を経て起こるものなのでしょうか。周りを奮起させられるリーダーと、そうでないリーダーの違いはどこにあるのでしょうか。性能や特徴がほとんど同じ商品を比べた時、私たちがある特定のブランドを選ぶ理由は、どこからくるのでしょうか。

その疑問を紐解くと、ある共通した法則が存在していることがわかります。その法則とは「WHYから始めること」です。

今回は、著名人たちによる講演会『TED』において称賛され^[1]https://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action/c、その動画が6000万回以上再生されているサイモン・シネックの著書『WHYから始めよ！』から^[2]サイモン・シネック（著）栗木さつき（訳）『WHYから始めよ！インスパイア型リーダーはここが違う』日本経済新聞出版、2012年、人を鼓舞し行動させる法則について紹介していきます。

WHYから始まるメッセージが結果を変える

WHYとは一体何なのかを、比較とともにわかりやすく提示したものが下記の例です。

上記の例を比べると、【例２】の方がより心を動かされます。なぜなら、【例２】では、その企業がどんな理念をもって、なぜその製品を作ったのか（WHY）を述べたうえで、何を作り上げたのか（WHAT）を説明しているからです。
WHYから語り始めることで、相手の心に響かせることができます。一方【例１】では、その企業が何を作ったのか(WHAT)だけが述べられています。その製品が持つ特徴を並べ、自社のしたこと（WHAT）を説明しているだけです。

【例２】の方法で、WHYを基盤に自社をつくりあげてきた有名企業が、Apple社です。彼らのメッセージは常に、目的、大義、理念から始まり、私たちの心を動かし続けます。

ゴールデンサークル理論

ゴールデンサークルとは、WHY、HOW、WHATから成り立つ円形の図です。円の中心、つまりWHYから始まり、外側に向かうことで相手を奮起させ、やる気を起こさせたり高揚させたりすることができます。内側から、それぞれの意味を簡単に説明します。

• WHY：目的、理念、なぜやっているのか
• HOW：どのような戦略で挑んでいるのか
• WHAT：組織や企業が行なっている事業や、作っている製品

相手から自分のことを質問された時、やっていること（③WHAT）や、手法（②HOW）は簡単に説明できます。しかし、それをしている理由（①WHY）を明確に説明するのは、それほど簡単ではありません。そこで重要なのが、一番肝心な円の中心、WHYが何なのかを認識し、外側に向けて順番に語ることです。この方法を取るだけで、周囲に与える影響は大きく変わっていきます。

WHYから始めることの本質

人に行動を起こさせる方法はいろいろあります。感情を煽ったり、軽い恐怖心を植え付けて商品を買わせたりすることも、相手を促していることに変わりはありません。しかし、これらの手法を取った場合、顧客から企業に対する忠誠心は生まれません。

リーダーにも同じことが言えます。権力(WHAT)だけで周りを動かそうとするのは『形式的なリーダー』であり、『真のリーダー』ではありません。『真のリーダー』は、その人自身が持つ目的や信念（WHY）によって周りを奮い立たせます。人は、WHATではなく、WHYによって動かされます。

「WHYから始めること」の重要さは、その結果をもって証明されています。WHYの力が持つ本質は、相手を操作することではなく、奮起させ、自発的に行動させるところにあります。