「百貨店の雄」三越伊勢丹グループの社内モチベーションアップ施策とは
伝統と進化を両立させる三越伊勢丹のスタッフ教育
百貨店としての伝統を守りつつ、進化をし続ける三越伊勢丹グループ。その独自の存在感は百貨店業界内に限らず業界外からも常に一目置かれています。
丁寧で質の高いサービスを提供することはもちろん、他社ブランドとのコラボレーションやSNSなどの新しいメディアを活用したPR戦略などで一歩先の未来を提案し続ける三越伊勢丹グループの原動力を、社内モチベーションアップ施策の観点から探ってみたいと思います。
小売・サービス業の要は人材
伊勢丹のような小売・サービス業は、何といっても人材こそが全てです。三越伊勢丹グループは「お客さまのご期待に感動レベルで応える」をモットーに、従業員の個々のポテンシャルを最大限に引き出して、伸ばしていくことに力を入れています。
以下、三越伊勢丹グループの施策を見ていきましょう。
「販売員」ではなく「スタイリスト」
2012年度から、三越伊勢丹グループでは、グループの仕事の中で最も重要な「販売」に携わる従業員を、「販売員」ではなく「スタイリスト」と呼んでいます。これは三越伊勢丹グループの顔として日々業務に勤しむ従業員を、これまで以上に大切にしていき、敬意を払おうというグループの姿勢を形にしたものです。
呼び名を変えたことで、従業員の仕事に対する意識も「ただ商品を販売する」だけのものから「お客様自身を、お客様のライフスタイルを、スタイリングする」という一歩先を目指すことになるので、従業員のモチベーションアップに繋がります。
商品セミナーの開催
おもてなしを実現するには商品などの高い専門知識が欠かせません。三越伊勢丹グループでは、領域別の商品知識セミナーを開催し、従業員の知的好奇心と働くモチベーションを刺激するようにしています。
このセミナーは段階を踏んで成長できるように、ビギナー、ベーシック、アドバンス、エキスパートとレベル分けされているのが特徴です。新入社員はもちろん、中堅社員や花形のバイヤー職まで全ての従業員が自分にあったコースを取れるように設計されています。
セミナーの内容は座学に限らず、工場見学や作り手とのコミュニケーションが取れる場の設定など、バラエティー豊富なので楽しみながら学べると評判のようです。
お母さんも安心して働ける
出産・子育てをするお母さんがどのくらい安心して仕事ができるかは優良企業かどうかを見極める鍵とも言えます。
労働基準法第65条1項によると、使用者、つまり会社は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならないという決まりがあります。そして出産前の6週間前、出産後の8週間は産休を取得することができ、さらに子供が1歳になるまでは育休を取得することができます。
詳しい産休・育休の内容については、下記のリンクをご覧ください
三越伊勢丹では従業員を大切に育成するために、法定を上回る産前8週間と産後8週間の産前産後休暇を設定するほか、育児休業は子供が4歳になるまで最長3年まで取得できるようにグループ全体で制度を統一しています。
さらに、時短勤務に関しては、子供1人に対して小学校3年終了時まで取得できるので、育児休業と時短勤務を合わせて最長10年まで取得することができます。
小売・サービス業は休日に売り上げのピークが来るために、その性質上、どうしてもプライベートよりも仕事が優先になる傾向があります。だからこそ、会社が従業員の仕事と家庭の両立を図る支援を積極的に行うことが、従業員のモチベーションアップに繋がります。実際に、三越伊勢丹グループでは出産後の復職率は9割を超えているとのことで、この働くお母さんへの取り組みが実を結んでいると言えるでしょう。
契約社員の社員登用と再雇用制度
三越伊勢丹グループでは、契約社員の中からリーダーシップを発揮できる自律性の高い従業員を対象に、社員に登用する制度を導入しています。また、育児や介護、配偶者の転勤を理由に退職した社員や契約社員を対象に、退職後8年以内であれば優先的に再雇用するという制度も設置しています。この2つの制度は、高い能力とモチベーションのある従業員に対して会社は積極的にその機会を提供するという姿勢を表したものです。これによって、従業員は会社への帰属意識が高まり、結果的に働くモチベーションを上げることができるのです。
まとめ
小売・サービス業はお客さんの都合に合わせないといけないという性質から、従業員のプライベートや生活が犠牲にされやすいと言われています。しかし三越伊勢丹グループは「周りもそうだから」「今までずっとそうだったのだから仕方ない」とそのままに放置するのではなく、従業員のプライベートと仕事の両立を会社として支援する制度を作り上げ、それを適切に運用しているというところが従業員のモチベーションアップに繋がり、ひいては会社の業績を支えていると言えるでしょう。
参考
※本記事の内容は2017年10月15日現在に株式会社三越伊勢丹ホールディングスのWebサイトで公開されている会社情報をもとに執筆しております。