「チームの雰囲気は最高で、みんな仲が良い。でも、なぜか新しいアイデアが出てこない……」「逆に、スキルの高いメンバーを集めたのに、連携が取れずにプロジェクトが失敗した」
プロジェクトマネジメントにおいて、チームの人間関係は永遠の課題です。実は、チームのつながり方には「守りに強い形」と「攻めに強い形」の2種類があることをご存知でしょうか?
それが、「内部結束型(Bonding)」と「橋渡し型(Bridging)」という2つのソーシャルキャピタル(社会関係資本)です。今回は、この2つの違いを理解し、プロジェクトのフェーズに合わせて使い分ける方法を解説します。
ソーシャルキャピタルとは?
ソーシャルキャピタル(SocialCapital:社会関係資本)とは、一言で言えば「人とのつながり(ネットワーク)が生み出す価値」のことです。「あの人は顔が広いから、困った時に助けてもらえる」といった個人の力だけでなく、組織やコミュニティ全体の信頼関係や規範も含まれます。
このソーシャルキャピタルは、その性質によって大きく2つに分類されます。

内部結束型ソーシャルキャピタル(Bonding)
特徴:チームを固める「強力な接着剤」
内部結束型(BondingSocialCapital)は、同じ属性や近い関係にある人々(家族、親友、同じ部署のメンバーなど)の間で形成される、強固な結びつきのことです。イメージとしては、素材同士をガッチリと固める「スーパー・グルー(強力接着剤)」のような役割を果たします。
メリット
- 心理的安全性:「困った時はお互い様」という信頼感が強く、メンタルが安定する。
- 実行力:阿吽(あうん)の呼吸で動けるため、決まったタスクを遂行するスピードが速い。
- 相互扶助:ピンチの時に助け合う力が強い。
デメリット
- 排他性:「身内以外は敵」となりやすく、外部の人や意見を受け入れにくくなる。
- 同調圧力:異論を唱えにくい空気が生まれ、イノベーション(革新)が起きにくい。
スポーツの大会で優勝を目指すチームや、災害時の復興支援チームなど、「目標が明確で、一致団結して困難を乗り越える必要がある」場合には、この内部結束型が絶大な威力を発揮します。
橋渡し型ソーシャルキャピタル(Bridging)
特徴:外の世界とつながる「潤滑油」
橋渡し型(BridgingSocialCapital)は、異なる属性や遠い関係にある人々(異業種の知人、他部署の人、SNSの緩い繋がりなど)の間で形成される、緩やかな結びつきのことです。イメージとしては、異なる部品同士をスムーズに動かす「潤滑油」や、離れた場所をつなぐ「橋」の役割を果たします。
メリット
- イノベーション:自分たちが持っていない「新しい情報」や「異質な視点」が入ってくる。
- 機会の拡大:転職や新規ビジネスなど、新しいチャンスは「緩い繋がり(WeakTies)」からやってくることが多い。
デメリット
- 脆(もろ)さ:信頼関係が薄いため、困った時に深い助け合いは期待できない。
- 維持コスト:価値観の違う相手との調整が必要になるため、コミュニケーションにコストがかかる。
新規事業の企画、オープンイノベーション、複雑な問題解決など、「新しいアイデアやひらめきが必要な場面」では、橋渡し型が不可欠です。
PMはどう使い分けるべきか?
プロジェクトマネージャー(PM)は、この2つの性質を理解し、フェーズによって使い分ける必要があります。
イノベーションには「橋渡し型」、実行には「内部結束型」
ティム・ハーフォード著『ひらめきを生み出すカオスの法則』でも触れられていますが、多くのチームは「仲の良さ(内部結束)」ばかりを重視しがちです。しかし、全員が同じ方向を向いている仲良しチームからは、現状を打破するアイデアは生まれません。
| フェーズ | 必要なソーシャルキャピタル | PMのアクション例 |
| 企画・構想 (アイデアが欲しい) | 橋渡し型 (Bridging) | ・他部署の人を会議に呼ぶ ・あえて専門外のメンバーを入れる ・雑談や社外交流を推奨する |
| 開発・実行 (スピードが欲しい) | 内部結束型 (Bonding) | ・チーム合宿を行う ・共通の敵(競合や納期)を設定する ・1on1で信頼関係を深める |
最高のチームとは、「外から新しい情報を持ち帰り(橋渡し)、中でガッチリとスクラムを組んで形にする(内部結束)」ことができるチームなのです。
まとめ
- 内部結束型(接着剤):心理的安全性と実行力を高めるが、閉鎖的になりがち。
- 橋渡し型(潤滑油):イノベーションとチャンスを生むが、関係は脆い。
もしあなたのチームが行き詰まっているなら、診断してみてください。「仲はいいけどマンネリ化している」なら、外の血を入れる橋渡しが必要です。「優秀だけどバラバラで動かない」なら、飲み会や合宿で内部結束を固める時かもしれません。
参考
- ティム・ハーフォード(著)、児島修(訳)『ひらめきを生み出すカオスの法則』TAC出版、2017年


