制作会社の見積もりが妥当か判断する7つの確認項目

Webサイト制作やシステム開発の見積書を受け取って、「これって高いのか安いのか、そもそも内容として合っているのか」がよく分からない。そんな経験はありませんか?

見積書は、単に金額が書かれた紙ではありません。私はこれまで発注側として何本もの見積書を見てきましたが、見積書は「こちらの要望が、依頼先にきちんと伝わっているかどうかを測る資料」だと考えています。金額の高い・安いだけでなく、この視点で見積書を見ると、見えてくるものが変わってくるのではないでしょうか。

今回は、見積書を受け取ったときに確認すべき7つの項目を、実際に私が経験した例とあわせて紹介します。

なお、修正回数の上限や、作業範囲外の作業が発生した場合の単価といった「追加費用の発生条件」については、別記事『「それは追加費用になります」と言われたとき、妥当かどうかを見分ける方法』で詳しく扱っています。この記事では、見積りの内容そのものが要望に合っているかに絞って説明します。

目次
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見積もりが「危ない」と感じる典型パターン

見積書を受け取った時、最初に確認すべきは「共有した要望に、見積りの中身が対応しているかどうか」です。

たとえば個人のデザイナーさんやプログラマーさんに依頼すると、「デザイン 一式 20万円」のような見積りが返ってくることがあります。
こうした場合、私は必ずメールで「これこれの要望をすべて満たしていますか?」と再確認し、文面で合意を取るようにしています。「一式」という表記そのものが悪いわけではありませんが、そこに要望がすべて含まれているかどうかは、別途確認しておく必要があります。

また、項目が細かく分かれている見積りでも油断はできません。
以前、あるページの開発工数が別のページとまったく同じ金額で計上されていたことがありました。しかし実際には、一方はWordPressなどの更新システムから投稿する通常のページ、もう一方は個別に作り込む特殊なページで、作業内容にはかなりの隔たりがあります。問い合わせてみたところ、営業担当者の勘違いだったことが分かりました。

見積書は窓口の担当者とこちらの認識が揃っているかどうかを試せる貴重な資料です。「出てきた金額が予算に合っていればOK」ではなく、「こちらの要望がきちんと伝わっているか」を測るために使ってみてください。

見積もりをチェックする7つの項目

ここからは、見積書を受け取ったときに私が実際に確認しているポイントを、7つの項目に整理して紹介します。それぞれ「なぜ見るのか」「どう確認するか」「危険信号」の3点セットでまとめました。

1. 要望との整合性

なぜ見るのか:見積りが安くても高くても、そもそも共有した要望を満たしていなければ意味がありません。

確認方法:見積りを受け取ったら、要望のリストと照らし合わせ、抜けている項目がないかをメールなどの文面で確認し、合意を取ります。

危険信号:「デザイン一式」のように大きくまとめられていて、個別の要望がどこに反映されているか読み取れない状態。

2. 内訳の粒度

2. 内訳の粒度

なぜ見るのか:内訳が粗いと、後から「それは含まれていません」というトラブルにつながりやすくなります。

確認方法:作業項目がどのくらい細かく分解されているかを見て、粗いと感じたら「この項目には何が含まれますか」と質問します。

危険信号:見積書全体が数項目の「一式」表記だけで構成されている。

3. 項目ごとの金額バランス

なぜ見るのか:極端に高い項目は、こちらの意図が正しく伝わらず、必要以上に複雑な作業だと想定されている可能性があります。逆に極端に安い項目は、相手が簡単な機能だと勘違いしている可能性があります。どちらもトラブルの火種です。

確認方法:自分の想定と比べて突出して高い・安いと感じた項目があれば、率直に「この金額の背景を教えてください」と聞いてみます。「その金額でやると言っているのだから」とそのままにせず、認識のズレがないかを確かめることが、結果的に相手への誠実さにもつながります。

危険信号:他の項目と比べて明らかにバランスを欠く金額が、説明もなく並んでいる。

4. 開発方式ごとの工数区分の妥当性

なぜ見るのか:見た目は同じ「ページ」や「機能」でも、実装方法が違えば必要な工数はまったく異なります。先ほど紹介した営業担当者の勘違いも、まさにこのケースでした。

確認方法:似たような項目が並んでいる場合、それぞれどんな作り方をするのかを具体的に質問します。

危険信号:作り方の異なるページや機能が、同じ工数・同じ金額で並んでいる。

5. ディレクション・設計の工数が計上されているか

なぜ見るのか:デザインや開発そのものの費用ばかりに目が行きがちですが、要件定義・設計・進行管理といった工数が抜けていると、「何を作るべきか」を決める人が誰もいないまま制作が始まってしまいます。

確認方法:見積りの中に「要件定義」「設計」「ディレクション」「進行管理」といった項目があるかを確認します。

危険信号:デザイン・開発の項目しかなく、要件定義や進行管理にあたる項目が見当たらない、あるいは金額が不自然に小さい。

この項目は、後述する相場事例のセクションで詳しく掘り下げます。

6. 保守・運用コストまで含めた長期視点になっているか

なぜ見るのか:初期費用だけを見て判断すると、公開後の保守・運用費用まで含めたトータルコストで損をすることがあります。特にシステムを導入するかどうかは、長期的なコストに大きく影響します。

確認方法:見積りに保守・運用費用の説明が含まれているか、含まれていない場合はどの程度かかる想定かを確認します。保守にどんな種類があるかは、システム保守とは何か?もあわせてご覧ください。

危険信号:初期費用の安さだけが強調され、保守・運用コストの説明が見積書にも会話にも出てこない。

7. 依頼先の専門領域と要望のマッチ度

なぜ見るのか:Webサイトやシステムを作る人には、デザイナー、コーダー、プログラマーなど、得意分野の異なる役割があります。依頼先の得意分野と、こちらの要望が噛み合っていないと、オーバースペックだったり、逆に対応してもらえなかったりします。

確認方法:見積りを出してくれた相手が、そもそも何を専門にしているかを確認します。デザイナーであれば凝ったデザインを提案されやすく、コーダーやプログラマーであれば「デザインは別途ご用意ください」と言われることもあります。

危険信号:こちらが要望として伝えていない仕組みや技術が、当然の前提として見積りに入っている。そして、なぜその技術を使うのかの説明が、提案書にも見積書にも見当たらない。

相場感の一例(SSAITSの実績から)

相場は、デザインのこだわり度合いやページの種類によって大きく変わるため、一概には言えません。以下は2023年頃にSSAITSでお受けした2件の実例です。あくまで2件分の実績であり、統計的な相場ではない点はご了承ください。

システムのないWebサイト(10ページ程度):80万円
  • デザイン:20万円
  • コーディング:10万円
  • ディレクション費:40万円
    • 要件定義:10万円
    • 設計(ワイヤーフレーム作成など):10万円
    • 進行管理・打ち合わせ:20万円
  • 写真撮影など素材調達:10万円
30問程度のクイズサイトの開発:300万円
  • デザイン:20万円
  • プログラミング:200万円
  • ディレクション費:80万円
    • 要件定義:10万円
    • 画面設計:10万円
    • システム設計:20万円
    • 進行管理:40万円(約6か月のプロジェクト)

「ディレクション40万円」の中身を開示します

「ディレクション40万円」の中身を開示します

先ほどの見積りを見て、「え!?そんなにディレクション費ってかかるの?」「そもそも、ディレクション費って何?」と不思議に思った方もいるのではないでしょうか?

1件目でいえば「ディレクション:40万円」、つまり総額の半分を占める形です。
これを見て「ディレクションが総額の半分とはおかしいのでは」と感じる方がいても当然だと思います。
私自身、PM支援やディレクションを仕事にしている立場なので、公平を保つために、このディレクションの中身に踏み込んで解説していきましょう。

先ほどのディレクション費を分解すると、次のようになります。

ディレクション費40万円の中身
  • 要件定義:10万円(約2人日)——何を作るのかを決める作業
  • 設計(ワイヤーフレーム作成など):10万円(約2人日)——どう作るのかを決める作業
  • 打ち合わせ準備・資料作成・進行管理:20万円(約4人日)——ただし手を動かす作業というより、月2回の打ち合わせとその準備にかかる時間

こうして分解すると、いわゆるディレクション費そのものが特別に高いわけではないことが分かると思います。

なお、要件定義は「何を作るのか」を決める工程、設計は「どう作るのか」を決める工程です。どちらも成果物として目に見えにくいのですが、ここが曖昧なまま制作に入ると、後から大きな手戻りになります。

ディレクション費がない見積りは、何を意味するか

約30〜50%がディレクション費

私がお手伝いしてきた制作会社を含めての感覚ですが、ディレクション費はデザイン費やコーディング費それぞれの金額に対して、30〜50%程度を計上することが多いように思います。デザイン費が10万円であれば、3〜5万円程度という具合です。
こうした費用をすべて合わせると、全体の見積もりの3割近くがディレクションにあたる工数になることが多いと感じています。

先ほどご紹介した2件のSSAITSの見積りは、ディレクション費が通常よりも高い割合になっています。1件目は「しっかり設計してほしい」というご要望があり、各ページにどんな内容を載せるかという検討から一緒に進めたためです。2件目はシステム設計が加わったうえ、プロジェクト期間が約6か月と長くなったことで進行管理の工数が増えました。

見積書では見えないことが多い

この「ディレクション費」という言葉は制作会社の外にはなかなか伝わりません。「それは何に使うお金ですか」と聞かれかねないため、最後に進行管理費として一括で計上したり、そもそもデザイン料金の中に含めてしまったりすることも多いのが実情です。そのため、金額としては発生していても、見積書の上では見えないケースが少なくありません。

では、ディレクション費がなくてもよいのか?

金額だけを見れば、ディレクション費のない見積りのほうが安く見えます。
フリーランスのWebデザイナーやコーダーに依頼すると、この費用がなかったり非常に低かったりすることがあります。
「制作会社からの見積書にはディレクション費が含まれていて、フリーランスさんのほうにはディレクション費がない。じゃあ、安いフリーランスさんに依頼するか……」
このような流れで、ディレクション費がない見積書を選びたくなる気持ちはよく分かります。

ただ、ここは誤解されやすいところです。ディレクション費がないというのは、飲食店で「サービス料がかからない」というのとは意味が違います。
「プロジェクトの進行管理も、何が必要かを決める話し合いも、私の担当ではありません」ということを意味しています。

多くのWebデザイナーは「言われたものを作る」という仕事をします。もちろん「こうしたほうがよい」というアドバイスはくれますが、設計そのものは領域外です。周囲の経営者から「フリーランスに頼んだらプロジェクトが全然進まない」という嘆きをよく聞きますが、その原因の多くはここにあります。フリーランスの方が悪いのではなく、誰がディレクションを担うのかが決まっていないだけなのです。

見積もり以前に見落とされがちな「発注側の社内工数」

見積もり以前に見落とされがちな「発注側の社内工数」

見積書のチェックとあわせて意識しておきたいのが、発注する側の社内工数です。
Webサイトやシステムの開発は、思っている以上に社内の複数部門を巻き込みます。

意外と手がかかる社内調整

私が駆け出しの頃、広報部主導でWebサイトのリニューアルを進めていたところ、途中で営業部門の方にチェックしてもらったら「意見がまったく反映されていない」とひと悶着になったことがあります。営業部門の要望を取り入れることで収まりましたが、社内調整にかかる工数を甘く見ていると、後から大きな手戻りになりかねません。

発注側にもプロジェクト管理者が必要

また、請負業は発注者と受注者が協力しながら進めるものです。「いい感じに作っておいて」と依頼したきり任せきりにしてしまうと、発注側の担当者が誰なのか、進捗がどうなっているのかが分からなくなり、混乱を招きます。発注側にも、プロジェクトを管理する人が必要だということは、ぜひ覚えておいていただきたいポイントです。

判断に迷ったときの相談先

7つの項目でチェックしてみても、判断に迷うことはあると思います。専門用語が並んでいて読み解けない、そもそも依頼先の専門分野が要望に合っているのか分からない、というのは決して珍しいことではありません。

そんなときは、一度第三者の目を通してみるという方法もあります。SSAITSでは、お手元の見積書や現在の状況を客観的に拝見する「30分のセカンドオピニオン相談」を受け付けています。発注・受注両方の現場を知るプロジェクトマネージャーの視点から、フラットにお話しします。資料を拝見して、特に問題がなければ、メールにてその旨をお伝えします。

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