【応用情報技術者試験】PLCとは?「からくりオルゴール」で覚えるシーケンス制御の基本

noteへのバナー

PLC(Programmable Logic Controller)とは、工場の生産ラインなどで使われる産業機械を制御するための専用コンピュータです。「プログラマブルロジックコントローラ」の略で、日本語では「シーケンサ」とも呼ばれます。

その最大の特徴は、従来のリレー回路といった物理的な配線(ハードウェア)で行っていた制御を、プログラム(ソフトウェア)で置き換えられる点にあります。

応用情報技術者試験などの情報処理技術者試験の学習していると、この「PLC」が出題されることがあります。

「シーケンサとも言うらしいけど、何が違うの?」
「リレー回路をソフトウェアで…と言われても、ピンとこない」

そんな方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そんなPLCの本質を、「昔ながらのオルゴール」と「現代のスマホアプリ」にたとえて、誰にでも直感的に理解できるように解説します。

目次

PLC登場以前の世界:「からくりオルゴール」の時代

PLCが生まれる前、工場の機械はリレーやタイマーといった電気部品を物理的に配線した「リレーシーケンス回路」で制御されていました。

これをたとえるなら、「昔ながらの、からくりオルゴール」です。

[画像:シリンダーにピンが埋め込まれた、昔ながらのオルゴール]
違う曲を流したい場合は、すべてを作り直す必要がある

オルゴールは、シリンダーに埋め込まれたピン(ハードウェア)が櫛歯を弾くことで、決まった音楽を奏でます。これは非常に精巧な仕組みですが、もし「違う曲を再生したい」と思ったらどうでしょうか?
シリンダーごと交換する、つまり物理的な部品(配線)をすべて作り直すという、大変な手間とコストがかかります。

昔の工場もこれと同じで、機械の動作を少し変更したいだけでも、技術者が制御盤の配線を一つひとつ変更するという、大変な作業が必要だったのです。

PLCの登場:「スマホの音楽アプリ」という革命

この課題を解決するために登場したのがPLCです。 PLCは、「スマホの音楽アプリ」だと考えてください。

[画像:スマートフォンで音楽再生アプリを操作しているイラスト]

スマホアプリ(PLC)は、物理的な部品の組み合わせではなく、ソフトウェア(プログラム)で音楽を再生します。
「違う曲が聴きたい」と思ったら、新しい音楽データ(プログラム)をダウンロードするだけです。配線を変更する必要は一切ありません。

このように、PLCは、これまでハードウェアの配線で行っていた機械の制御を、ソフトウェアで実現できるようにした画期的な装置なのです。
ちなみに、よく聞く「シーケンサ」は、三菱電機の商品名が一般名詞化したもので、PLCと同じものを指します。

PLCのプログラム言語:「ラダー図」

[画像:ラダー図]
ラダー図の例(画像はWikipediaより)

では、PLCを動かすための「プログラム」は、どのように書くのでしょうか?
最も有名なのが「ラダー図」です。

これは、電気回路の図面を模した、見た目で理解しやすいプログラミング言語です。名前の通り、ハシゴ(ラダー)のような見た目をしています。

なぜこのような言語が使われるのか?
それは、もともとリレー回路の配線をしていた電気技術者たちが、新しく難しいプログラミング言語を学ばなくても、今までの知識を活かして直感的にプログラムを作れるようにするためです。

過去問に挑戦!

令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午前 問19より

それでは、この「オルゴールとスマホアプリ」のイメージを持って、添付の過去問を見てみましょう[1]https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/nl10bi0000009lh8-att/2025r07h_ap_am_qs.pdf 2025年10月14日確認

【問題】
産業機器の制御装置として使われるPLCの記述として,適切なものはどれか。

ア 自動制御であり,偏差の比例,積分及び微分の3要素で制御する。

イ 主としてラダー図を用いたシーケンスプログラムによって制御する。

ウ 電圧及び電流のアナログ信号をデジタル信号に変換する。

エ リレーシーケンス回路のハードウェアによって制御する。

解答と解説

正解は です。

各選択肢を私たちのたとえ話で検証してみましょう。

  • ア: これは、室温に応じて風量を自動調整するエアコンのような、高度なフィードバック制御(PID制御)の説明です。PLCで行う制御の一種ではありますが、PLCそのものの本質的な説明ではありません。
  • イ: 「ラダー図を用いたシーケンスプログラムによって制御する」とあります。これはまさに「スマホの音楽アプリ(PLC)は、音楽データ(プログラム)で動いている」という説明に他なりません。これが正解です。
  • ウ: これは、マイクがアナログの声をデジタル信号に変換するような「A/D変換器」の説明です。PLCが利用する部品の一つではありますが、PLC自身ではありません。
  • エ: 「リレーシーケンス回路のハードウェアによって制御する」とあります。これは、PLCが登場する前の「からくりオルゴール」の説明です。PLCは、これを置き換えるために生まれました。

まとめ

昔の制御(リレー回路)現代の制御(PLC)
たとえるならからくりオルゴールスマホの音楽アプリ
制御方法ハードウェアの配線ソフトウェア(プログラム)
柔軟性低い(変更が大変)高い(プログラム変更が容易)
プログラムラダー図が有名

試験でPLCという言葉を見たら、すかさず「ああ、スマホアプリのことだな」と思い出してください。そうすれば、それがソフトウェアによる制御であり、ハードウェア(リレー回路)を置き換えるものであることが明確になり、自信を持って正解を選べるはずです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次