PMBOK第8版のパフォーマンス領域を読み解くシリーズ。今回は、プロジェクトの進行を司るスケジュール・パフォーマンス領域について解説します。
プロジェクトマネージャー(PM)と聞いて、多くの人が最初に思い浮かべる仕事は「スケジュール管理(進捗管理)」かもしれません。
しかし、PMBOK第8版では、スケジュールを単なる「作業の期限リスト」や「カレンダー」としては扱っていません。スケジュールとは、ステークホルダーに対して「いつまでに何ができるか」を約束し、期待を調整するための強力な「コミュニケーション・ツール」であると明確に定義されています。
スケジュール領域に含まれる「3つのプロセス」
プロジェクトをタイムリーに完了させるため、この領域には以下の3つのプロセスが定義されています。
- スケジュール・マネジメントの計画 (Plan Schedule Management)
スケジュールを「どのように設計・作成し、どうやって管理していくか」という方針やルールを決めるプロセスです。 - スケジュールの作成 (Develop Schedule)
作業の順序、所要期間、必要な資源などを分析し、実際のスケジュール・モデル(ガントチャートなど)を作成するプロセスです。 - スケジュールの監視・コントロール (Monitor and Control Schedule)
プロジェクトの状況を監視してスケジュールを更新し、遅れがないかをチェックし、変更を管理するプロセスです。
【SSAITSの視点】いきなり線を引いてはいけない!「計画の計画」の重要性
今回の第8版アップデートにおいて、実務家としてぜひ注目したいのが「スケジュール・マネジメントの計画」の復活です。
実はこのプロセス、第6版には存在していましたが、概念重視の第7版では影を潜めていました。
プロジェクトが始まると、多くの人は焦ってすぐにExcelやツールを開き、ガントチャートの「線を引く作業(=スケジュールの作成)」から始めてしまいがちです。
しかし、線を引く前に考えるべきことがあります。
- 予測型(ウォーターフォール)で作るのか、適応型(アジャイル)のタイムボックスで作るのか?
- 進捗の報告は「パーセンテージ」で行うのか、「完了か未完了か」の2択で行うのか?
- スケジュールが遅れた場合、誰の承認を得てベースライン(基準)を変更するのか?
こうした「どのような手法を使い、どんなルール・様式でスケジュールを運用するのか」という方針(計画の計画)をあらかじめ決めておくこと。これが「スケジュール・マネジメントの計画」です。
この土台がないままスケジュールを作ると、後になって「進捗50%って具体的にどういう状態?」と認識のズレが生まれ、監視・コントロールが機能しなくなってしまいます。
現代のスケジュールに必須の「柔軟性(Flexibility)」
スケジュールを作成し、監視していく上で、第8版が強く推奨している考え方が「柔軟性(Flexibility)」です。
変化の激しい現代のプロジェクトにおいて、開始時点で「数ヶ月、数年先までの完璧な日割りスケジュール」を立てることは不可能です。
そこでPMBOKでは、「ローリング・ウェーブ計画法(Rolling wave planning)」の活用を推奨しています。
これは、「直近の作業は詳細に計画し、遠い未来の作業はハイレベル(大まか)に留めておき、情報が明確になるにつれて順次詳細化していく」という手法です。波(ウェーブ)が次々と押し寄せるように、計画をローリング(展開)させていくイメージです。
また、適応型(アジャイル)アプローチでは、数週間ごとの「イテレーション」や「タイムボックス」という固定期間でスケジュールを区切り、その中でできることを調整していくことで、さらに高い柔軟性を実現しています。
まとめ:スケジュールは「生きたコミュニケーションツール」
スケジュール領域のポイントをまとめます。
- スケジュールは、期待値をすり合わせるためのコミュニケーション・ツールである。
- スケジュールを作る前に、「どうやって管理するか」のルール(計画)を定めること。
- 一度引いたら終わりではなく、ローリング・ウェーブ計画法などを用いて、状況の変化に合わせて柔軟に進化させていくこと。
「スケジュールを作ること」が目的になってはいけません。それをツールとして使いこなし、ステークホルダーと対話し、プロジェクトを軌道に乗せ続けること(監視・コントロール)こそが、プロマネの真の役割です。

