PMBOK第8版の「スケジュール・パフォーマンス領域」を読み解くシリーズ。今回がこの領域の最後を締めくくる「2.3.5 結果の確認(Check Results)」の解説となります[1]Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 セクション2.3.5 … Continue reading。
スケジュール管理の活動が成功したと言えるのは、それらがプロジェクトの「目標成果」にしっかりと貢献している場合のみです。計画や管理が正しく機能しているかを確認するための7つのチェック項目と、スケジュールの「真の本質」について考えていきましょう。
スケジュールにおける目標成果と7つのチェック項目

PMBOK第8版では、スケジュール領域が目指すべき成果と、それを満たしているか確認するための具体的なチェック項目が以下のように整理されています。
| 目標とする成果 | 確認のポイント(チェック項目) |
|---|---|
| 成果①:アプローチの一貫性 | 開発アプローチ(予測型、適応型、ハイブリッドなど)に、スケジュールの作り方が適切に適合しているか。 |
| 成果②:フェーズによる価値の接続 | 立ち上げからクローズまでの作業が「フェーズ」として明確に表現され、各フェーズに妥当な終了基準(Exit criteria)があるか。 |
| 成果③:全体論的(ホリスティック)な計画 | 計画全体のなかにギャップや不整合がなく、全体が俯瞰的に計画されていることを示す「提供スケジュール」が策定できているか。 |
| 成果④:文書の完全性 | タスクの依存関係、作業期間、リソース割り当て、主要マイルストーンなどの不可欠な要素がスケジュール文書に網羅されているか。 |
| 成果⑤:ツールと技法の適切な使用 | 適切なプロジェクト管理ソフトウェアや、クリティカル・パス法(CPM)などの代表的な技法を効果的に活用しているか。 |
| 成果⑥:ステークホルダーの関与 | 顧客やチームメンバーなどの主要なステークホルダーが、スケジュール策定プロセスに十分に参画しているか(非現実的な計画を防ぐため)。 |
| 成果⑦:十分なバッファの組み込み | 時間的余裕(フロート)やコティンジェンシー予備、代替プランなどを用いて、既知のリスクがスケジュール上に適切に織り込まれているか。 |
【SSAITSの視点】スケジュールはプロジェクトの「通信簿」である

PMBOKが提示する上記の7つの成果を完璧に満たしていれば、プロジェクトは遅延なく進むのでしょうか?
実務の現場を知る方ならお分かりの通り、答えは「NO」です。
スケジュールの評価やコントロールというのは非常に難しく、どれだけ精緻な計画を立てても遅延は発生します。
ここで、ソフトウェア工学やコンサルティングの名著を多数執筆したG.M.ワインバーグの鋭い言葉を紹介します[2]G.M.ワインバーグ (著)、大野 徇郎 (訳)『ワインバーグのシステム思考法 ソフトウェア文化を創る〈1〉』共立出版 、1994年、83頁。。
「他のすべての原因よりもカレンダー時間の切迫が、ソフトウェアプロジェクトにその失敗の現実を直視させる」
この言葉が示しているのは、「スケジュールそのものがプロジェクト失敗の『原因』ではない」ということです。
現場では、「あと1週間時間があったら、こんな失敗しなかったのに…」「スケジュールが短すぎたせいだ」という愚痴をよく耳にします。しかし、それは本質から目を背けています。
本当に目を向けるべきは、「なぜその1週間の時間(バッファ)を事前に作れなかったのか?」「なぜ途中で1週間分の遅れが生じてしまったのか?」という、他の領域(スコープの肥大化、リソースの不足、リスク対応の甘さなど)に潜む問題の本質なのです。
スケジュールのため「だけ」にできることはない
以前の「他の領域との相互作用」の記事でも触れた通り、スケジュールは単独で動いているわけではありません。
つまり、スケジュールというのはプロジェクト全体の健康状態を表す「通信簿(結果)」なのです。
「通信簿の点数(スケジュール)を良くするために、通信簿の紙をいじろう」としても意味がありません。スケジュールのために何ができるかを考えるのではなく、スコープを適切に絞り、ステークホルダーと対話し、リソースを最適化するといった「円滑なプロジェクト進行の土台」があって初めて、遅滞ないスケジュールが成り立つのです。
まとめ:スケジュール領域を終えて
「いつ、どのように提供するか」を定義し、管理するスケジュール・パフォーマンス領域。
ローリングウェーブ計画法による柔軟なアプローチから、CCPMによるバッファ管理、そしてLBSなどの具体的な技法まで、非常に実践的な内容が詰まっていました。
スケジュールは、決して「プロマネがメンバーを縛り付けるためのムチ」ではありません。プロジェクトの現実を直視し、チームとステークホルダーを成功へと導くための「羅針盤」として、効果的に運用していきましょう!
注
| ↑1 | Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 セクション2.3.5 および Table 2-7(57-58頁)より要約・翻訳。以下、PMBOK第8版(英語版)と略記。 |
|---|---|
| ↑2 | G.M.ワインバーグ (著)、大野 徇郎 (訳)『ワインバーグのシステム思考法 ソフトウェア文化を創る〈1〉』共立出版 、1994年、83頁。 |

