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【PMBOK第8版】ガバナンスを機能させる「3種の神器」と、陥りがちな指標(メトリクス)の罠

これまでの記事で、ガバナンスの真の目的は「価値創造」であること、そしてプロジェクトの特性に合わせて「構造化されたガバナンス」か「自己ガバナンス」を選ぶべきだと解説してきました。

しかし、どれほど立派なガバナンスの体制(モデル)を作っても、それだけでプロジェクトが自動的に成功するわけではありません。

PMBOK第8版の「2.1.3 効果的なプロジェクト・ガバナンスのための指標とメカニズム」では、ガバナンスを単なる「お飾り」にせず、実際に機能させるために不可欠な3つの構成要素と、測るべき指標(メトリクス)について解説されています。

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このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

ガバナンスを機能させる「3種の神器」

ガバナンスを機能させる「3種の神器」

どちらのガバナンス・モデルを採用するにしても、以下の3つのメカニズムがシステムとして組み込まれている必要があります。

ターゲット指標(Target metrics)

プロジェクトが「組織の戦略的目標(目指すべき価値)」にちゃんと向かっているかを示す、明確な目標指標です。これがなければ、そもそも正しい意思決定ができているかの判断がつきません。

シグナル伝達メカニズム(Signaling mechanisms)

いわゆる「アラームシステム」です。プロジェクトが目標から逸れそうになったとき、手遅れになる前に意思決定者に気付かせるための仕組みです。後から振り返る結果指標(遅延した、予算が超過した)ではなく、未来の危険を予測する「先行指標(リーディング・インジケーター)」であることが重要です。

フィードバック・メカニズム(Feedback mechanisms)

自分たちが下した「意思決定」が本当に正しかったのかを評価し、そこから学習して次の判断を改善するための仕組みです。やりっ放しではなく、ガバナンスの質自体を向上させるループを作ります。

「インプット」を測る警察になっていないか?

このセクションでPMBOKが最も強く伝えようとしているメッセージ。それは、「活動量(インプット)」ではなく「成果(アウトカム)」を測れ、ということです。

世の中の多くのプロジェクトでは、以下のような指標ばかりが監視されています。

  • 「チームメンバーのリソース稼働率は100%を維持しているか?」
  • 「決められた社内ルールや標準プロセスを遵守しているか?」
  • 「予定していたタスクの消化率は何パーセントか?」

これらはすべて、どれだけ労力をかけたかを示す「インプット指標」です。
極端な話、全員が残業して稼働率120%でタスクをこなしていても、出来上がったシステムが誰にも使われなければ(価値を生まなければ)、プロジェクトとしては大失敗です。

真に効果的なガバナンスが監視・評価すべきなのは、以下のような「成果(価値)に直結する指標(アウトカム指標)」です。

  • 投資対効果(ROI): お金をかけた分のリターンは確実に見込めるか?
  • 価値の最大化: 今のベースライン(計画)は、本当に「可能な限り最高の価値」をもたらすものになっているか?もっと良い別の選択肢はないか?

まとめ:ガバナンスは「警察」ではなく「ナビゲーション」

プロジェクトにおけるガバナンスを、「ルール通りにメンバーが働いているかを見張る警察」のように捉えている組織は少なくありません。

しかし、PMBOK第8版が提示するガバナンスの姿は、警察ではなく「ナビゲーションシステム」です。

目的地(ターゲット指標)を設定し、道を外れそうになったら警告を出し(アラーム)、ルート変更の判断が正しかったかを学習する(フィードバック)。そして常に「この道が最も価値を生む最短ルートか?」を問い続ける。

皆さんの組織のガバナンスは、インプットを見張る「警察」になっていませんか?最も価値を生むための意思決定を支援する「ナビゲーション」へと意識を変えることが、プロジェクト成功への大きな一歩となります。

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