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【PMBOK第8版】スケジュールバッファ(予備)の管理術と「学生症候群」を防ぐ極意

PMBOK第8版の「スケジュール・パフォーマンス領域」を読み解くシリーズ。今回は、プロジェクトの遅延リスクからタイムラインを守るための「スケジュールバッファ(予備)」について解説します。

プロジェクトにおいて「予定通りに何もかもうまくいく」ことはあり得ません。そのため、不確実性に対する「回復力(レジリエンス)」としてバッファ(予備)を計画に組み込むことは、PMBOKでも中核的な要素として位置づけられています。

目次
このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

スケジュール予備の「2大分類」

スケジュール予備の「2大分類」

PMBOKでは、リスクの性質(予測できるか・できないか)に応じて、主に以下の2種類の予備を定義・区別しています。

① コンティンジェンシー予備(Contingency Reserve / 偶発性予備)

  • 対象:既知の未知(known-unknowns)
    事前に「こういうリスクが起こるかもしれない」と特定・予測できているリスクに対して割り当てる予備です。
  • 特徴: 例えば「新しいツールの導入だから、手戻り(リワーク)が発生するだろう」と見越して確保する時間です。この予備は「スケジュール・ベースライン(基準線)の中」に含まれ、プロジェクトマネージャーの裁量で管理します。

② マネジメント予備(Management Reserve / 管理予備)

  • 対象:未知の未知(unknown-unknowns)
    事前に特定が不可能な、全くの想定外の事態(パンデミックや天災、予期せぬ仕様の根本的見直しなど)に対して確保される予備です。
  • 特徴: この予備は「スケジュール・ベースラインの外側」に設定されます(進捗測定の基準には含めません)。通常、プロジェクトマネージャーの一存ではなく、上層部(スポンサーなど)の承認を得てから使用(リリース)されます。

【SSAITSの視点】バッファが引き起こす「学生症候群」の罠

【SSAITSの視点】バッファが引き起こす「学生症候群」の罠

PMBOKが示すように、プロジェクトにバッファを組み込むことは必須です。しかし、実務の現場では、この「スケジュールバッファ」という存在がプロマネを激しく悩ませます。

なぜなら、各担当者のタスクにそれぞれ「余裕(バッファ)」を持たせると、往々にして「学生症候群(Student Syndrome)」を引き起こすからです。

学生症候群とは、「夏休みの宿題の締め切りはまだ先だから、ギリギリになってからやればいいや」と、余裕がある分だけ着手を遅らせてしまう心理的な罠です。
「このタスクは本当は3日で終わるけど、バッファを積んで5日もらっている。だから3日目から始めよう」という行動がチーム内に蔓延すると、せっかく確保したバッファはただの「無駄な待機時間」として消化され、結局少しのトラブルでスケジュールが遅延してしまいます。

かといって、一切のバッファを持たせないスケジュールは、一度のトラブルで崩壊する非現実的なものになってしまいます。

個別バッファを廃止し「全体バッファ」で守る

このジレンマを解決するための強力なアプローチが、PMBOKの解説にも登場する「クリティカル・チェーン法(CCPM)」です。

名著『クリティカルチェーン(エリヤフ・ゴールドラット著)』で提唱されたこの手法の核心は、「個別のタスクからはバッファを完全に剥ぎ取り、プロジェクトの最後に『全体バッファ(プロジェクト・バッファ)』として一括管理する」という考え方です。

私もスケジュールを作成する際は、この手法を強く意識しています。

  1. タスクに余裕を持たせない: 各メンバーには、バッファ抜きの「最短で終わるギリギリの工数」でスケジュールを提示し、学生症候群を排除します(心構えとして、バッファがないつもりで全力で取り組んでもらいます)。
  2. 最後にバッファを固める: 個別タスクから剥ぎ取ったバッファを合算し、スケジュールの最終段(納品前)に「プロジェクト・バッファ」としてドカンと置きます。
  3. PMが采配する: メンバーのタスクが遅延した時だけ、PMが全体バッファから必要な日数を切り崩して割り当て、全体を調整します。

まとめ

バッファ(予備)は、プロジェクトを守るための命綱です。

  • 予測できるリスク(コンティンジェンシー)と想定外(マネジメント)を分けて管理する。
  • 各人にバッファを持たせると「学生症候群」で食いつぶされる。
  • 個別タスクの余裕は削り、プロジェクト全体の「大きなバッファ」としてPMが一括で管理・采配する。

人間の心理(怠け心や油断)を理解した上でバッファを戦略的に配置・秘匿し、プロジェクトを安全にコントロールしていきましょう。

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