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【PMBOK第8版】プロジェクトの定義が変わった?「モノ作り」から「価値創造」へのパラダイムシフト

「プロジェクトマネジメント」と聞いて、皆さんはどんな仕事を思い浮かべますか?
「決められた予算とスケジュールの中で、予定通りにシステムや建物を完成させる仕事」――そう答える人が多いかもしれません。

しかし、プロジェクトマネジメントの国際標準である「PMBOK(ピンボック)」の最新版である第8版を読むと、そのイメージは大きく覆されます。

第8版における最大の特徴は、「価値(Value)」という言葉が徹底的に強調されている点です。
プロジェクトはもはや「ただタスクをこなすもの」から、「組織に価値をもたらすもの」へと明確に定義が変わりました。

今回は、PMBOK第8版が語る「プロジェクトの特性」について、これまでの版との違いを比較しながら、初学者向けに分かりやすく解説します。

目次
このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

これまでのPMBOKとの違い:「モノ作り」からの脱却

プロジェクトマネジメントの三角形のイメージ
これまで重視されていたのは品質・コスト・納期(QCD)

従来のPMBOK(特に第6版まで)でも、もちろんプロジェクトが価値を生むことは前提とされていました。
しかし、現場での主な関心事は「いかにスコープ(範囲)を守り、品質・コスト・納期(QCD)を達成して成果物(Output)を完成させるか」に向きがちでした。

しかし、変化の激しい現代では、「予定通りにシステムを作ったけれど、誰も使わなかった」「市場環境が変わり、完成した頃には時代遅れになっていた」という悲劇が頻発します。

そこでPMBOK第8版では、「組織はプロジェクトに対し、アウトプット(成果物)だけでなく『価値』を提供することを期待している」と明確に宣言しています。

単にモノを作る(Output)だけでなく、それが使われて効果を生み(Outcome)、最終的に組織や顧客に利益や良い影響(Value)をもたらして初めて、プロジェクトは成功したと言えるのです。

プロジェクトとは「組織を変革するもの」である

プロジェクトとは「組織を変革するもの」である

PMBOK第8版では、プロジェクトが価値を生み出すプロセスを以下のように非常に戦略的に定義しています[1]出典:Project Management Institute, Inc., A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, … Continue reading

Value creation through organizational change(組織変革を通じた価値創造)
ビジネスの観点から見ると、プロジェクトの目的は、特定の目標を達成するために「現在の状態(Current State)」から「将来の状態(Future State)」へ組織を移行させることである。

たとえば、「新しい社内システムを導入する」というプロジェクトは、単にシステムという「モノ」を設置する作業ではありません。「手作業が多くて残業だらけの現在の状態」から、「自動化されて社員がクリエイティブな仕事に集中できる将来の状態」へと組織を変革する取り組みなのです。

価値にこだわるからこそ「プロジェクトが終了する条件」も多様化した

プロジェクトが終了する条件

プロジェクトには、通常の定常業務(オペレーション)とは異なり、「明確な始まりと終わりがある(Temporary:有期性)」という特性があります。

これまでは「予定していたモノが完成した時」がプロジェクトの終わりだと思われがちでした。しかし、PMBOK第8版では「プロジェクトが終了する条件」として、以下のような多様なケースが挙げられています。

プロジェクトが終了する条件
  1. 目標が達成された場合(ハッピーエンド)
  2. 目標が達成されない、あるいは達成できないと判断された場合
  3. 資金や人材などの資源が枯渇した場合
  4. 戦略や外部環境の変化により、プロジェクトの必要性がなくなった場合
  5. 法的、コンプライアンス上の問題などで打ち切りとなった場合

ここから読み取れるのは、「価値を生み出す見込みがなくなったのなら、途中で終わらせる(戦略的撤退をする)のも立派なプロジェクトの終わり方である」という強いメッセージです。

「せっかくここまでお金をかけたんだから、とりあえず完成させよう」と無駄なモノを作り続けるのは、価値主導(Value-driven)の考え方に反します。
外部環境の変化でニーズが消滅したのなら、勇気を持ってプロジェクトを終わらせることも、現代のプロジェクトマネージャーの重要な役割なのです。

おまけ:まったく同じプロジェクトは存在しない

もう一つ、PMBOK第8版で強調されているのが「Unique context(独自のコンテキスト)」です。
たとえば、「A支店にシステムを導入するプロジェクト」と「B支店にシステムを導入するプロジェクト」は、目的が同じでも、関わる人(ステークホルダー)や場所、隠れたリスクなどが異なります。

「前回成功したから、今回も全く同じやり方でいいだろう」は通用しません。状況に合わせて柔軟にやり方を調整する「テーラリング(Tailoring)」が必要不可欠です。

まとめ:これからのプロジェクトマネージャーの使命

PMBOK第8版が私たちに教えてくれるのは、プロジェクトマネージャーは単なる「進行管理係」ではないということです。

  • 目的は「成果物」を作ることではなく、「価値」を創造し組織を変革すること。
  • 状況が変わって価値が見込めなくなったら、早期に終了させる判断も辞さない。
  • 常に独自のコンテキストを読み取り、やり方をテーラリングする。

これからプロジェクトマネジメントを学ぶ方は、ぜひ「このタスクをどうやって終わらせるか」だけでなく、「このプロジェクトは誰にどんな価値を届けるのか?」を常に問いかける視点を持ってみてください。

1 出典:Project Management Institute, Inc., A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 7頁より筆者要約・翻訳。以下、PMBOK第8版(英語版)と略記。
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