財務パフォーマンス領域の「結果の確認」とは?PMBOK第8版の5つの成果と、受託側が本当に見るべき指標

コストを見積り、予算を作り、他の領域との影響を調整しながらプロジェクトを進めてきた。では、その財務管理は本当にうまくいったのでしょうか。

PMBOK第8版の財務パフォーマンス領域は、最後に「結果の確認(Check Results)」という形で締めくくられています。ここで示されているのは、財務管理のプロセスをこなすこと自体が目的ではなく、最終的にプロジェクトが金銭的・非金銭的な価値をもたらしているかを検証すべきだ、という考え方です。

今回はPMBOKが挙げる5つの目標成果とその確認方法を整理したうえで、Web制作やシステム開発のような請負構造のプロジェクトでは、実務上どこを見ればよいのかについても触れていきます。

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山脇 弘成(SSAITS(サイツ)代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
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PMBOKが示す5つの目標成果と確認方法

PMBOK第8版では、財務パフォーマンス領域の各種プロセスや管理活動が成功したかを評価するために、5つの目標成果(Outcomes)と、それぞれの確認方法(Check)が示されています。

成果1:プロジェクトがビジネス目標の達成と戦略の推進に貢献している

確認方法

  • 投資回収率(ROI)、正味現在価値(NPV)、内部収益率(IRR)といった財務メトリクスを確認する
  • コスト便益分析、重要業績評価指標(KPI)、目標と主な結果(OKR)を活用する
  • CapEx(設備投資)とOpEx(業務費用)の支出が、戦略目標と整合しているかを検証する

成果2:プロジェクトの完了が、予算内または予算以下に収まっている

確認方法

  • コスト差異(CV)やコスト効率指数(CPI)といった指標を用いた差異分析(Variance analysis)を確認する
  • 署名された契約に基づき、外部ベンダーとの財務目標が達成されているかを確認する

成果3:計画に沿ってプロジェクトの成果物が検証されている

確認方法

  • アーンド・バリュー・マネジメント(EVM)を適用し、進捗とコストを測定する
  • 組織が定義したその他の財務・測定メトリクスを確認する

成果4:投資として、あるいは財務以外の形で「価値」が創出されている

確認方法

  • プロジェクトの成功基準で定義された多様な指標を用い、将来に向けた投資価値や潜在的価値を測定・検証する

成果5:財務的な可視性が達成されている

確認方法

  • トレンド分析やグラフを用いた財務分析を実施する
  • 将来的な金銭的資源の推移や支出動向について、信頼性の高い財務予測(Forecasting)を行う

このように、財務の確認は「予算を超えなかったか」という一点だけではありません。組織の戦略に貢献したか、財務以外の価値を生んだか、そして今後の見通しが立てられる状態になっているかまでを含めて評価する、という考え方が示されています。

請負構造のプロジェクトでは、確認すべきことはもっとシンプルになる

ここからは私の実感です。上に挙げたような指標は、事業会社が自社の投資として大規模なプロジェクトを回す場合には有効ですが、Webサイト制作のように「発注者が外部の制作会社に依頼する」という請負構造の場合、財務パフォーマンスの確認はもっとシンプルになります。

まず、この構造で主に財務パフォーマンスを気にするのは受託者(制作会社)の側です。

発注者にとっては、当初の見積もりや発注金額の範囲に収まっていれば、金銭面としては問題ありません。一方の受託者は、提出した見積もりの中で、自分たちが想定する原価に収まっているかどうかが勝負どころになります。

「人が動く」ことでしかコストが発生しないという難しさ

Web制作やシステム開発の受託において厄介なのは、コストの発生の仕方です。材料を仕入れて加工するような業種と違い、コストのほとんどが「人が動いた時間」として発生します。

そのため、案件の途中でも終わった後でも、この案件は本当にもうかっているのか、それとも赤字なのかが見えにくいのです。目の前で在庫が減っていくわけでも、伝票が積み上がるわけでもありません。気づいたときには、当初想定していた工数を大きく超えていた、ということが起こり得ます。

だからこそ、案件ごとの「時間」を測る

この見えにくさに対する答えは、案件ごとに費やした時間を把握することに尽きると思います。

プロジェクト管理ツールを使っているのであれば、タスクごとに所要時間を記入していきましょう。そうすることで、現時点でどれだけ時間がかかっているのかを進行中に把握できますし、プロジェクトが終わった後に振り返る材料にもなります。

この振り返りが、次の案件の見積り精度を上げてくれます。前回の記事でも触れた類推見積りやパラメトリック見積りは、こうした過去の実績データがあってはじめて機能するものです。

忘れてはいけないのは「修正」の時間

時間を測定するときに見落とされがちなのが、修正作業です。

新しく何かを作るタスクは工数として意識されやすいのですが、「ちょっと直しておいて」という修正は記録から漏れやすく、しかも積み重なると相当な時間になります。デザインの手直しやテキストの差し替え、動作の微調整といった作業も、必ずタスクとして記録し、時間を計上してください。

案件の採算が合わなくなる原因は、大きな作業の見積り違いよりも、記録されない小さな修正の積み重ねであることが少なくありません。

まとめ

PMBOK第8版の「結果の確認」は、ROIやEVMといった指標を通じて、財務管理が価値の創出につながっているかを検証する枠組みを示しています。予算内に収まったかどうかだけでなく、戦略への貢献や将来の見通しまでを含めて評価する、という視点が大切です。

一方、請負構造の中小規模プロジェクトであれば、見るべきものはぐっとシンプルになります。受託側にとっては、案件ごとの投入時間を漏れなく記録し、原価の中に収まっているかを確認すること。そして修正作業まで含めて振り返り、次の見積りに活かすこと。この地道な積み重ねが、結果的にもっとも確実な財務パフォーマンスの確認方法になると感じています。

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