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「プロセスの成功」と「成果の成功」とは何か?|PMBOK第8版が定義するプロジェクトの「2つの成功」

プロジェクトマネジメントにおける永遠のテーマ、それは「プロジェクトが成功したかどうかを、どう測るか」です。

これまでの時代、プロジェクトマネージャー(PM)は「決められたものを、決められた期間と予算で作ること」が最大の使命でした。しかし、PMBOK第8版の「2.1.2 プロジェクトの成功の評価」のセクションでは、成功に対する評価軸が根本からアップデートされています。

今回は、PMBOK第8版で明確に定義された「2つの成功」と、これからのPMに求められる「小社長(ミニCEO)」のようなビジネス感覚について紐解いていきます。

目次
このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

成功を測る「2つの次元」

PMBOK第8版では、プロジェクトの成功を評価するためには、以下の「2つの次元(側面)」にバランスよく焦点を当てる必要があると定義しています。

プロジェクトを評価する2つの次元
  1. プロセスの成功(効率性):
    コスト、納期、品質(QCD)などの制約を守り、いかに効率よくプロジェクトを進行できたか。
  2. 成果の成功(有効性):
    売上の向上や新規顧客の獲得、環境目標の達成など、組織にとって真の「価値」を実際に生み出せたか。

この2つの違いを強烈に印象付けるため、PMBOK第8版では実在する両極端な事例が紹介されています。

事例1:シドニー・オペラハウス(プロセスの大失敗 × 成果の大成功)

事例1:シドニー・オペラハウス(プロセスの大失敗 × 成果の大成功)

オーストラリアを代表する世界遺産「シドニー・オペラハウス」。
実はこの建設プロジェクト、当初の予算からなんと14倍以上(1億200万豪ドル)に膨れ上がり、納期も10年遅れました。「プロセスの成功」という観点では、歴史に残る大失敗プロジェクトです。

しかし、完成した建物は同大陸で最も有名なランドマークとなり、毎年1,090万人が訪れる莫大な観光価値を生み出しています。「成果(価値)の成功」としては、期待を何倍も上回る大成功を収めた稀有な例です。

(※ただし、現実のビジネスにおいてここまで期間と予算が膨れ上がれば、投資コストを回収できずビジネスチャンスを失うのが常であり、これはあくまで例外的な成功例と言えます)

事例2:モントリオールの陸橋(プロセスの大成功 × 成果の大失敗)

事例2:モントリオールの陸橋(プロセスの大成功 × 成果の大失敗)

一方、カナダのモントリオールで2016年に建設されたハイウェイの陸橋は、スケジュール通り、予算通りに完璧に管理されて完成しました。つまり「プロセスの成功」は100点満点です。

しかし完成後、隣接する橋の今後の再開発計画と設計がズレていることが発覚。適切に管理された建設作業のわずか1年後に、約1,100万カナダドルをかけた陸橋は取り壊されてしまいました。価値を生み出さなかった(むしろマイナスになった)、「成果の大失敗」の典型例です。

PMに求められる「小社長」としてのビジネス感覚

モントリオールの事例が示すように、「予定通りに終わったからといって、価値を生まなければ意味がない」というのが、現代のプロジェクトマネジメントの厳しい現実です。

これまでのように「言われたものを作るだけ」の時代は終わり、PMは「プロジェクトで作ったものが本当に価値を生むのか」を常に考慮しなければならなくなりました。

実際の現場では、こんな判断を迫られる局面が出てくるはずです。

「予定日より1カ月遅れてしまいますが、機能Aを追加することができます。開発の追加費用は〇〇円、リリース遅延による損失は〇〇円です。しかし、機能Aによって得られる将来の利益(価値)は〇〇円と予測されます。トータルで価値が最大化されるため、今回は1カ月遅らせてでも機能Aを作りましょう」

もちろん、PMが独自の判断だけで「時間も予算も使って開発しよう」と決めることはほぼありません。この提案と費用対効果(ROI)をプロジェクトの依頼者(スポンサー)に相談し、ビジネスとしての意思決定を促すことになります。

まとめ:プロマネは「小社長」へと進化する

PMの仕事は、単なる「タスク管理の責任者」から、ビジネス全体の利益と制約のバランスを取る、より複合的で高度な役割へと変化しています。

「プロジェクトマネージャーは小社長(ミニCEO)なのか?」という議論がよくありますが、成果(価値)の最大化までを視野に入れ、スポンサーとビジネスの交渉を行うその姿は、まさに社長のように広い視野を持ったプロフェッショナルだと言えるでしょう。

「プロセスの成功」で効率を担保し、「成果の成功」で真の価値を提供する。この両輪を回せる人材こそが、これからの時代を生き抜く強いプロジェクトマネージャーなのです。

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