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【PMBOK第8版】属人化を防ぐ!「プロジェクト知識のマネジメント」とAI時代のナレッジ共有

PMBOK第8版のガバナンス・パフォーマンス領域を読み解くシリーズ。今回は、6つ目のプロセスである「2.1.6.6 プロジェクト知識のマネジメント(Manage Project Knowledge)」について解説します。

プロジェクトは、単にシステムや成果物を作って納品すれば終わり、というものではありません。そのプロセスの中で得られた「学び」や「ノウハウ」を組織の資産として蓄積し、次のプロジェクトや組織の運営に活かすための重要なプロセスが、この知識のマネジメントです。

目次
このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

管理すべき2つの「知識」(明示的知識と暗黙知)

プロジェクトをマネジメントし、組織の学習を促進するためには、大きく分けて2つの知識を管理する必要があります。

2つの知識
  1. 明示的知識(Explicit knowledge / 形式知):
    言葉、写真、数字を使用して容易に文書化できるタイプの知識です。マニュアルや手順書、データベースなどがこれに該当し、システムを通じて簡単に共有・伝達できます。
  2. 暗黙知(Tacit knowledge):
    個人の頭の中に埋め込まれた、非常に「属人的」な情報です。熟練者の技術的スキル、経験からくる洞察、カンやコツなどで構成されており、言葉で表現したりマニュアル化したりすることが難しいという特徴があります。

知識マネジメントの最大のミッションは、単にドキュメントを共有することではありません。メンバー間の対話や信頼関係(コミュニケーション)を通じて暗黙知を引き出し、「可能な限り暗黙知を明示的知識(形式知)に変換していくこと」にあります。

暗黙知と形式知についてさらに詳しく

暗黙知と形式知がどのように変換され、組織の知識として定着していくかについては、経営学のフレームワークである「SECI(セキ)モデル」の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

【SSAITSの視点1】プロジェクトは「自社を知る」最高の機会

【PMBOK第8版】属人化を防ぐ!「プロジェクト知識のマネジメント」とAI時代のナレッジ共有

知識マネジメントに関して、私がプロジェクトの現場で経験した面白いエピソードがあります。

プロジェクトの終盤や完了後に、クライアントから「今回のプロジェクトを通じて、自分たちの会社(組織)のことがよく分かりました。深く知るきっかけになりました」と喜んでいただける機会が多々あります。

すでに暗黙知が形式知としてマニュアル化・共有されている優秀な組織であれば、それをそのままプロジェクトに活用できます。
しかし現実には、多くの組織が「暗黙知だらけ(誰が何を知っているか分からない状態)」のままプロジェクトをスタートさせます。

そうした中で、私たちが外部のプロジェクトマネージャーとして入り、「あの情報(仕様)はどこにあるのですか?」「この業務の歴史的な背景は誰が知っているのですか?」と一つひとつ問いかけ、情報を整理していきます。
すると、プロジェクトを進めるという活動そのものが、社内に散らばっていた「暗黙知」を「形式知」へと変換していく作業になるのです。

しっかりとプロジェクトをマネジメントすることは、結果的にクライアント組織自体の透明性を高め、業務改善に直結するという素晴らしい副産物を生み出します。

【SSAITSの視点2】AIが常識となった時代の知識マネジメント

もう一つ、今回のPMBOK第8版の「知識マネジメント」で非常に面白いのが、AI(人工知能)の活用とリスクについて公式に言及されている点です。PMBOK第8版は、AIがビジネスの常識となった世界で初めて発行されたプロジェクトマネジメントの標準です。

インタビュー・ボットや社内ナレッジAIなどの最新技術は、大量のデータから暗黙知と明示的知識の両方を捉え、チーム内で共有するための強力な武器になります。

しかしPMBOKは、AIを手放しで礼賛しているわけではありません。同時に以下のような「重大なリスク」を警告しています。

  • 意図せず機密情報をAIに学習させ、公開してしまうリスク(セキュリティ)
  • AIのハルシネーション(もっともらしいウソ)によって、誤った知識がプロジェクト内に蔓延するリスク

AIを活用して知識を効率的に引き出しつつも、「その出力された情報(知識)は本当に正しいのか?」を人間が疑い、検証する姿勢が不可欠です。そのため、組織として「責任あるAIポリシー」を確立した上で知識マネジメントを行うことが、現代のプロマネには求められています。

まとめ

プロジェクト終了時にだけ「教訓(Lessons learned)」をまとめる報告会を開いても、真の知識マネジメントとは言えません。

プロジェクトの進行中、常にメンバー同士の対話を促して暗黙知を引き出し、AIという最新の武器を「安全に」使いこなしながら形式知へと変換していく。そうして属人化を防ぎ、組織全体を成長させていくことこそが、「プロジェクト知識のマネジメント」の真の目的なのです。

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