内外製分析(Make-or-buy analysis)の概要
内外製分析(Make-or-buy analysis)とは、プロジェクトの作業や成果物を自社で作る(内製・Make)か、外部から調達する(外製・Buy)かのメリット・デメリットを比較し、意思決定を行う分析手法です。
プロジェクトマネジメントにおいては、従来の「調達マネジメント」や、最新のPMBOK第8版における「ガバナンス・パフォーマンス領域(ソーシング戦略の計画)」プロセスなどで非常に重要視される考え方です。
ソフトウェア開発などを組織内で対応することを「内製」、組織外のベンダーに依頼することを「外製(アウトソーシング)」と呼び、どちらを選択するかがプロジェクトのコスト、スケジュール、品質を大きく左右します。
内外製分析の4つの着眼点
内外製分析には「絶対にこの計算式で決める」といった画一的な手法はありません。主に以下の4つのポイントで効果とリスクを比較し、総合的に判断していきます。
- コア・コンピタンス
- 必要とされる専門知識
- 組織内の資源(リソース)とノウハウの状況
- 外製した際のコストとベンダーリスク
それぞれの着眼点について詳しく解説します。
コア・コンピタンスとの兼ね合い
内外製分析をする際に一番に考えなければならないのが、自社の競争力の源泉である「コア・コンピタンス」との兼ね合いです。
もし対象となるプロダクトやシステムが、自社のビジネスの根幹(コア・コンピタンス)に関わる重要なものであれば、外注するよりもコストが割高になったとしても、セキュリティや機密保持の観点から「内製」すべきケースが多々あります。
必要とされる専門知識
自社にその作業を遂行するための専門知識があるかどうかも重要な判断軸になります。
例えば、本業がまったくIT業界と関係ない会社が、自社内だけで高度な会計システムを構築するのは至難の業であり、外製(Buy)が現実的です。
しかし、社内にWebデザインやHTML/CSSの知識がある人材がいれば、コーポレートサイトのちょっとした改修は内製(Make)できるかもしれません。
組織内の資源の状況と「ノウハウの蓄積」
専門知識を持った人材が社内にいたとしても、「そのプロジェクトの期間中に、その人材(資源)が稼働できるか?」は別問題です。担当者が別件で忙殺されている時期であれば、外製を選択せざるを得ません。
また、ここで忘れてはいけないのが「ノウハウの蓄積」という視点です。
コスト削減やリソース不足を理由に何でもかんでも外製してしまうと、自社内に技術やノウハウが蓄積されず、長期的には組織の技術力低下(空洞化)を招きます。目先の利益にとらわれず、組織の長期戦略に照らし合わせて判断することが求められます。
外製した際のコストと「ベンダーリスク」
内外製分析で最も定量的に比較しやすいのがコストです。
ただし、ソフトウェア開発などのイニシャルコスト(初期費用)だけで「外製の方が安い」と飛びつくのは危険です。保守費用や運用費などの「ランニングコスト」を含めたトータルコスト(総所有コスト)で比較しなければなりません。さらに高度な判断を行う場合は、投資収益率(ROI)や正味現在価値(NPV)といった財務指標も用います。
- 回収期間(Payback Period): 投資した初期費用を、どれくらいの期間(年数や月数)で回収できるかを示す指標。短いほどリスクが低いと判断されます。
- 投資収益率(ROI:Return on Investment): 投資額に対して、どれだけの利益(リターン)を生み出したかを割合で示す指標。
- 内部収益率(IRR:Internal Rate of Return): 将来得られるキャッシュフローの現在価値と、投資額が等しくなる割引率。資金の運用効率(利回り)の良さを示します。
- 割引キャッシュフロー(DCF:Discounted Cash Flow): 将来生み出される現金を、現在の価値に割り引いて(目減りさせて)評価する手法。お金の「時間的価値」を考慮します。
- 正味現在価値(NPV:Net Present Value): プロジェクトが生み出す将来のキャッシュフローの現在価値から、初期投資額を差し引いた金額。これがプラスであれば投資価値があると判断されます。
そして近年特に重視されるのが、ベンダー側の体制や価値観といった「見えないコスト(リスク)」です。
いくら見積もりが安くても、ベンダー側の開発体制がずさんであったり、自社のコンプライアンス基準と合わなかったりすれば、手戻りやコミュニケーションコストが膨れ上がり、結果的に大損をすることになります。安易にコストだけで外製を決めないことが、プロマネの腕の見せ所です。
内外製分析を行うメリット
内外製分析を導入する最大のメリットは、「なんとなく」や「目先のコストだけ」でアウトソーシングを決めてしまう危険を防ぎ、定量的・論理的な意思決定ができるようになることです。
分析を行わずに外製ばかりに頼ると、組織は競争力を失い、ベンダーに依存しきった状態(ベンダーロックイン)に陥るリスクが高まります。
内外製分析(Make-or-buy)の思考プロセスを持つことで、プロジェクトマネージャーは単なる現場の進行役を超え、「自社の経営戦略や長期的な技術資産」という高い視座からプロジェクトをマネジメントできるようになります。
また、なぜ自分たちがこの作業をやるのか(あるいは外部に任せるのか)という意義が明確になるため、プロジェクト・メンバーのモチベーション向上にもつながるでしょう。

