「3人で協力すれば、1人の時の3倍の成果が出るはずだ」 そう思ってチームを組んだのに、期待したほど成果が上がらなかった……そんな経験はありませんか?
それは、メンバーのやる気がないからではなく、集団心理の罠「リンゲルマン効果(Ringelmann effect)」が働いているからかもしれません。
今回は、チームの人数が増えるほど一人ひとりのパフォーマンスが下がってしまうこの現象について、そのメカニズムと、現代の職場で「社会的手抜き」を防ぐための具体的な対策を解説します。
リンゲルマン効果とは
リンゲルマン効果とは、集団の人数が増えるにつれて、一人当たりのパフォーマンス(貢献度)が低下してしまう現象のことです。
「社会的手抜き」「社会的怠惰(Social Loafing)」「フリーライダー(ただ乗り)」とも呼ばれます。
このリンゲルマン効果は、簡単にいうと「みんながやるから私はそんなにがんばらなくてもいい」という現象のことです。
1人で対応するのが大変だから、みんなで仕事を分担しようというのに、1人当たりの作業量は低下してしまい、人数が増えるにしたがって作業量は減少していくというのがリンゲルマン効果です。
リンゲルマン効果は農業学校から生まれた
リンゲルマン効果はフランスの農業工学の研究者・マクシミリアン・リンゲルマン(Maximilien Ringelmann)によって、1913年に発表されました。
この研究は1882年から1887年に農業学校で行われたようです。
リンゲルマンはロープを引く際、集団の力の合計が、1人で引っ張るときの力に比べ低いことを発見しました。
たとえば、AさんもBさんもCさんもそれぞれは100という引っ張る力をもっていても、3人で引っ張れば合計の300という力ではなく、290や280、あるいは200という少ない力になってしまいます。
つまり、同じくらいの力をもった人がいると、怠けてしまうということです。
なぜ手抜きが起きるのか?2つの心理メカニズム
なぜ私たちは集団になると手を抜いてしまうのでしょうか? 主な原因は以下の2点です。
責任の分散(Diffusion of Responsibility)
「自分一人くらいやらなくても、誰かがやってくれるだろう」「結果が悪くても、自分だけの責任にはならない」という心理です。
人数が多いほど責任の所在が曖昧になり、当事者意識が薄れてしまいます。
協調性の喪失(Loss of Coordination)
これは物理的な要因です。集団で動く際、全員が完璧なタイミングで力を合わせるのは困難です。
綱引きで言えば「せーの!」のタイミングが微妙にずれることで、個々の力が相殺されてしまい、結果としてパフォーマンスが低下します。
リンゲルマン効果の抑止方法
チームで仕事をする上では、こうしたリンゲルマン効果が生まれないようにしていかなければなりません。
リンゲルマン効果を抑止するためには、以下の5つの方法が効果的とされています。
個人の仕事の識別性を高める
集団でロープを引いた際、個人の力が低くなってしまうのは、個人の力が判別しにくくなり、手抜きを誘ってしまうからです。
そのため、リンゲルマン効果を抑止するためにはまず個人の力の識別性を高め、誰がどのくらいの力を出しているのかを明らかにしていかなければなりません。
これが実際の仕事であれば、各スタッフが何をしているのかを明らかにし、チームで共有し、各人がどの程度の仕事をしているのかを明示する必要があるでしょう。
役割を意識させる
同じ程度の力をもった人が集まれば、「他の人ができるから自分はやらなくてもいい」という意識を生んでしまいます。
そのため、こうしたリンゲルマン効果を抑止するには、「この仕事はあなたしかできない」「他の代わりはいない」という意識を持たせることが大切です。
過度に「お前がやらないといけない」と圧力をかけるのは考えものですが、手抜きをさせないよう役割を明らかにしていきましょう。
目標を設定する
グループの目標を決めると、自分の目標を失ったとしても、周囲のためにやる気を取り戻すことがあります。
また、そのグループの目標の中で、各人がどの程度貢献できたかを明示することで、「自分はこれだけ役に立ったんだ!次もがんばろう!」というモチベーションを与えることができます。
組織・チームを最適なサイズにする
リンゲルマン効果は集団の人数が多いと高くなってしまうと言われています。
つまり、人が多いとそれだけサボりやすいということです。
そのため、リンゲルマン効果が発生している組織・チームはできるだけスリム化し、各人が手抜きができないようにするとよいでしょう。
仕組み作り
人が手抜きをしないような仕組み作りも大切です。
例えば「この目標まで到達したら報酬がある」「これより成績が下がると罰がある」というような形で、サボりを生まないような仕組み作りも肝心です。
とはいえ、過度に賞罰に頼っていると個人の力を最大限に引き出せません。
こうした賞罰の在り方については、下の記事もご参照ください。
さいごに -透明化が怠惰の最大の抑止力-
今回はリンゲルマン効果についてみてきました。このリンゲルマン効果は「ビジネスマネジャー検定」でも選択肢として出てくることがあります。
ビジネスマネジャー検定試験で出題されるのは、チーム・組織を運営する上でマネジャーが対策を知っておかなければならないということでしょう。
リンゲルマン効果は人が集まると発生しやすい手抜きを意味していました。
リンゲルマン効果の対策としては①個人の識別性を高める、②役割を意識させる、③目標を設定する、④組織・チームを最適なサイズにする、⑤仕組み作りの5つがありました。
これら5つの対策全部が「組織の透明性」に関わるものです。
誰も自分の役割が明確で、その仕事内容が周りに知られるような状況であれば、手抜きを起こすことはありません。
手抜きが行われているということは、手抜きをしている個人に問題があるだけでなく、組織の在り方にも問題があるといえるでしょう。
参考
- https://en.wikipedia.org/wiki/Ringelmann_effect(2023年3月17日確認)

