【組織文化を測る】リッカート尺度とは?アンケート調査で活用するメリット・デメリット

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山脇 弘成(SSAITS(サイツ)代表)

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チームの「見えない空気」をどうやって測定していますか?

プロジェクトを運営していると、「チームの士気が下がっている気がする」「心理的安全性が低いのではないか」といった、目に見えない「空気」や「組織文化」に悩まされることがよくあります。

しかし、いざそれを改善しようとしても、目に見えないものを評価し、対策を打つのは非常に困難です。

名著『LeanとDevOpsの科学』において、こうした「人の心や態度、組織文化」を科学的に測定し、「良い組織文化がパフォーマンスを上げる」という大発見を導き出した強力なツールがあります。それが「リッカート尺度(Likert scale)」です。

今回は、チームの健全性チェック(ヘルスチェック)やアンケート調査で広く使われているリッカート尺度について、その仕組みと、現場でPMが活用する際のメリット・デメリットを解説します[1] … Continue reading

リッカート尺度とは何か

リッカート尺度とは、人の心や態度、価値観といった「直接目で見たり測ったりできないもの」を定量化(数値化)するために、計量心理学などで広く使われている評価手法です。

最大の特徴は、回答者に対して「はい」か「いいえ」の二者択一で答えさせるのではなく、提示された質問文(または意見)に対して自分がどの程度同意できるかを、段階的な数値で選んでもらう点にあります。

『LeanとDevOpsの科学』の調査(Westrumの組織文化モデルの測定など)では、主に以下のような7段階の選択肢が用いられました。

  1. まったく同意できない
  2. 同意できない
  3. やや同意できない
  4. どちらともいえない
  5. やや同意できる
  6. 同意できる
  7. 強く同意できる

※調査によっては、5段階(同意できない〜同意できる)が採用されることもあります。

なぜ「はい/いいえ」ではダメなのか?(メリット)

アンケートの回答方式を「白か黒か(はい/いいえ)」から、このリッカート尺度に切り替えることには、プロジェクトのデータを分析する上で極めて大きなメリットがあります。

「灰色」の微妙なニュアンスを収集できる

「私たちのチームは失敗を許容する文化がある」という質問に対して、「はい」か「いいえ」しか選択肢がないと、回答者は極端な判断を迫られます。リッカート尺度を使えば、「完全に同意はできないが、ある程度はそう思う」といった、回答者の微妙な感覚の違い(グラデーション)を細かく拾い上げることができます。

高度な統計分析が可能になる

単純な「はい/いいえ」の多数決ではなく、データを数値(1〜7)として扱うことができるため、平均値を出したり、クラスター分析などのより詳細で厳密な統計分析(予測)が可能になります。

リッカート尺度のデメリットと運用上のリスク

リッカート尺度のデメリットと運用上のリスク

一方で、私たちが実務でチームメンバーにアンケートを取る際には、リッカート尺度ならではのデメリットやリスクにも注意を払う必要があります。

中心化傾向(真ん中ばかり選ばれる)

とくに日本人に非常に多いバイアス(偏り)ですが、極端な意見を避けて、すべて「4. どちらともいえない」を選んでしまう傾向があります。これを中心化傾向と呼びます。結果として、「チームの状態が良いのか悪いのか、結局わからない」という無意味なデータになりがちです。

同意バイアス(とりあえず「はい」寄りにする)

質問文の書き方によっては、回答者が「質問者が望んでいるであろう回答(良い評価)」を無意識に、あるいは忖度して選んでしまう傾向があります。「チームのコミュニケーションは円滑ですか?」と聞かれると、波風を立てないよう「5. やや同意できる」を選んでしまうケースです。

実践ステップ:有効なアンケート調査を行うコツ

上記のデメリットを回避し、リッカート尺度をチームの改善に正しく活かすための実践的なステップをご紹介します。

リッカート尺度導入のための実践的なステップ
  1. 質問文は「平易で直接的」にする:
    質問文が複雑だと回答者は考えることを放棄し、「どちらともいえない」を選びます。「チームのコミュニケーションは円滑で、かつ生産的ですか?」といった2つの要素を含んだ質問(ダブルバレル質問)は避け、「困ったときにすぐ相談できる」のようにシンプルにしましょう。
  2. あえて「偶数段階」にする(中心化傾向の回避):
    「どちらともいえない」という逃げ道を防ぐため、あえて「4段階」や「6段階」といった偶数スケールを採用し、ポジティブかネガティブかの態度決定を促すのも一つの有効なテクニックです。
  3. 匿名性を担保し、目的を共有する:
    忖度(同意バイアス)を防ぐためには、「これは個人の評価を下げるためのものではなく、チームの課題を見つけて働きやすくするための調査である」という目的をしっかりと説明し、匿名性を守ることが鉄則です。

まとめ:見えないものを測ることで、改善の第一歩が踏み出せる

「チームの文化」や「モチベーション」は、何もしなければただの抽象的な概念のままです。しかし、リッカート尺度を使って「数値化」することで、初めて私たちは現状を客観的に認識し、前回と比べて良くなったのか悪くなったのかを議論できるようになります。

「最近、チームの空気が重いな」と感じたら、まずは5問程度の簡単なリッカート尺度のアンケートを作って、チームの現状を可視化(ヘルスチェック)してみてはいかがでしょうか。その小さなデータが、組織を大きく変えるきっかけになるはずです。

1 ニコル・フォズグレン、ジェズ・ハンブル、ジーン・キム(著)、武舎広幸、武舎るみ(訳)『LeanとDevOpsの科学』インプレス、2018年、xxvii頁、41頁より
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