PMBOK第8版を読み解くシリーズ。
今回は、これまで練り上げてきた計画や戦略をベースに、いよいよ実際にプロジェクトを動かしていく「2.1.6.4 プロジェクト実行のマネジメント(Manage Project Execution)」プロセスについて解説します[1]Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 … Continue reading。
プロセス実行の目的:計画を「現実の価値」に変える
このプロセスの最大の目的は、プロジェクトマネジメント計画書で定義された作業をリード(主導)し、実行して、プロジェクトの目標を達成することです。
具体的には、以下のような活動を通じてプロジェクトの作業と成果物を包括的に管理し、成功の可能性を高めていきます。
- チームの知識の結集: チームメンバー全員が集まれば、PM一人よりもはるかに多くの知識と専門性を持っています。プロジェクトの実行を指揮・管理することで、個々のメンバーの知識とスキルを「プロジェクトの目標」という一つのベクトルに合わせます。
- 資源(リソース)の管理と計画の調整: ヒトやモノといった資源を適切に割り当てて効率的に使用し、状況の変化に合わせてプロジェクト計画を微調整していきます。
- 変更の実装: プロジェクトにはトラブルや変更要求がつきものです。承認された是正措置や欠陥修正(ディフェクト・リペア)を、実際の作業に組み込んで軌道修正を図ります。
「作業パフォーマンス・データ」から始まる改善のループ
プロジェクトを実行して作業を進めると、そこからさまざまな「生の事実・データ」が生まれます。これをPMBOKでは「作業パフォーマンス・データ(Work performance data)」と呼びます。
例えば、「タスクAは80%完了した」「今週はコストがこれだけかかった」「バグが3件発生した」といった事実です。
このプロセスで収集された作業パフォーマンス・データは、そのまま放置されるわけではありません。分析のために「監視・コントロール」のフォーカス・エリアへと引き渡されます。
データが分析されることで現在の進捗状況が明確になり、さらに「今回はここが上手くいかなかったから次はこうしよう」という「教訓(Lessons learned)」のフィードバックとして、将来の作業を改善するための起点となります。
実行フェーズにおける「品質」の考え方
プロジェクトを実行して成果物を作り出す際、切っても切り離せないのが「品質マネジメント」です。PMBOK第8版では、品質を以下の2つの側面から管理すべきだとされています。
- プロセスの品質(Quality Assurance / 品質保証): 「正しい手順やプロセスで作業が行われているか?」を保証するもの。(※次回のプロセスで詳しく解説されます)
- 成果物の品質(Quality Control / 品質管理): 「出来上がったモノが、要求を満たしているか?」を確認するもの。
この「プロジェクト実行のマネジメント」の段階では、特に後者に焦点を当てます。
成果物が、計画時に定めた「スコープ・ベースライン(合意済みの要件)」に従って正しく生産されているかを常に意識しながら実行をリードすることが求められます。
なお、適応型(アジャイル)アプローチの場合、この基準となるベースラインは「優先順位付けされた要件」や「スプリント・バックログ」といった柔軟な形をとります。
まとめ:PMは「オーケストラの指揮者」である

PMBOK第8版では、このプロセスにおけるプロジェクトマネージャー(PM)の役割を、単に「作業を指示・命令する人」とは定義していません。
PMは、幅広いプロジェクトのエコシステムの中で、技術的な活動とチームの人間的な活動を調和させる「オーケストラの指揮者」のような役割を果たすべきだと強調しています。
一人ひとりのプロフェッショナル(演奏者)の能力を最大限に引き出し、バラバラの音を「プロジェクトの目標(楽曲)」という一つの価値ある成果にまとめ上げる。
それこそが、「プロジェクト実行のマネジメント」におけるPMの真骨頂です。
注
| ↑1 | Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 セクション2.1.6.4(21-22頁)より筆者要約・翻訳。以下、PMBOK第8版(英語版)と略記。 |
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