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【PMBOK第8版】予測型プロジェクトの命綱!「エスカレーション」と「投資コントロール」の極意

PMBOK第8版の「ガバナンス・パフォーマンス領域」では、プロジェクト全体を統治する仕組みを学んできました。

今回はその中でも、予測型(ウォーターフォール)のプロジェクト環境において、追加で必要となる2つの重要なガバナンス要素について解説します。

初期に綿密な計画を立て、多額の投資を伴うことが多い大規模な予測型プロジェクトでは、いざという時の「命綱」と「お金の関所」をあらかじめ設計しておくことが不可欠です。

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このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

予測型で追加される2つのガバナンス要素

予測型で追加される2つのガバナンス要素

PMBOK第8版(2.1.4 予測型環境における追加の考慮事項)では、以下の2つが挙げられています[1]出典:Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 … Continue reading

エスカレーション (Escalation)

プロジェクトチームの権限では解決できない問題や意思決定を、上位の役職者(スポンサーや経営層)に引き上げる(エスカレーションする)仕組みです。
階層的な組織において、上位陣が介入して根深い障害を取り除いたり、部門間の対立を解決したりすることで、プロジェクトの成功確率をグッと引き上げます。

投資コントロール (Investment control)

プロジェクトの投資資金に対する「管理責任(スチュワードシップ)」を果たす仕組みです。
融資を受けて行う建設プロジェクトや、政府機関・金融機関のシステム開発などでよく見られます。設計や開発の各フェーズの間に明確な「意思決定ポイント(フェーズ・ゲート)」を設け、次の段階へ資金を投入することが「ビジネスとして本当に理にかなっているか」を厳しくチェックします。

【SSAITSの視点】エスカレーションは「緊急連絡網」ではない

これまでお話してきたとおり、「いざという時に誰に助けを求めるか(エスカレーション)」と「段階的にお金の使い道を厳しくチェックする関所(投資コントロール)」は、予測型プロジェクトの両輪です。

しかし、実務において非常に多くの組織が陥っている「エスカレーションの罠」があります。それは、エスカレーション・ルートを単なる「緊急連絡網」や「困った時の相談窓口」としてしか捉えていないことです。

定期的な対話がないと「ちゃぶ台返し」が起きる

「普段は全く報告を入れず、大炎上してどうしようもなくなってから、突然上位の役職者にエスカレーション(SOS)をする」。
これでは、呼ばれた上位陣も「いきなりそんなことを言われても困る」「そもそも今どういう状況なのか分からない」とお手上げになってしまいます。

さらに恐ろしいのは、状況を正しく把握していない上位陣が、場当たり的な指示を出し、これまで現場が積み上げてきたものを根底から覆してしまう「ちゃぶ台返し(二次被害)」が起きることです。

エスカレーションの仕組みを本当に機能させるためには、ルートを決めるだけでなく、その担当者(スポンサーなど)と日常的・定期的にコミュニケーションを取り、プロジェクトの「文脈」を共有しておくことが絶対条件なのです。

「投資コントロール」の厳しい決断を下すために

この「文脈の共有」は、もう一つの要素である「投資コントロール」にも密接に関わってきます。

投資コントロールの関所で、「このまま進めても採算が合わない(価値が出ない)」という厳しい判断が下されることがあります。前回の記事で紹介した「否定的な理由による早期終了(プロジェクトの中止)」です。

このような重大な判断を下し、組織全体に波及させるためには、強力なエスカレーションが必要になります。
もし、上位の意思決定者と日頃からコミュニケーションが取れていなければ、損切りすべきタイミングで「誰も中止の決断を下せない(責任を取りたくない)」という最悪の事態に陥り、無駄な投資が垂れ流されることになります。

まとめ

予測型プロジェクトにおいて、ガバナンス体制図に「エスカレーション先」の矢印を引いただけで安心してはいけません。

  • エスカレーションの道筋(パス)を明確にする
  • そのパスを使って、日頃から定期的に対話と状況共有を行う
  • いざ投資コントロールの関所で「中止」や「大幅変更」の判断が出た際、迅速かつ効果的に上位陣に動いてもらう

この滑らかな連携を作ることこそが、真の意味での「ガバナンスを効かせる」ということなのです。

1 出典:Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 セクション2.1.4(13頁)より筆者要約・翻訳。以下、PMBOK第8版(英語版)と略記。
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