最新のPMBOK第8版学習シリーズ。今回は「Section 4 プロジェクト・ライフサイクル(Project Life Cycles)」の全体像を見ていきましょう。
これまでの章では「価値」や「原則(マインドセット)」といった根本的な考え方を学んできましたが、このセクションからは「実際にプロジェクトを最初から最後までどう進めていくか」という、実務的なフレームワーク(骨組み)に踏み込んでいきます。
特に、第7版で「具体性が足りない」と感じていた実務家にとって、今回のアップデートは非常に喜ばしい内容になっています。
プロジェクト・ライフサイクルとは「一生の道のり」
プロジェクト・ライフサイクルとは、プロジェクトが開始から終了(クローズ)までに通過する一連の活動やフェーズのことです。
システム開発でも、Webサイト制作でも、あるいは大規模な建設プロジェクトでも、どんな手法(アプローチ)をとるにせよ、プロジェクトには必ず「始まり」から「終わり」までの道のりが存在します。
第8版では、このライフサイクルを以下の「5つの要素」で構成しています[1]出典:Project Management Institute, Inc., A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, … Continue reading。
1. プロジェクト・フェーズ(Project phases)
プロジェクトを論理的に区切った「段階」のことです(例:要件定義、設計、開発、テスト)。
2. プロジェクト開発アプローチ(Project development approaches)
プロジェクトをどう進めるかの基本方針です。
- 予測型: いわゆるウォーターフォール。
- 適応型: いわゆるアジャイル。
- ハイブリッド型: 予測型と適応型のいいとこ取り。
3. アプローチ選択のための考慮事項(Considerations for selecting)
「なぜそのアプローチを選ぶのか?」という基準です。不確実性の高さや、技術の習熟度、組織の文化などから最適な方法を判断します。
4. デリバリー・ケイデンス(Delivery cadence)
成果物を提供する「ペースや頻度」のことです。一括で出すのか、段階的に出すのか、あるいは継続的に出し続けるのかを決めます。
5. プロジェクトマネジメントのフォーカス・エリア(Focus Areas)
かつてのPMBOK(第6版以前)で「プロセス群」と呼ばれていたものが、時代に合わせて柔軟に再定義され、復活しました。
待望の「フォーカス・エリア」の復活
今回のセクション4における最大のトピックは、間違いなく第5の要素である「フォーカス・エリア(Focus Areas)」の登場でしょう。
実は、前バージョンの第7版では「プロセス群(立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結)」という分類が表舞台から消えていました。その結果、多くのPMが「概念はわかるけれど、具体的に今、何をすべきか?」という判断に迷い、「PMBOKが哲学書になってしまった」と囁かれたこともありました。
第8版では、これらが「フォーカス・エリア(注力領域)」として整理され、ライフサイクルのどこで何に集中すべきかが明確に示されています。これは「原理原則(第3章)」という土台の上に、具体的な「動き方」というメカニズムが再構築されたことを意味します。
まとめ:自分のプロジェクトの「型」を決めよう
プロジェクト・マネジャーの重要な仕事の一つは、プロジェクトが始まる前に、これら5つの要素を組み合わせて「自分たちのライフサイクル(型)」を設計することです。
「このプロジェクトは不確実性が高いから『適応型』アプローチを選び、月1回の『ケイデンス』で成果物を出し、初期は『計画』のフォーカス・エリアに比重を置こう」
このように、場当たり的ではなく論理的にプロジェクトの道のりを設計できるかどうかが、成功への分かれ道となります。
次回からは、これら5つの要素を一つずつ深掘りして解説していきます。
注
| ↑1 | 出典:Project Management Institute, Inc., A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 57頁より筆者要約・翻訳。以下、PMBOK第8版(英語版)と略記。 |
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