【PMBOK第8版】チームのパフォーマンス評価とは?迷走を防ぐ「指標」の見つけ方

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山脇 弘成(SSAITS(サイツ)代表)

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個人よりもはるかに難しい「チーム」の評価

メンバー「個人」の評価基準を定めるだけでも非常に難しいのに、それが「チーム全体」の評価となると、難易度はさらに跳ね上がります。

評価というものは非常に恐ろしい側面を持っています。評価の指標を一つ間違えると、メンバーは「評価される項目(自分の成績に直結すること)」にしか注目しなくなり、それ以外の見えないサポート業務や助け合いがおろそかになってしまいます。その結果、チーム内で足の引っ張り合い(部分最適)が起き、組織自体が迷走してしまう……といった事態は、多くのプロジェクトマネージャーが経験しているはずです。

今回は、PMBOK第8版における「チームのパフォーマンス評価」の考え方を整理しつつ、組織を迷走させないための「評価指標の選び方」について、私の実体験を交えて解説します[1]Project Management Institute『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第8版』日本語版、第2部 … Continue reading

PMBOK第8版が定義する「チームのパフォーマンス評価」

PMBOK第8版が定義する「チームのパフォーマンス評価」

PMBOK第8版において、「チームのパフォーマンス評価(Team Performance Assessments)」は、「チームのリード」プロセスの主要なアウトプット(成果物)として正式に定義されています。

これは単なる精神論やPMの直感による評価ではありません。トレーニングやチームビルディングといった施策を実施した際、「チーム全体の有効性」を正式または非公式に評価・測定する活動です。

目的は、いま行っているチーム育成戦略が実際に機能しているかを確認し、さらなるパフォーマンス向上に必要な追加のサポート(教育や環境の改善)を特定することにあります。

チームの有効性を測る4つの主要評価指標

では、具体的に何をもって「チームが成長している(有効性が高い)」と判断するのでしょうか。PMBOK第8版では、客観的に評価するための指標として主に以下の4つの変化・向上を定めています。

  1. スキルの向上: 個々のメンバーが、自分に割り当てられたタスクをより効果的・効率的に遂行できるようになっているか。
  2. コンピテンシーの向上: 個人技だけでなく、チーム全体として連携・協働してパフォーマンスを発揮するための能力(パワー・スキルなど)が高まっているか。
  3. スタッフ離職率の低減: モチベーションや心理的安全性の向上により、メンバーの途中離脱や離職が抑えられているか。
  4. チームの結束力の強化: メンバー同士が情報をオープンに共有し、互いに助け合ってプロジェクト全体のパフォーマンスを向上させる文化が醸成されているか。

評価の目的は「次のアクション」に繋げること

これらの評価を実施した結果は、「良い・悪い」とスコアをつけて終わりではありません。
アセスメント結果に基づき、不足している能力に対して「具体的なトレーニング」を特定したり、改善策を実行するための「追加予算や外部専門家(資源)」を調整したりと、チームを次の成長フェーズへ進めるための具体策(アクション)に繋げます。

その他のツールと「結果のチェック」の連動

チームを評価・アセスメントするためのツールとしては、態度調査(意識調査)や構造化インタビュー、能力テストなどが用いられます。

また、PMBOKの「結果のチェック」の項目では、ハイパフォーマンスなチームが整っているかを確認する指標として、以下のような項目も挙げられています。

  • 生産性: 作業時間に対する成果物の比率などが、許容水準にあるか。
  • KPIの定期レビュー: チームのパフォーマンス指標(KPI)が定期的にチェックされているか。
  • 相互の信頼と適応力: メンバー同士が信頼し合い、不確実性に直面しても高い回復力(レジリエンス)を発揮できているか。

指標の罠:評価されることしかやらなくなる

指標の罠:評価されることしかやらなくなる

さて、ここまでPMBOKが提示する様々な評価の観点を見てきましたが、ここで実務における非常に重要な注意点に触れたいと思います。

前述の通り、チームのパフォーマンス評価は一歩間違えると組織を崩壊させます。
たとえば、ソフトウェア開発のチームにおいて「書いたコードの行数」や「完了させたタスクの数」を評価指標に設定したとします。するとどうなるでしょうか?メンバーは自分が評価されるために、他の人が困っていても助けず、ひたすら自分のタスクだけをこなすようになります。これは深刻な部分最適(チームとしての機能不全)です。

参考にしたい『LeanとDevOpsの科学』の指標

こうした迷走を防ぐためには、こまごまとした個人の作業量を評価するのではなく、「チーム全体で目指すべき、大局的な指標」を設定する必要があります。

ソフトウェア開発において、この「正しい指標」と「間違った指標」を科学的に証明してくれているのが『LeanとDevOpsの科学』という書籍です。
チームが本当に高いパフォーマンスを出せているかを測るためには、以下の記事で解説している「4つの指標(Four Keys)」が非常に参考になります。

逆に、「これだけは絶対に評価軸にしてはいけない」という危険な指標についても解説していますので、ぜひあわせてご確認ください。

まとめ:「上手くいっていれば、ここが上がるはずだ」を見つける

PMBOKでも「相互の信頼」や「結束力」といった指標が挙げられていますが、これを正確に数値化するのは至難の業です。
だからといって、安易に「個人のタスク完了数」などの分かりやすい数字に逃げてしまうと、チームはあっという間にバラバラになってしまいます。

チームのパフォーマンス評価において最も大切なことは、細かな数字をかき集めることではありません。
「もし私たちのチームのコミュニケーションが円滑で、助け合いが上手くいっているのであれば、結果として『この指標』が上がるはずだ(デプロイ頻度が上がる、バグの発生率が下がる、など)」という、シンプルかつ本質的な一つの指標を見つけ出すことです。

もちろん、自社のプロジェクトに合った完璧な指標を見つけるのは簡単ではありません。しかし、その「正しい物差し」を探し続けること自体が、チームを正しい方向へと導くリーダーシップの第一歩になるはずです。

1 Project Management Institute『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第8版』日本語版、第2部 2.6.2.4「チームのリード」(84〜86ページ)、第2部 2.6.5「結果のチェック」(91〜92ページ)、用語集(253ページ)より要約・引用。
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