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【PMBOK第8版】「早くスケジュールを出せ!」への防衛術|スケジュール領域と他領域との相互作用

PMBOK第8版の「スケジュール・パフォーマンス領域」を読み解くシリーズ。今回は「2.3.4 他の領域との相互作用(Interactions With Other Domains)」について解説します[1]Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 … Continue reading

プロジェクトにおけるスケジュール(タイムライン)は、単独で存在するものではありません。他のすべてのパフォーマンス領域と深く結びつき、絶えず影響を及ぼし合っています。

目次
このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

スケジュールと他の領域の密接な関係

スケジュールと他の領域の密接な関係

PMBOKでは、スケジュールが他の領域とどのように連動しているかを以下のように説明しています。

スコープ・財務との連動(トリプル・コンストレイント)

「スケジュール(期間)」「スコープ(作業範囲)」「財務(コスト)」は最も密接にリンクしています。要件(スコープ)が増えればスケジュールは延び、スケジュールを短縮しようとすればリソース(コスト)が余分にかかります。これら3つの要素は、1つが動けば必ず他の2つに影響を与える関係にあります。

ステークホルダー・資源・リスクとの連動

スケジュールは、ステークホルダーの期待値(いつリリースされるのか)、利用可能なリソース(誰がいつ稼働できるか)、そして潜在的なリスク(遅延要因)と間接的かつ絶えず連動し、バランスを維持しています。

ガバナンスによる統制

これらすべての領域がバラバラに動いてプロジェクトが崩壊するのを防ぐため、スケジュールの変更などは「ガバナンス・パフォーマンス領域(変更管理委員会など)」の枠組みの下で慎重に統制されます。

【SSAITSの視点】『人月の神話』に学ぶスケジュールの崩壊

人月の神話

この「相互作用」という言葉、綺麗に聞こえますが、実務の現場では「負の連鎖」として襲いかかってくることがよくあります。

ソフトウェア開発の古典的名著である『人月の神話』でも語られているように、プロジェクトのスケジュールが一度遅延したり混乱したりすると、その立て直しは至難の業です。

スケジュールが遅れると、財務(追加コスト)を圧迫し、ステークホルダー(顧客や経営陣)の不満が爆発します。そのプレッシャーから急いで人員(リソース)を追加すると、引き継ぎの手間やコミュニケーション・ロス(リスク)が発生し、結果的にさらにスケジュールが遅延する……という恐ろしい悪循環(相互作用)に陥るのです。

だからこそ、正確なスケジュールを立てるためには、スコープやリソースといった「他の領域の情報」をしっかりと確定させていく必要があります。

「とりあえず早くスケジュールを出せ!」への防衛術

「とりあえず早くスケジュールを出せ!」への防衛術

しかし現実には、プロジェクトの初期段階(要件すら固まっていない不確実な状態)で、経営陣や顧客から「いつ終わるんだ?早くスケジュールを出せ!」と厳しく要求されることが多々あります。(特に日本の請負文化などでは頻繁に発生します)

本来、正確なスケジュールは計画段階の終盤でしか分かりません。こうした「無茶振り」に対して、プロマネはどのように立ち向かえばよいのでしょうか。

以下の2つの防衛術(交渉術)を使い分けましょう。

防衛術①:「概算」であることを強く明言して出す

どうしても今すぐ出せと言われた場合は、「現時点では他の領域(要件やリソース)が確定していないため、あくまで変更する可能性が高い『概算スケジュール』である」ということを明確に宣言し、リスクを共有した上で提出します。絶対に「これで確定です(約束します)」と言ってはいけません。

防衛術②:デッドラインを固定し「スコープ(MVP)」を絞る

「○月○日の展示会に間に合わせたい」など、デッドライン(期限)が絶対に動かせない場合は、「わかりました。その期限までに確実に終わらせるため、今回は『必要最小限の機能(MVP)』に絞ってスケジュールを組みます」と交渉します。
期限(スケジュール)を固定する代わりに、スコープ(作業範囲)を削ることで、トリプル・コンストレイントのバランスを取るのです。

まとめ

スケジュールは、プロジェクト全体の状況を映し出す鏡です。
他の領域から影響を受け、また他の領域へ影響を与えます。

初期段階でのスケジュールの握り方を間違えると、プロジェクトは最後まで苦しむことになります。他領域との関係性を理解し、「不確実なものは不確実である」とステークホルダーと適切に交渉しながら、実現可能なスケジュールを構築していきましょう。

1 Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 セクション2.3.4(57-58頁)より要約・翻訳。以下、PMBOK第8版(英語版)と略記。
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