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【PMBOK第8版】プロジェクトの終結〜予測型こそ「振り返り」でナレッジを蓄積せよ

PMBOK第8版のガバナンス・パフォーマンス領域を読み解くシリーズ。いよいよこの領域の最後、9つ目のプロセスとなる「2.1.6.9 プロジェクトやフェーズの終結(Close Project or Phase)」について解説します[1]Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 … Continue reading

プロジェクトの終結は、単に「作業が終わったから解散する」というものではありません。プロジェクトが成功したか失敗したか(早期終了したか)に関わらず、すべての活動を正式に完了させ、得られた価値や知識を組織に定着させ、次のプロジェクトへバトンを渡すための非常に重要なプロセスです。

以前採り上げた「変更の評価と実装」と同様に、この終結プロセスも「予測型アプローチ(ウォーターフォール)」と「適応型アプローチ(アジャイル)」で、実施すべき活動が明確に区別されています。

目次
このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

予測型(Predictive)アプローチにおける終結

予測型プロジェクトの終結では、プロジェクトマネージャーはプロジェクトマネジメント計画書を見直し、すべての作業が完了し、目標が達成されたことを確認します。主に以下の3つの活動が含まれます。

予測型アプローチでの活動
  1. 完了基準(エグジット基準)の充足:
    すべての文書と成果物が更新され、課題が解決されているかを確認します。顧客による正式な「受け入れ(検収)」を確認し、プロジェクトの価値が運用(オペレーション)フェーズへと引き継がれる準備を整えます。また、コストの精算や余剰資材の処理を行い、プロジェクト・チームのリソース(要員や設備)を解放します。
  2. 契約上の合意の完了(調達の終結):
    外部のベンダー等から調達した作業の正式な受け入れを確認し、未解決のクレーム処理や請求書の支払いなど、契約関係をすべてクローズさせます。
  3. 追加の終結活動:
    プロジェクトの成功・失敗を評価し、ステークホルダーの満足度を測定します。そして、教訓(Lessons learned)を特定して文書化し、将来の組織利用のためにアーカイブします。
    ※途中で中止(早期終了)されたプロジェクトであっても、その理由を調査し文書化することが求められます。

適応型(Adaptive)アプローチにおける終結

適応型アプローチでは、プロジェクト全体の終結だけでなく、「リリース」や「イテレーション(スプリント)」という短いサイクルごとの終結活動に焦点が当てられます。

適応型アプローチでの活動
  1. リリースまたはイテレーションの完了:
    優先順位付けされたバックログが終了し、あらかじめ定めた「完了の定義(Definition of Done)」がすべて満たされているかを確認します。成果物がステークホルダーによってレビューされ、受け入れられたかを確認します。
  2. 知識の移転とレトロスペクティブ(振り返り):
    チーム間で洞察や情報を共有し、イテレーションやリリースを振り返るための「レトロスペクティブ」を開催します。ここで教訓と将来の作業における改善の機会を特定し、残存するリスクを次のイテレーションにどう引き継ぐかを議論します。

【SSAITSの視点】予測型こそ「振り返り(反省会)」を怠るな

【PMBOK第8版】プロジェクトの終結〜予測型こそ「振り返り」でナレッジを蓄積せよ

今回のプロセスで特に注目したいのは、プロジェクト終了後の「振り返り」の扱いです。

適応型(スクラム開発など)の場合、短いサイクルで「レトロスペクティブ(振り返り)」を行うことが最初からフレームワークに組み込まれているため、教訓の共有やプロセスの改善が自然に行われます。

しかし、予測型プロジェクトでは、この振り返りの機会が極めて希薄になりがちです。
長期間にわたる過酷なプロジェクトであればあるほど、成果物を顧客に納品した瞬間に「終わった!」「早く次の案件に行こう!」という意識が強くなり、「納品して終わり」になってしまうケースが散見されます。

これでは、プロジェクトを通じて得られたノウハウや、「なぜあの時トラブルが起きたのか」という貴重な教訓が、個人の頭の中(暗黙知)に残るだけで、組織のナレッジとして定着しません。結果として、「組織のプロセス資産(OPA)」が蓄積されず、会社全体としてのプロジェクトマネジメントのレベルアップに繋がらないのです。

予測型のプロジェクトであっても、いや、予測型で長期間苦労を共にしたプロジェクトだからこそ、終結時には必ず「反省会」や「振り返り」の場をしっかりと設けることが大切です。

まとめ

プロジェクトの終結は、「終わり」ではなく、組織の未来に向けた「新たな始まり」への準備です。

リソースを綺麗に解放し、得られた価値を確認し、何よりも「失敗と成功の教訓」を組織の資産としてアーカイブすること。これらをやり遂げて初めて、プロマネの仕事は本当の意味で完了すると言えるでしょう。

1 Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 セクション2.1.6.9(30-33頁)より筆者要約・翻訳。以下、PMBOK第8版(英語版)と略記。
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