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【PMBOK第8版】QAとQCの違いとは?「品質保証のマネジメント」でプロセスを磨く

PMBOK第8版のガバナンス・パフォーマンス領域を読み解くシリーズ。今回は、5つ目のプロセスである「2.1.6.5 品質保証のマネジメント(Manage Quality Assurance)」について解説します[1]出典:Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 … Continue reading

これまで、プロジェクトマネジメントにおいて「品質」といえば、納品物や最終的なプロダクトにバグや欠陥がないかを確認すること(=品質コントロール)が重視されがちでした。

しかし、PMBOK第8版では、品質という概念を「成果物」と「プロセス」の2つに明確に切り離し、特にプロジェクト全体を統治するガバナンス領域において、この「品質保証(プロセスの品質)」を非常に重要なプロセスとして位置づけています。

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このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

「品質保証(QA)」と「品質コントロール(QC)」の違い

プロジェクトマネジメントにおいて、「品質保証」と「品質コントロール」は全く異なる2つの取り組みです。PMBOKでは以下のように明確に区別されています。

品質保証(QA: Quality Assurance)

  • 焦点:プロジェクトの「プロセス」
  • 組織の標準やルールに従って、正しい手順で作業が行われているかを確認・改善する活動です。規制、コンプライアンス、監査といった概念が含まれます。
  • 「このやり方で作っていけば、最終的に必ず期待通りのものができる」というステークホルダーへの保証(自信)を生み出します。

品質コントロール(QC: Quality Control)

  • 焦点:プロジェクトの「成果物」
  • 作られた成果物が、定義された仕様や要件を満たしているかを確認する活動です。プロダクト設計、テスト、欠陥(バグ)の発見と修正といった概念が含まれます。

【SSAITSの視点】品質は「納品前のテスト」では作られない

【SSAITSの視点】品質は「納品前のテスト」では作られない

前バージョンのPMBOK第7版などでは、「デリバリー(納品)」という領域が単独で存在し、そこで品質が語られる傾向がありました。しかし、第8版では品質の概念がスコープや実行プロセス、そして今回のガバナンス領域へと大きく分散・統合されています。

なぜこのような変化が起きたのでしょうか?
それは、「品質というのは、納品前の最後のチェック(QC)だけで決まるのではなく、プロジェクトのプロセス全体を通じて作り込まれるものである」という本質的な発想に至ったからだと私は考えています。

ソフトウェア工学の権威であり、CMM(能力成熟度モデル)の父と呼ばれるワッツ・ハンフリーは、次のような有名な言葉を残しています[2]CMM/CMMIの父と呼ばれるワッツ・ハンフリーの著書『Managing the Software … Continue reading

「ソフトウェア・システムの品質は、それを開発し保守するために使用されるプロセスの品質によって決定される」

どんなに最後に一生懸命テスト(QC)をしても、そもそもの要件定義がズレていたり、コーディングのルールがバラバラであったりする「低品質なプロセス」からは、決して高品質なプロダクトは生まれません。
品質を保つためには、「そもそもどのようにしてプロジェクトを動かしていくべきか(プロセスの品質)」を考え、改善し続けることが不可欠なのです。

品質保証がプロジェクトにもたらす効果

品質マネジメント計画書で定義された「品質保証」の活動(品質監査や不良分析など)をプロジェクト全体を通じて継続して行うことで、以下のような効果が得られます。

  1. 「自信(Confidence)」の構築:
    正しいプロセスを踏んでいることを証明することで、スポンサーや顧客に対して「将来のアウトプットは間違いなく要件を満たします」という自信と安心感を提供できます。
  2. 効率性と有効性の改善:
    「なぜこのミスが起きたのか?」「この承認フローは無駄ではないか?」とプロセス自体を見直し、効果のない作業を特定して改善することで、チームのパフォーマンスを底上げします。

予測型と適応型におけるアプローチの違い

最後に、開発アプローチによる品質保証の違いに触れておきます。

  • 予測型(ウォーターフォール): 最初から強力な「プロセスの品質」を確立することで、後工程でのトラブル(差異)を最小限に抑えようとします。そのため、品質監査などを公式な形で厳密に実行することが一般的です。時には、外部の監査組織が入ることもあります。
  • 適応型(アジャイル): アジャイルにおいてもプロセスの品質は重要ですが、コンテキスト(状況)に応じて、公式だけでなく非公式な形(日々の振り返りやペアプログラミングなど)で柔軟に品質保証が実行されます。

まとめ

「品質保証のマネジメント」とは、単にチェックリストを埋める事務作業ではありません。

「自分たちの仕事のやり方(プロセス)は、本当に最高の価値を生み出す状態になっているか?」を常に問いかけ、プロセスを磨き上げること。それこそが、最終的なプロダクトの品質を保証し、プロジェクトを成功に導く最大の近道なのです。

1 出典:Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 セクション2.1.6.5(22-24頁)より筆者要約・翻訳。以下、PMBOK第8版(英語版)と略記。
2 CMM/CMMIの父と呼ばれるワッツ・ハンフリーの著書『Managing the Software Process』(1989年)に由来し、現在のCMMIの根本的な前提となっている言葉。原文は”The quality of a software system is governed by the quality of the process used to develop it.”。
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