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【PMBOK第8版】待望の復活!プロジェクトマネジメント計画書と「計画の最適化」の新常識

PMBOK第8版のガバナンス・パフォーマンス領域を読み解くシリーズ。今回は、プロジェクト全体のマスタープランを作り上げるプロセス「2.1.6.2 プロジェクト計画の統合と整合(Integrate and Align Project Plans)」について解説します[1]Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 … Continue reading

「立ち上げ(プロジェクト憲章の作成)」で承認された大枠の方向性をもとに、具体的に「どうやってプロジェクトを進めていくか」を1つの包括的な計画書にまとめる、非常に重要なステップです。

今回の第8版アップデートにおいて、実務家が最も注目すべきポイントは、「プロジェクトマネジメント計画書」が待望の復活を遂げたという点にあります。

目次
このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

なぜ今、プロジェクトマネジメント計画書が復活したのか?

なぜ今、プロジェクトマネジメント計画書が復活したのか?

PMBOK第6版までは、「最初に完璧なプロジェクトマネジメント計画書を作ることが、プロジェクト成功の確率を高める」という計画主義の考え方が主流でした。

しかし、変化が激しく不確実な現代において、最初に作った詳細な計画がその通りに実行できることは稀です。そのため、前バージョンの第7版では、この計画書の重要性が一気に鳴りを潜め、より哲学的な「原理原則」へとシフトしました。

ですが、ここに大きな罠がありました。

計画書の影が薄くなった結果、現場では「先の見通しを全く考えない無計画な状態」を、都合よく「アジャイルだから」と言い訳するプロジェクトが乱発してしまったのです。その結果、多くのプロジェクトが行き先を見失い、失敗・炎上していきました。

「やはり、プロジェクトにはある程度の『計画(地図)』が必要だ」。PMI(PMBOKの発行母体)もこうした世界の現状を受け、第8版でプロジェクトマネジメント計画書を再び重要なプロセスとして復活させたのだと考えられます。

第8版の計画書は「ガチガチ」ではない

ただし、復活したプロジェクトマネジメント計画書は、第6版までの「一度決めたら変えないガチガチの計画」とは大きく異なります。第8版では、以下の特徴が強調されています。

PMBOK第8版のプロジェクトマネジメント計画書の特徴
  • 段階的詳細化(Progressive elaboration): 最初にすべてを決めるのではなく、プロジェクトが進んで新しい情報が手に入るたびに、計画を徐々に洗練・詳細化していく柔軟なアプローチをとります。
  • 多様なドキュメント形式: チームやステークホルダーが納得できる意思決定の枠組みであれば、「プロジェクト実行計画書」や「開発計画書」など、名称や形式は組織に合わせてカスタマイズして構いません。
  • 計画にかける時間の最適化: これが最も重要なポイントです。「計画作成にどれだけの時間をかけるべきか」は、プロジェクトの複雑さによって最適化されるべきです。必要以上に詳細に作り込みすぎて時間を無駄にしてはいけない、と明記されています。

【SSAITSの視点】「1日単位のガントチャート」を捨て、変化の余白を作る

【SSAITSの視点】「1日単位のガントチャート」を捨て、変化の余白を作る

「計画にかける時間の最適化」とは、実務において具体的にどういうことでしょうか。私の実体験をご紹介します。

かつて私は、スケジュールを設計する際、1日単位でタスクを詳細化し、ガントチャートをギチギチに埋め込んでいました。
例えば、「4/5〜4/10は〇〇の作業」「4/20に確認をする」というような形です。

しかし、不確実性の高い現代のプロジェクトにおいて、このような細かい線引きはまず履行されません。1つの遅れがドミノ倒しのように後ろに響き、PMは毎日ガントチャートの修正作業(価値を生まない時間)に追われることになります。

そこで最近の私は、あえてスケジュールを少し抽象化し、期間と変化に対応できる「余白」を持たせるように最適化しています。

例えば、「4/5〜4/20の間に〇〇の作業を完了させる」と枠だけを決めておきます。そして、「想定より早く終わったから、スケジュールを調整して4/12に確認をしよう」というように、現場の状況に合わせて柔軟に運用を切り替えるのです。

予定(大枠の地図)はしっかりと組みながらも、細部をガチガチに固定するための時間を使わない。これこそが、第8版の言う「計画にかける時間の最適化」のリアルな実践方法です。

計画を包括的に組み上げる3つのステップ

計画を包括的に組み上げる3つのステップ

このプロセスでは、バラバラに作られた個別計画を以下の3ステップで1本の美しい筋へと統合していきます。

  1. 土台(開発アプローチ)の決定: プロジェクト開始時に、今回はウォーターフォール(予測型)で行くのか、アジャイル(適応型)で行くのか、そのライフサイクルとルールを決定します。
  2. 各領域へのインプット: 決定したアプローチを方針として、スコープ、スケジュール、財務、リスクなど、他のすべての領域の計画作業に展開(ガイド)します。
  3. 統合と整合性の検証: 各領域で作成された個別計画をこの「プロジェクトマネジメント計画書」に集約し、「スケジュールの期限に対して、リソースや予算は足りているか?」といった矛盾がないかを検証(アライン)します。

💡 プロセスを構成する要素(ITTO)

  • インプット: プロジェクト憲章、他のプロセスからのアウトプットなど。
  • ツールと技法: 専門家の判断、ファシリテーション、プロジェクト・キャンバスなど。
  • アウトプット: プロジェクトマネジメント計画書

まとめ:無計画でも、ガチガチでもない「正確な地図」を持とう

「プロジェクト計画の統合と整合」は、単なる書類仕事ではありません。

それは、バラバラのパーツ(予算、スコープ、人員)を組み合わせて、プロジェクト全体に一本の筋を通す作業です。

無計画に突っ走る「自称アジャイル」でもなく、変化を拒絶する「過去のウォーターフォール」でもない。常に目的(価値)を見据え、状況の変化に合わせてアップデートしていける「生きた地図(プロジェクトマネジメント計画書)」を、最適化された時間で作り上げましょう。

1 Project Management Institute, Inc., The Standard for Project Management and A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Eighth Edition, 第2部 セクション2.1.6.2(18-19頁)より筆者要約・翻訳。以下、PMBOK第8版(英語版)と略記。
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