
仕事のプロジェクトを進めていると、必ずと言っていいほど「予想外の出来事」や「アクシデント」に直面します。多くのビジネスパーソンは、これを「計画の失敗」と捉えてネガティブに受け止めがちです。
しかし、世界最高のデザイン・ファーム「IDEO」は、そうした「予期せぬ出来事」を排除するのではなく、むしろ歓迎し、大成功への足がかりとして活用しています。
今回は、トム・ケリーの著書『発想する会社!』の第8章「予想外のことを予想する」から、偶然やアクシデントをイノベーションの源泉に変えるための視点とアクションをご紹介します。
アクシデント(偶然)を成功に結びつける
歴史を振り返ると、画期的なイノベーションは、事前の完璧な計画からではなく「思いがけない偶然」や「失敗」から生まれることが多々あります。サッカリンやアイボリー石鹸、マジックテープなどは、すべて偶然の発見から大成功を収めました。
IDEOの現場でも、この「偶然のひらめき」が何度もブレイクスルーを生んでいます。
例えば、初代アップル製マウスの開発中、マウス内のボールをスムーズに動かす機構に行き詰まっていたチームのメンバーは、たまたま「バター皿の裏側のくぼみ」を見て解決策を閃きました。
また、メンバーが遊びで「水風船」を飛ばすために作った仕掛けが、後にノートパソコンの画面を閉じるためのラッチ(留め具)の機構に応用されたこともありました。
計画外の遊びや、一見無関係な日常の風景の中にこそ、難題を突破するヒントが隠されているのです。
消費者の「予想外の使い方」に敏速に対応する
新製品を世に出したとき、消費者が企業側の想定とは全く違う「予想外の使い方」をすることがあります。この時、「本来の用途と違う!」と否定するのではなく、それに敏速に対応する柔軟性がイノベーションを生みます。
例えば、ポラロイド社のカメラ「アイゾーン」は、当初「画質が粗くカメラ本体も大きい」という弱点を抱えていました。しかし、「シール状の小さな写真がプリントされる」という機能が、開発側の意図とは別に10代の若者に予想外の大ウケをし、結果的に大ヒット商品となりました。
企業は自社の製品がどう使われるかを完全に予測することはできません。だからこそ、顧客が独自の新しい使い方を発見した時に、その波にいち早く乗る姿勢が重要です。
他業界の技術やアイデアを「流用」する
自分の業界の常識や「いつものやり方」に囚われていては、画期的な解決策は生まれません。行き詰まった時は、全く別の分野からアイデアを借りてくる(流用する)のが一番の近道です。
IDEOのオフィスには「テック・ボックス」と呼ばれる、様々な業界の面白い素材や部品、メカニズムを集めたおもちゃ箱のようなものがあり、ここから他業界のアイデアを積極的に「流用(パクる)」ことが推奨されています。
例えばIDEOが、自転車用のウォーターボトル(走りながら片手で飲むボトル)を開発した際のこと。彼らは「医療用のバルブ技術」を応用することで、「手で強く握ったときだけ水が出て、離すとピタッと止まる」という画期的な飲み口を完成させました。
自転車業界の中で答えを探し続けていたら、この画期的なアイデアには永遠に辿り着かなかったでしょう。
予想外のヒントを見つけるための「5つの行動」

ただ待っているだけでは、良いアクシデントは舞い込んできません。同書では、予想外のインスピレーションを自ら引き寄せるためのヒントとして、以下の行動を勧めています。
- 映画監督になる: 日常の風景や人々の行動を、映画のワンシーンのように注意深く観察し、「なぜ彼らはそう動くのか?」と背景にある理由を考える。
- 一般公開する: 完璧に仕上がるまで隠すのではなく、未完成なプロトタイプを早めに公開し、多くの人から予想外のフィードバックをもらう。
- さまざまな声に耳を傾ける: 自分とは異なる視点を持つ人の意見を、「素人の意見だ」と無視せず真剣に受け止める。
- アウトサイダーを雇う: 業界の常識に染まっていない異業種の人や、全く別の分野の専門家をチームに引き入れる。
- ちがう人間になってみる: 自分自身が顧客の立場になりきって、実際に自社の製品やサービスを身銭を切って体験してみる。
まとめ:計画通りに進まないことを楽しもう
プロジェクトにおいて、完璧な計画を立てることはもちろん大切です。しかし、ガチガチに計画を固めすぎて、そこから外れること(不確実性)を極端に恐れるようになってしまうと、イノベーションの芽を摘んでしまいます。
アクシデントが起きた時、顧客が想定外の動きをした時、それは失敗ではなく「新しいアイデアの入り口」かもしれません。
「予想外のこと」を柔軟に受け入れ、他業界の知識すらも貪欲に流用していく。そんなIDEOの遊び心あるマインドセットを、ぜひ皆さんのプロジェクトにも取り入れてみてください!
参考
- トム・ケリー、ジョナサン・リットマン 著(鈴木主税、秀岡尚子 訳)『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』早川書房、2002年

