中年の危機(ミッドライフ・クライシス)とは何か?河合隼雄とユングに学ぶ「人生の正午」の乗り越え方

「自分の人生は何なのだろう?」
「結局、私は何をしに生まれたのか?」

こういった悩みは子供の時からある場合もありますが、歳を取るにつれて、より一層強まることがあります。

「中年の危機」「中年危機」と呼ばれるのは、まさにこの状態のことです。
今回は、この「中年の危機」について考えていきましょう。

目次
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山脇 弘成(SSAITS代表)

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中年の危機とは何か?

「中年の危機」という言葉は、1965年にカナダの精神分析医エリオット・ジャック(Elliott Jaques)が提唱したのが始まりです[1]Elliott Jaques – Wikipedia(2026年1月23日確認)およびMidlife crisis – Wikipedia(2026年1月23日確認)
その定義はこのようになっています。

人生の中盤(一般的に40代~50代)に差し掛かり、自身の「若さの喪失」や「死すべき運命(有限性)」を自覚することで生じる、心理的な不安定状態や葛藤のこと。

河合隼雄『中年危機』より

河合隼雄『中年危機』

臨床心理学者である河合隼雄先生の『中年危機』では、ユングの話を引用し、中年の危機の説明をしています。

C.G.ユングは、有名なスイスの分析心理学者です。
河合先生は、このユングこそが、心理学で中年を大切に取り上げた第一人者だと評価しています。

ユングにこころの不調を相談してくる人の三分の一は、一般的に見ると何も問題ない状態であったようです。
お金もある、地位もある、家族もいて、仲良くやっている。
しかし、それでも「何かが足りない」と感じたり、「不可解な不安」に悩まされる。

中年の危機は、こうした漫然とした満たされなさや、不安として現れます。

河合先生は、この中年の危機が発生するメカニズムを以下のように解説しています。やや長いですが引用してみましょう[2]河合隼雄『中年危機』朝日新聞出版、2020年、8頁。

ユングはこのような人々に会い、また自分自身の体験をも踏まえ、中年において、人間は大切な人生の転換点を経験すると考えるようになった。彼は人生を前半と後半に分け、人生の前半が自我を確立し、社会的な地位を得て、結婚して子どもを育てるなどの課題を成し遂げるための時期とするならば、そのような一般的な尺度によって自分を位置づけた後に、自分の本来的なものは何なのか、自分は「どこから来て、どこに行くのか」という根源的な問いに答えを見いだそうと努めることによって、来るべき「死」をどのように受けいれるのか、という課題に取り組むべきである、と考えたのである。太陽が上昇から下降に向かうように、中年には転回点があるが、前述したような課題に取り組む姿勢をもつことにより、下降することによって上昇するという逆説を経験できる。しかし、そのような大きい転回を経験するためには、相当な危機を経なければならない、というわけである。

中年の危機が発生するメカニズム

つまり、一般的な価値観や尺度で自分を形成してきた前半が終わり、「自分はどこから来て、どこに行くのか」という問いに向き合うようになるのが中年であり、その転換点を乗り越えようとする時に発生するのが「中年の危機」ということです。

「中年の危機」をどうやって乗り越えるか?

では、中年の危機はどうやったら乗り越えられるのでしょうか?
それは簡単なことではありません。
「Aさんで上手くいったことが、Bさんにも上手くいく」ということはなかなかない世界です。
そのヒントとして、河合先生の『中年危機』では、12の小説を取り上げて、その登場人物がどのようにして中年危機を乗り越えたか、あるいは何にもがいているのかを考察しています。

夫婦に大きな秘密を抱えた夏目漱石の『門』、ある日幸せな家庭が一変する佐藤愛子の『凪の光景』、不思議な夫婦の関係を描いた志賀直哉の『転生』

これらの作品の中には、今まさに直面している問題と、同じことで悩んでいる主人公がいるかもしれません。

『道草』こそが自己実現

『道草』こそが自己実現

『中年危機』には、中年の危機を乗り越えるためのさまざまなヒントが散りばめられています。
取り上げられている12の小説の中で、最も河合先生のメッセージを強く感じるのは、本書の最後に登場する夏目漱石の『道草』です。
この物語は中年の危機そのままで、「御前は必竟(ひっきょう)何をしに世の中に生れて来たのだ」というこころの声に主人公は悩まされます。
そして、その答えはでないまま、「分からない」「己のせいじゃない」と悩む主人公。

この姿に対して、河合先生はこのように述べています[3]前掲『中年危機』210頁。

自分にもわからない自分を生きることは、その自分を自己と呼ぶならば、自己実現ということになる。自己実現は到達するべき目的地なのではなく、過程なのである。

河合先生の思いを十分にくみ取れているかは不安ですが、つまり、「わが人生の目的」というものを目指すのではなく、いろいろな悩みや問題に対処しているいまこそが自己実現であるということなのではないでしょうか。

さいごに

今回は中年の危機について取り上げました。
繰り返しになりますが、この中年の危機の乗り越え方は、一様ではありません。
中年の危機を体験した人の作品から学ぶことも多いと思います。
「あんぱんまん」を生み出したやなせたかしさんや、『あん』の著者であるドリアン助川さん。
人生中盤でがらりと作風を変えて、活躍されている人は、この中年の危機を乗り越えた方々であり、回想にその時の気持ちが残されていることが多々あります。

なんのためにうまれて なにをしていきるのか
こたえられないなんて そんなのはいやだ!

というのは、まさしく、中年の危機の叫びです。
ぜひ、こうした先達たちの作品を手に取ってみてください。

1 Elliott Jaques – Wikipedia(2026年1月23日確認)およびMidlife crisis – Wikipedia(2026年1月23日確認)
2 河合隼雄『中年危機』朝日新聞出版、2020年、8頁。
3 前掲『中年危機』210頁。
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