適応型アプローチの概要

適応型アプローチとは、アジャイル開発に代表される、反復型アプローチと漸進型アプローチを組み合わせた開発アプローチです。
反復型アプローチはプロジェクトの各工程(フェーズ)を繰り返し、内容を洗練させていく手法で、漸進型アプローチはプロジェクトを機能や部品ごとに分け、段階的に作成していくアプローチです。
適応型アプローチはこれらのアプローチ方法を組み合わせ、状況に応じてバランスを調整します。
一般的に、1~4週間ほどの短期間で設計、開発、テスト、リリース後の振り返りまでの反復を繰り返し、システム開発のサイクルを一通り回していきます。
適応型アプローチと対照的な方法に、予測型アプローチがあります。予測型アプローチは従来から取り入れられている手法で、全体スケジュールをはじめとする計画をプロジェクト開始時に厳密に立て、その計画通りに開発を進めていく手法です。
反復型アプローチ、漸進型アプローチ、予測型アプローチ、そしてアジャイル開発については下記の記事でも解説しているので、ご参照ください。
なぜ今、適応型アプローチが求められるのか?
PMBOK第8版などの最新のプロジェクトマネジメント標準でも、適応型アプローチの重要性はますます高く評価されています。その最大の理由は、現代が「VUCA(ブーカ)」と呼ばれる、変化が激しく予測困難な時代だからです。

ビジネス環境やテクノロジー(AIなど)の進化がすさまじい現代において、1年前に立てた完璧な計画が、リリース時にはすでに時代遅れになっていることは珍しくありません。
最初からすべてを「予測」して固定するのではなく、短いサイクルで市場や顧客の反応を見ながら、柔軟に軌道修正(適応)していく。このしなやかさこそが、現代のプロジェクトを成功に導くカギとなっています。

適応型アプローチでの開発の進め方

適応型アプローチの開発の進め方は、リリース計画・設計・実装・テストの工程の繰り返しです。この一連の流れがイテレーションになります。
リリース計画では、厳密な仕様は決めず大まかな仕様を決めていきます。開発や設計途中で仕様変更があることを前提とするアプローチ手法であるため、細かな計画を立てないことが特徴です。
設計・実装・テストは、予測型アプローチなどの他のアプローチと同じような形で進めていきます。必要な成果物を用意し、必要に応じて修正や評価を行います。
また、適応型アプローチの代表的な開発方法であるアジャイル開発には、スクラム、エクストリーム・プログラミング、ユーザー機能駆動開発(FDD)の3つの手法があります。
スクラム
ラグビーのスクラムが語源となっており、プロジェクトメンバー自身がイテレーションごとの計画から設計・実装を行います。
スクラム開発については、下記の記事もご参照ください。
エクストリーム・プログラミング
アジャイル開発の中でも技術面に重きを置いていることから、開発者中心の開発手法です。

ユーザー機能駆動開発(FDD)
クライアントが求める機能の価値に重きを置く開発手法です。
現場から見るメリット・デメリット

適応型アプローチは魔法の杖ではありません。現場で導入する際は、その光と影をしっかり理解しておく必要があります。
メリット:変化に強く、無駄がない
最大のメリットは、プロジェクトの不確実性(リスク)を早期に軽減できることです。
短いサイクルで実際に動く成果物を確認できるため、「完成してみたら顧客の欲しいものと違った」という致命的な失敗を防げます。また、市場のニーズの変化に素早く対応(適応)できるため、ビジネスの競争力を高めることができます。
デメリット:予算の確保と「顧客の疲弊」
一方、現場のプロジェクトマネージャーを悩ませるデメリットもあります。
まず、初期段階で「最終的にいくらかかるか(総コスト)」「いつすべて完了するか(全体スケジュール)」を確定させることが困難なため、稟議を通したり、予算をコミットしたりするのが非常に難しいという点です。
また、「人が動く時間が多い」だけでなく、ステークホルダー(顧客や事業部門)の負担が大きい点も見逃せません。短いサイクルごとに成果物の確認やフィードバックを求められるため、顧客側に「アジャイルへの理解」と「十分な参加時間」がないと、プロジェクトが停滞したり、顧客が疲弊してしまったりするリスクがあります。
さいごに:まずは「ハイブリッド型」から始めてみよう
現代のプロジェクトマネジメントにおいて、適応型アプローチへの理解は必須スキルです。
しかし、「明日からすべてアジャイルに変えよう!」と無理をする必要はありません。組織の文化や顧客の事情によっては、従来通りの予測型アプローチのほうが適しているプロジェクトもたくさんあります。
現実のビジネス現場では、全体の予算や大枠のスケジュールは「予測型」でしっかり固めつつ、開発の実行プロセスに「適応型」の短いサイクルを取り入れる「ハイブリッド型アプローチ」を採用するケースが非常に増えています。
まずは目の前のプロジェクトの特性を見極め、予測型と適応型の「いいとこ取り」をする方法を探ってみてはいかがでしょうか?




