【Running Lean】90日間サイクルで実現する継続的イノベーションとは?

継続的イノベーションとは、新しいアイデアや技術を創造し、それをさらに改善、発展させるプロセスのことを指しています。
顧客が真に望むものを提供し続けることが、継続的イノベーションの核心と言えるでしょう。

市場は常に変化し、顧客のニーズも多様化しています。 継続的イノベーションは、こうした変化に柔軟に対応し、競争力を維持するための重要な手段となります。

新しいアイデアを製品やサービスに組み込むだけでなく、顧客からのフィードバックを収集し、改善を続けることによって、組織や企業は持続的な成長を遂げることができます。

継続的イノベーションフレームワークとは?3つの活動【Running Lean】

継続的イノベーションフレームワークでは、90日間サイクル「モデルの作成」「優先順位付け」「テスト」 を行います。

最初の2週間で「モデルの作成」と「優先順位付け」を行い、残りの10週間で「テスト」を実施します。 そして、サイクルの終わりには、「何をしたのか」「何を学んだのか」 を振り返り、次の行動を決定します。

これを繰り返すことで、継続的なイノベーションを実現していきます。

モデルの作成

継続的イノベーションフレームワークでは、以下の2つのモデルを使用します。

リーンキャンバス

[画像:リーンキャンバス]
出典)Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running Lean[第三版]―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』オライリー・ジャパン、2023年、32頁より作成。
  • リーンキャンバスとは、ビジネスモデルを1ページにまとめる手法です。
  • 数十ページにも及ぶ従来の事業計画書とは異なり、簡潔で要点が整理されている ため、投資家や関係者にとって理解しやすくなっています。
  • 特に、スタートアップのように、まだ不確定な要素が多い段階では、リーンキャンバスを使って 仮説を明確化し、共有する ことが重要になります。

顧客ファクトリー

顧客ファクトリーの設計図
出典)Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running Lean[第三版]―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』オライリー・ジャパン、2023年、91頁より作成。
  • 顧客ファクトリーとは、顧客を獲得し、維持するための仕組み を可視化したものです。
  • 「獲得」「活性化」「定着」「収益化」「紹介」 の5つのステップで構成され、顧客との関係性を構築し、ビジネスを成長させるための道筋を示します。
  • トラクション (顧客獲得の勢い) を測定し、顧客ファクトリーを改善していくことが重要になります。

優先順位付け

モデルを作成したら、次に リスクの高い項目 を特定し、優先順位を付けます。

リスクの高い項目とは、 「不確実性が高い項目」「影響が大きい項目」 です。

これらの項目を早期に検証し、対策を講じることで、ビジネス全体のリスクを軽減することができます。

テスト

テストの段階では、モデルの内容を実際に検証し、改良していきます。

「どの戦略が有効なのか」「顧客は本当に求めているのか」 を検証し、「仮説」「事実」 に変えていく作業です。

最初から大きなリスクを取らず、小さな実験を繰り返し、有効な戦略を見極めていくことが重要になります。

なぜ継続的イノベーションフレームワークが必要なのか?

現代のビジネス環境は、かつてないほど 変化が激しく、競争が激化 しています。

  • テクノロジーの進化
  • グローバリゼーションの進展
  • 顧客ニーズの多様化

など、企業を取り巻く環境は常に変化しており、それに対応していくためには、継続的なイノベーションが不可欠です。

特に、スタートアップ企業は、限られたリソースの中で、いかに効率的に顧客を獲得し、成長していくか が課題となります。

継続的イノベーションフレームワークは、限られた時間とリソースを最大限に活用 し、無駄な開発を避け顧客に価値を提供し続ける ための強力なツールと言えるでしょう。

新たなマインドセットが必要

継続的イノベーションを成功させるためには、従来の考え方にとらわれず、新たなマインドセット を持つことが重要です。

『Running Lean』では、継続的イノベーションフレームワークの3つの活動を強化するための 10個のマインドセット が紹介されています。

モデルの作成

  1. ビジネスモデルが製品である
    • 顧客に提供する価値は、製品やサービスだけでなく、ビジネスモデル全体 であるという考え方。
    • ビジネスモデルを 「顧客に価値を提供し、収益を上げる仕組み」 として捉え、その仕組み自体を改善していくことが重要になります。
  2. ソリューションではなく課題を愛せ
    • 顧客は、「製品」 そのものではなく、「製品によって解決される課題」 を求めているという考え方。
    • 顧客の課題を深く理解し、その解決に焦点を当てることで、真に顧客に求められる製品やサービスを提供することができます。
  3. トラクションが目標である
    • トラクションとは、顧客獲得の勢い を示す指標です。
    • トラクションを向上させることこそが、ビジネスの成長に繋がるという考え方。
    • Facebookの例では、ユーザー数が増加することで、広告主が集まり、収益化が可能になりました。

優先順位付け

  1. 適切な行動を適切な時期に
    • 「今、何をすべきか」 を明確にし、適切なタイミングで適切な行動をとるという考え方。
    • 長期的な計画も重要ですが、まずは 「目の前の課題」 に集中し、「小さな成功」 を積み重ねていくことが重要になります。
  2. 最もリスクの高い仮定に段階的に取り組む
    • ビジネスモデルには、必ず 「不確実な要素」 が含まれています。
    • これらの不確実な要素を 「仮説」 として捉え、優先順位 を付けて検証していくという考え方。
    • 最もリスクの高い仮説から検証することで、「手戻り」「無駄な開発」 を防ぐことができます。
  3. 制約は贈り物である
    • 制約があるからこそ、創造性 が発揮され、新たなアイデア が生まれるという考え方。
    • 制約を 「問題」 と捉えるのではなく、「チャンス」 と捉えることで、イノベーションが加速します。
  4. 外部に対する説明責任を担う
    • 顧客や投資家など、外部のステークホルダーに対して、透明性 を高く保ち、説明責任 を果たすという考え方。
    • 信頼関係を構築することで、長期的なビジネスの成功に繋がります。

テスト

  1. 小さな賭けを何度もやる
    • 大きなリスクを一度に取るのではなく、小さな実験を繰り返し「試行錯誤」 を 통해 最適な解決策 を見つけていくという考え方。
    • 失敗から学び、「改善」 を続けることが重要になります。
  2. エビデンスに基づいた意思決定をする
    • 「勘」「経験」 ではなく、データや事実 に基づいて意思決定を行うという考え方。
    • 客観的なデータ分析を通じて、より 精度の高い意思決定 を行うことができます。
  3. ブレイクスルーには想定していなかった結果が伴う
    • 真のイノベーションは、「想定外の結果」 から生まれることが多いという考え方。
    • 失敗を恐れず、「実験」「学習」 を繰り返すことで、「予期せぬ発見」 に繋がる可能性があります。

これらのマインドセットを意識することで、顧客が真に望むものを継続的に提供し、ビジネスの成功へと導くことができるでしょう。

参考

Ash Maurya(著)、角 征典(翻訳)『Running Lean[第三版]―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』オライリー・ジャパン、2023年