ベネフィット・カードとは何か?プロジェクトの便益を特定するチェックリスト
ベネフィット・カードとは
ベネフィット・カードは、プロジェクトのスポンサーとプロジェクト・マネジャーが、プロジェクトの主要な便益とインパクトを特定するのを助けるチェックリストです。
このツールはプロジェクトマネジメントのエキスパートであるアントニオ・ニエト・ロドリゲス(Antonio Nieto-Rodriguez)が発案したものです。
プロジェクトでは、早期に主要な便益を特定しなければならず、特定された便益はステアリングコミッティによって検証されなければなりません。
この便益の特定と検証に役立つのがベネフィット・カードです。
ベネフィット・カードの項目
便益 | 概要 | 例 | 測定 |
---|---|---|---|
収益の増加 | 新製品 新サービス 新しいチャネル 買収 拡張 その他 | 売上の増加 サブスクリプションの増加 より高い価格帯 マージンの増加 | パーセンテージ、財務 |
コストの削減 | オートメーション テクノロジー 冗長性 組織再編 アウトソーシング その他 | 正社員の抑制 プロセスの高速化 精度の向上 不正行為の減少 | 正社員の人数、財務 |
生産性の向上 | 能率向上 生産力の向上 自動化 テクノロジー 債務削減 品質向上 その他 | 生産量の増加 より大きなマージン 無駄の削減 手戻りの減少 顧客対応の向上 | パーセンテージ |
戦略目標 | 戦略への貢献 その他 | マーケットリーダー テクノロジーリーダー 新しい市場へのアクセス 新製品・新サービスの紹介 仕事を変換、ピボットする可能性 回復力の向上 変化のためより大きな容量 | パーセンテージ、財務、評判 |
評判とコンプライアンス | 事業の健全化に関するステークホルダーの見解 事業の健全性に関する規制当局の見解 その他 | 回復力の向上 競争力の向上 価値とステータスの向上 契約とレバレッジの増加 契約コストの削減 従業員満足度の向上 | 株価、市場レポート、規制当局の報告、内部監査レポート、契約条件 |
持続可能性 | 組織、その製品、そのプロジェクトまたはプログラムの経済的、社会的、および環境的なレジリエンス(しなやかさ) | 企業の評判の向上 戦略的リスクの軽減 レジリエンスの向上 変化のためより大きな容量 | パーセンテージ、財務、共有価値 |
顧客満足と経験 | ビジネスまたはその製品に対する顧客またはユーザーの態度 その他 | 企業の評判の向上 競争力の向上 レジリエンスの向上 従業員満足度の向上 価値ポイントの向上 リピートビジネスの拡大 | パーセンテージ、ネット・プロモーター・スコア、顧客のコンバージョン率、解約率、契約の量と価値 |
マーケットシェア | 会社や製品が支配する市場 その他 | 意思決定のより強い自律性 生産能力の向上 購買力の向上 規模の経済の向上 | パーセンテージ、財務 |
組織文化 | 従業員とステークホルダーに行動を促す組織に関する価値観と信念 その他 | 変化のためのより大きな容量と速度 レジリエンスの向上 生産性の向上 従業員満足度の向上 戦略の改善 イノベーションのための大きな能力 リスク対応能力の向上 コミュニケーションの透明性の改善 | 株価、市場および規制当局のレポート、従業員の満足度、契約の量と価値、プロジェクトのパフォーマンスと利益の実現 |
従業員満足度 | 仕事と組織改善に対する従業員の姿勢 その他 | 雇用主のブランドエンゲージメントの改善 評判の向上 従業員の心身の改善 事故・ニアミスの減少 生産性の向上 イノベーションとリスクの受容量の増加 採用コストの削減 サプライヤーと顧客の関係改善 | 財務(保険、採用、従業員の欠勤の費用)、従業員満足度調査 |
従業員のエンゲージメント | 雇用者のビジネスの成功に対する従業員のコミットメント その他 | レジリエンスの向上 生産性の向上 イノベーションとリスクの受容量の増加 無駄の削減 手戻りの減少 プロジェクトの熟練度の向上 より透明性の高いコミュニケーション | 従業員エンゲージメント調査、従業員1人当たりの生産性 |
ベネフィット・カードの使い方
上述のとおり、プロジェクトのスポンサーとプロジェクト・マネジャーが、プロジェクトの主要な便益とインパクトを特定するのを助けるチェックリストです。
「このプロジェクトはどのような便益をもたらすのか」「その便益を実現するには何をすればよいのか」を考える際に、ベネフィット・カードはヒントを与えてくれます。
たとえば「便益」の列には便益の種類が書かれています。
便益には「収益の増加」という利益に関するものもあれば、「組織文化」などの金銭的でない便益もあります。
たとえばその中で、「収益の増加」という便益を得たいという場合は、新製品や販路の新チャネルが必要であることが「概要」の列を見ればわかります。
そして、その便益が得られたかどうかは、財務に関する資料から読み取ればよいことが「測定」の列を見ればわかるようになっています。
このようにしてベネフィット・カードを使うと、目標としていた便益と実施しようとしている活動が一致しないという問題や、測定しなければならない指標がわからずに、問題を放置してしまうことを防ぐことができます。
参考
- Antonio Nieto-Rodriguez, Harvard Business Review Project Management Handbook: How to Launch, Lead, and Sponsor Successful Projects Harvard Business Review Press, 2021.