「耐えられる仕事」を見つけること。韓国エッセイ『私的な書店』に学ぶ、自分らしい起業の形

「耐えられる仕事」を見つけること。韓国エッセイ『私的な書店』に学ぶ、自分らしい起業の形

「自分のお店を持ちたい」
「好きなことを仕事にして生きていきたい」

誰しも一度はそんな夢を抱いたことがあるのではないでしょうか。
しかし、現実は甘くありません。「そんなビジネスモデルで食べていけるの?」という周囲の声や、何より自分自身の不安が足を止めさせます。

今回紹介するのは、韓国で実際に「一風変わった本屋」を開いた女性の記録、『私的な書店ーたったひとりのための本屋ー』です。
この本で語られるのはキラキラしたサクセスストーリーではありません。迷い、悩み、試行錯誤しながら「自分らしい働き方」を模索する等身大の姿は、これから何かを始めたい人の背中を優しく押してくれるはずです。

この記事では、本のタイトルを『私的な書店』、屋号としては「私的な書店」と表記します。

目次
このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

「本を処方する」不思議な本屋さん

著者のチョン・ジヘさんが開いた「私的な書店」。
その名の通り、非常にユニークな営業スタイルをとっています。

それは、「本を処方する」こと。
お客様一人ひとりと対話し、悩みや好みを聞き出した上で、その人にぴったりの本を選び、後日郵送するというサービスです。

「そんな非効率なやり方で、ビジネスが成り立つの?」
多くの人がそう思うでしょう。実際に著者自身も、最初からこのスタイルに確信を持っていたわけではありませんでした。

「好き」を仕事にするまでの長い道のり

「本が好きだから、本に関わる仕事がしたい」
そう考える人は多いですが、関わり方は様々です。作家、編集者、書店員……。

チョン・ジヘさんも、大学卒業後は出版社で働き、その後は書店員としても働きました。
しかし、「それぞれ面白いけれど、何かが違う」という違和感を拭えません。

彼女は決して、ビジネスライクにテキパキと起業準備を進めるタイプではありませんでした。
「本屋さんを開きたいな~」とぼんやり考える期間が長く続き、その中で「あれは資金的に無理」「これはやりたくない」と消去法を繰り返していきました。

そうして最後に残った「誰かに本を薦める楽しさ」だけを抽出した結果、たどり着いたのが「本を処方する」というスタイルだったのです。

起業のリアル:迷走と「耐える」ということ

本書の魅力は、開業後の苦労も包み隠さず描かれている点です。

  • 売上が心配で毎日営業し、疲弊してしまう。
  • 「処方」だけでは不安で一般書籍も置いたが、結局売上につながらない。
  • 客の顔色を伺って「売れそうな本」ばかり置き、店の個性を失いかける。

自分のお店や事業を持ったことがある人なら、頷いてしまうエピソードばかりではないでしょうか。

そんな迷いの中で、チョン・ジヘさんが一度店を閉めて充電期間を作ろうとした際に引用した、ハン・スヒさんの言葉が胸に刺さります。

商売でなくても、どんな仕事をするにせよ、その仕事は期待していたよりも惨めなものだろう。(中略)
夢見ることや、始めてみること、そして行動してみることは重要だ。本当に重要だ。
しかし、それよりも重要なのは、耐えて待つことだ。
(中略)
だから、耐えられる仕事を見つけること、つまり、耐えられる夢を見ること、その夢を失わないように大切にしまっておき、守り続けること、それも重要なことなのだ。

ハン・スヒ『とても大人な散歩』(『私的な書店』からの孫引き)

「好きな仕事なら毎日楽しい」なんてことはありません。
どんな仕事にも、地味で、辛くて、惨めな時間は訪れます。
重要なのは、「楽しいかどうか」よりも「その苦労に耐えられるほど、好きかどうか」なのかもしれません。

やってみなければ「続けられるか」はわからない

経営学やマーケティングの理論では、「事前の計画」が重要視されます。
しかし、個人のキャリアや小規模な起業においては、「自分がそれに耐えられるか(続けられるか)」は、実際にやってみないと分かりません。

チョン・ジヘさんが開業を決意するシーンで引用されている、キム・ウナさんの言葉もまた、背中を押してくれます。

実際に刑事として生きることがどういうことかを経験したことがない状態で、テレビの刑事ものを見ながら刑事を夢見て、(中略)それはまるで、運転免許証どころか一度もハンドルを握ったことがない状態で高速道路を走るのと、そう変わらないのではないだろうか?
しかし、これこそが私たちの人生の根本的な条件なのである。
このような事情を考慮すれば、私たちの選択と決定により、無数の試行錯誤と失敗を経験するのは当然のことなのかもしれない。
キム・ウナ『選択、選択の再発見』(『私的な書店』からの孫引き)

私たちは誰もが「素人」の状態で、人生の大きな選択をしなければなりません。
だからこそ、試行錯誤は当たり前。失敗しても、また「私的な書店」のように軌道修正すればいいのです。

まとめ

『私的な書店』は、単なる書店主の成功譚ではありません。
「自分は何になら耐えられるのか」「自分らしい働き方とは何か」を、不器用ながらも真摯に問い続けた記録です。

もしあなたが今、キャリアの岐路に立っていたり、「自分だけのお店」を夢見ていたりするなら。
この本は、ビジネス書のコーナーにある「成功法則」よりも、よっぽどリアルで温かいヒントをくれるはずです。

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